第三十六話
バララエフと僕は深層を探索しているパーティに混ぜてもらっていた。
もともとが五人パーティだったところに入ったものだから七人パーティと大所帯になってしまったが、このくらいの人数のパーティはざらにあるので問題はない。
ダンジョンでのパーティ人数は六人がベストとされているが、潜る階層が深くなるにつれて上がる難易度に対して、簡単に増強できるのは人数であることは明白だ。
特に深層ともなると探索する冒険者パーティが少ないため、多少の人数オーバーはむしろ安全性を高める。
それでもこのパーティがもともと五人だったのは、実力を重視した結果なのだろう。
足手まといを増やすくらいならいない方がマシというわけだ。
「ふたりは中層を探索しているんだろう? もったいないな。なんならパーティを移らないか? 君たちなら大歓迎だ」
道中、リーダーのセーザルが熱心に勧誘してくるのを受け流しながら、僕たちはエレベーターで一気に深層第140階層に降りた。
ここから第150階層までが僕たちの持ち場である。
他のパーティも10階層ずつ割り当てられて探索しているわけだ。
「無駄口はそのくらいにしろ、セーザル。ふたりも困っているだろう」
リーダーのセーザルと同じくらい体格の良い戦士、イタンが周囲を警戒しながら言った。
エレベーター周辺は安全圏内だが、その周囲に待ち伏せをする魔物もいる。
深層になってくると、そういう知恵のある魔物が増えてくるのだそうだ。
僕の〈索敵〉も万全ではない。
気を引き締めていかなければ。
「周囲に魔物の気配はなし。グリーンだぜ」
このパーティで〈索敵〉を担当しているのは斥候のギスレイン。
痩身の槍使いだ。
前衛は盾と大剣のセーザル、同じく盾と大剣のイタン、そして槍使いのギスレイン。
後衛には攻撃魔術師のデジリーと治癒魔術師のイニス。
そこに加えて前衛であるバララエフと僕が加わって七人だ。
「ロイク、魔族の位置は分かるか?」
「え? 分かりませんが……」
おもむろにバララエフが僕に問うた。
「ロイクの勘は鋭い。儂の〈索敵〉よりも鼻が利く。言うだけ言ってみろ」
ああ、まあそうですね。
――〈限界突破〉〈索敵〉〈集中力〉〈発見〉〈直感〉!
キリキリと側頭部が痛む。
多くの魔物の気配を脳が読み取り、分析する。
「多分、すぐ下の階層だと思います」
異質な気配がむっつ。
ゆっくりと移動しているのが分かった。
「よし、階段はどちらだ? 下の階層を探索しよう」
「あ、ああ。信用してもいいんだな?」
リーダーのセーザルが気圧されるように言った。
斥候のギスレインは疑わしいものを見る目で僕を見つめていたが、ふいと視線を外す。
「どうせアテのない探索だ。ロイクの勘に賭けてもいいだろう」
バララエフが言い切ったことで、第141階層を重点的に探索することになった。




