第三十七話
会敵は唐突だった。
六人の黒いローブを纏った青白い肌をした魔族たちは、こちらに気づくと各々武器を構える。
こちらも対応は早かった。
やはり武器を構えて前衛は後衛を守るように位置を変える。
「ハッ! 本当にいやがった!」
斥候のギスレインが地面に唾を吐き捨て、槍を低く構える。
このギスレイン、〈槍技〉がレベル7あるので〈模倣〉のために戦いぶりを記憶しておきたいひとりだ。
伸び悩んでいる僕の〈槍技〉をレベル7まで引き上げてくれるかもしれない。
さて魔族の方の戦力を確認しよう。
《名前 アヒム 性別 男 年齢 271
【器用】203 【敏捷】186 【感知】113
【筋力】 99 【体力】127 【知力】305
【魔力】483
〈剣技〉Lv8 〈回避〉Lv8 〈魔力操作〉Lv8
〈魔術制御〉Lv7 〈闘気法〉Lv8 〈闇魔術〉Lv7》
ざっと見た中で最も強敵なのがこのアヒムだ。
魔族は種族の傾向として筋力や体力が低めで、知力や魔力に秀でている。
そのためか前衛を務める場合、大抵は魔法戦士となる。
さて見ての通り、ステータスやスキルで僕とバララエフに及ばない。
とはいえ精神に直接作用する〈闇魔術〉は厄介だ。
さっさと始末するに限る。
「人間の冒険者か! ここで討ち果たすぞ!」
「魔族どもめ! 何が目的かは知らないが、ここで止める!」
そう、目的が分からないのが引っかかっている。
こんなところに何をしに来ているのだろう。
どちらからともなく距離を詰めて、前衛が接敵した。
魔族の前衛は三人。
揃って〈闇魔術〉の〈バーサーク〉を自身にかけて身体能力と精神力を強化する。
筋力に劣る魔族たちは細身の剣を抜き、素早い突きを繰り出してきた。
セーザル、イタン、そしてギスレインが正面からぶつかり合う。
セーザルとイタンは大盾で突きを防ぎ、ギスレインは距離を空けて槍で戦う。
その隙をついて僕とバララエフが魔族の後衛に切り込んだ。
魔術を得手とする魔族の後衛の方が危険だと判断したからだ。
その予感は当たっていた。
魔族の後衛たちは〈闇魔術〉の〈マインドクラッシュ〉を準備、発動していた。
〈マインドクラッシュ〉は対象の精神を破壊しようとする恐るべき魔術だ。
僕とバララエフは〈闘気法〉で身体を覆い、魔術に対する抵抗力を向上させる。
〈マインドクラッシュ〉は接近する僕とバララエフに一発ずつ、残る一発は前衛の誰かに飛んだようだ。
ガツン、と脳に直接呪詛を叩き込まれる。
僕は〈多重思考〉で〈マインドクラッシュ〉を受けた自我を一時的に切り離し、魔族の後衛のひとりを斬り捨てた。
遅れてバララエフも魔族の後衛をひとり、斬る。
残る後衛のひとりの首を僕がはねて、前衛たちの元へ戻る。
イタンが地面に倒れ伏していた。
三対二。
セーザルとギスレインが必死の抵抗を試みている。
攻撃魔術師のデジリーが〈ライトニングバインド〉でひとりを拘束して、数が拮抗した。
僕とバララエフは挟撃の形で背後から魔族の前衛ふたりを瞬殺。
残る〈ライトニングバインド〉をくらって動きを止めたひとりをセーザルの大剣とギスレインの槍が同時に貫いた。
治癒魔術師イニスの〈サニティ〉でイタンは無事に目を覚ました。
ただししばらくの間、後遺症として頭痛が残るようだ。
魔族たちの持ち物を改めた結果、魔法陣を描くための塗料と魔法陣の図柄の描かれた羊皮紙を発見した。
ダンジョン内で何らかの儀式魔術を行使するつもりだったらしい。
魔法陣は一見してどのようなものかは分からない。
〈検索〉しても僕の〈記憶の図書館〉にはない未知の魔法陣だった。
……後で分析してみるか。
分析自体は冒険者ギルドで行うだろうが、ここで魔族が何をしようとしていたのかを知るのは、メインストーリーで描かれなかった魔族の陰謀である可能性が高い。
把握はしておくべきだ。
魔族の死体をインベントリに収納して――セーザルの勧誘にさらに熱がこもったのは言うまでもない――、僕たちは地上に帰還した。
ロイク・ルークエンデ(男/11歳)
【魂】
└【前世の記憶】
【肉体】
├【器用】
│ ├〈剣技〉Lv10
│ └〈槍技〉Lv4
├【敏捷】
│ ├〈回避〉Lv9
│ ├〈俊足〉Lv8
│ ├〈軽業〉Lv8
│ ├〈水泳〉Lv2
│ ├〈跳躍〉Lv3
│ └〈騎乗〉Lv2
├【感知】
│ ├〈発見〉Lv5 update!
│ ├〈索敵〉Lv8 update!
│ ├〈常在戦場〉Lv7
│ └〈視力〉Lv5
│ ├〈動体視力〉Lv1
│ ├〈停滞の魔眼〉Lv1
│ └〈魔力視〉Lv1
├【筋力】
│ ├〈格闘技〉Lv6
│ ├〈盾技〉Lv6
│ ├〈膂力〉Lv6
│ ├〈瞬発力〉Lv6
│ └〈鍛冶〉Lv8
└【体力】
├〈持久力〉Lv8
├〈持久走〉Lv6
└〈頑強〉Lv6
【精神】
├【知力】
│ ├〈集中力〉Lv10
│ │ ├〈限界突破〉Lv5
│ │ ├〈心眼〉Lv5
│ │ └〈生存本能〉Lv5
│ │ ├〈直感〉Lv3
│ │ └〈多重思考〉Lv3
│ ├〈記憶力〉Lv10
│ │ ├〈模倣〉Lv5
│ │ ├〈写真記憶〉Lv5
│ │ └〈記憶の図書館〉Lv5
│ │ └〈検索〉Lv3
│ ├〈錬金術〉Lv8
│ ├〈指揮〉Lv4
│ ├〈戦術思考〉Lv4
│ └〈教導〉Lv3
└【魔力】
├〈魔力操作〉Lv9
├〈魔術制御〉Lv7
├〈魔力圧縮〉Lv6
├〈闘気法〉Lv9
├〈魔力庫〉Lv6
├【精霊語】
│ └〈水の精霊術〉Lv2
├【幻獣語】
│ └【使い魔:ハヤテ】
│ └〈小型化〉Lv5
├【水属性】
│ └〈水魔術〉Lv6
├【光属性】
│ └〈光魔術〉Lv7
│ └〈付与魔術〉Lv5
└【情報属性】
└〈情報魔術〉Lv5




