第四話
「一体これはどういうことだッ!!」
「「「申し訳ございません!!」」」
屋敷に残って戦っていた兵士たちが帰還した父に頭を下げているのを、僕は正座で眺めていた。
あの後、兵士たちと合流して一緒にゴブリンを掃討して回ったわけだが、途中で父たちが戻って来てしまったのだ。
戦闘中は何も言われなかったが、ゴブリンの掃討が済むと僕には正座を命じ、屋敷の兵士たちには雷が今まさに落ちている。
当たり前のことだが、守られるべき六歳の男児が戦場で剣を持って飛び跳ねていたのだから、監督責任は現場にいた兵士たちにあるわけで。
もちろん僕にも特大の雷が落ちることは目に見えているのだけど……アーヴァング先生は「いい動きだったぞ」とこっそり褒めてくれた。
ルークエンデ領がこんなだから、領主としては心配になったファーランド卿はフェリシアを連れて明朝、領地に戻ることになった。
元の滞在日数が如何ほどだったのかは知らないが、当然の判断だと思う。
フェリシアは「お怪我はありませんでしたか?」と涙目で僕の袖を掴みながら問うてきた。
不覚にも可愛いと思ってしまったが、心配させ続けるのも気の毒なので「なんともなかった」と返すと、なぜか距離を置かれてしまった。
ゴブリンの首チョンパは六歳の女児には刺激が強すぎたらしい。
さてファーランド卿とフェリシアを見送った後、改めて僕には父から雷が落ちることとなった。
とはいえゴブリン退治に大きく貢献したこともあって、奥歯に物の挟まったような言い方でくどくどと言い含められた形だ。
結果だけ見れば怪我ひとつなく大活躍だったわけで、むしろ褒めてもらっても一向に構わなかったんだけど。
帰り際にファーランド卿が取りなしてくれたおかげもあって、結局お小言が延々と続くだけで「もう二度と無茶はしません」と誓約させられただけで解放された。
なおアーヴァング先生は剣技の授業で改めて褒めてくれたが、授業の内容が厳しくなったのはご愛嬌であろう。
そして書庫が解禁されると、僕はまた読書に勤しむようになった。
今の興味は魔術である。
ゴブリンと戦って思ったが、遠距離攻撃手段が欲しくなったのだ。
自分の属性は【水属性】と【光属性】という攻撃にはどちらかといえば不向きな属性ではあるが、攻撃魔術がないというわけではない。
まあ確かにこの属性の組み合わせだと、ダントツで回復魔術に振りたくなるが……。
そこで父に「魔術を習いたい」とおねだりするも、また危なっかしいことになるのではないかと思われているのか警戒されてなかなか首を縦に振ってくれない。
属性によっては確かに危なっかしいのだが、僕の属性だとむしろ回復が手厚くなって父の懸念材料は減るのだが、自分の属性を知っていることは言えないため、こちらとしても説得材料がない。
結局「独学でやるか……」という呟きを聞きとがめた父が、「頼むからやるならちゃんとした先生に習ってくれ」と折れた。
かくして家に魔術師を呼んでもらうことになったのだが、それは冬が明けて春も終わりになろうという頃のことだった。