第二十四話
〈記憶の図書館〉を経由してハヤテをオープンフィールドに連れ込んで、鍛える。
さすがドラゴン。
生まれたてなのに強い強い。
風のブレスを吐くことができ、幼いながらに飛行することができるハヤテは、すぐに戦闘に慣れた。
オープンフィールドでは【幻獣語】も解禁しているので、意思疎通もバッチリだ。
「ロイクさま。お腹がすいた」
「もう? さっき肉を大量に食べたばかりだろう」
「でもお腹すいた」
「そうか……じゃあ狩りに行くか」
「うん!」
サードテリア周辺の魔物ならば余裕をもって対処できるので、ハヤテの修行にもってこいだ。
大量の肉を餌にしているハヤテは一ヶ月で倍ほどの大きさに成長。
戦闘を考えなければ既に僕を乗せて飛ぶことができる。
僕自身がまだ小柄だということもあるにせよ、成長が早い。
なお屋敷では〈小型化〉しているため、ハヤテの成長速度には気づかれていない。
ただ〈小型化〉のレベルがまだ低いので消費魔力が大きいのが難点だ。
熟練度稼ぎを加速するためにも、フォーステリアに移動する時期が来たのかもしれない。
僕が竜を使い魔にしたという噂は貴族の間であっという間に広まってしまった。
直訳すると「子供の魔力では維持できないから寄越せ」だの「お金を積むから寄越せ」だの、色々と言われたが全部お断りしている。
無二の相棒を手放すだなんてあり得ない!
冬の間でこれだけ言われるのだから、春になって交通の便が良くなったらどれだけの貴族が群がってくるか分かったものじゃない。
父もその点には頭を悩ませているようだ。
手放せ、と言ってこなくなったのはありがたいが、同時に迷惑もかけているのが心苦しくもある。
さて春が巡ってくるということは僕も十歳になるということで、タチアナが冒険者になったのと同じ年齢になるということだ。
貴族の三男は比較的自由のきく身分だから、冒険者になって家を出るのも手かもしれない。
学園に行くのは貴族家に生まれた時点で義務なので行くには行くのだが、それもまだ先の話だ。
……冒険者かあ。
タチアナが戦闘に参加したのは十三歳だから、十歳になったばかりの僕が冒険者になっても雑用から始めなければならない。
いっそタチアナを連れていくというのはどうだろう。
タチアナの冒険に同行するという体でいけば、戦闘に参加できる。
目立たないようにハヤテは〈記憶の図書館〉に滞在させておき、オープンフィールドでのみ一緒に行動するのだ。
うん、悪くない。
問題は山積みだけど、冬の間に父を説得してみることにしよう。
「私もお供させてもらいたい」
冒険者になってタチアナと身を隠すという案は、比較的簡単に父に受け入れられた。
やはり貴族からの横槍が激しくなるのは目に見えているので、家を出るという選択肢は魅力的かつ現実的だと考えたのだろう。
タチアナを護衛に、という話も通った。
もともとが僕の護衛だから、適任だし仕事の範疇だとも言える。
ただし、アーヴァング先生が同行を申し出てくることは、父も僕も想定外だったが。
「アーヴァング、考え直してくれんか。そなたはルークエンデ家の最大戦力だぞ。領地を出られては有事の際に困る」
「ですが旦那様。私はこれから先、ロイクとの手合わせができなくなる日々を考えるといても立ってもいられなくなる心持ちになるのです。このまま成長すれば、間違いなくロイクは私を超える。だからこそその成長を見届けたい」
「ロイクも別に一年中帰ってこないわけではないだろう。季節の折々に成長を確かめれば良い。そなたがロイクに目をかけてくれているのは分かっているが、行き過ぎだ」
「ぬう……」
父の説得もあってアーヴァング先生は領地に留まることになった。
ただし僕の授業のために招聘されたイチェリーナ先生は別だ。
彼女は次の家庭教師先を探しに、ルークエンデ領を旅立つことになった。
「神童ロイクに魔術を教えた、という肩書があるので、私の再就職先は明るいと思うのですよ」
「今までありがとう、イチェリーナ先生」
「これからも魔術の研鑽を怠らないように。……とはいえ怠ける姿なんてこれっぽっちも想像できないけれど」
冬の間に僕らは旅支度をする。
春になったら、冒険の旅に出発だ!
ロイク・ルークエンデ(男/10歳)
【魂】
└【前世の記憶】
【肉体】
├【器用】
│ ├〈剣技〉Lv8
│ └〈槍技〉Lv2 update!
├【敏捷】
│ ├〈回避〉Lv6
│ ├〈俊足〉Lv4
│ ├〈軽業〉Lv4
│ ├〈水泳〉Lv2
│ ├〈跳躍〉Lv1
│ └〈騎乗〉Lv1 new!
├【感知】
│ ├〈発見〉Lv3
│ ├〈索敵〉Lv3
│ └〈常在戦場〉Lv3
├【筋力】
│ ├〈格闘技〉Lv5
│ ├〈盾技〉Lv6
│ ├〈膂力〉Lv4
│ ├〈瞬発力〉Lv4
│ └〈鍛冶〉Lv7
└【体力】
├〈持久力〉Lv7
├〈持久走〉Lv5
└〈頑強〉Lv3
【精神】
├【知力】
│ ├〈集中力〉Lv7
│ │ ├〈限界突破〉Lv2
│ │ ├〈心眼〉Lv2
│ │ └〈生存本能〉Lv2
│ │ └〈直感〉Lv3
│ ├〈記憶力〉Lv10
│ │ ├〈模倣〉Lv5
│ │ ├〈写真記憶〉Lv5
│ │ └〈記憶の図書館〉Lv5
│ │ └〈検索〉Lv3
│ ├〈錬金術〉Lv7
│ ├〈指揮〉Lv3
│ └〈戦術思考〉Lv3
└【魔力】
├〈魔力操作〉Lv6
├〈魔術制御〉Lv6
├〈魔力圧縮〉Lv5
├〈闘気法〉Lv5
├〈魔力庫〉Lv5 update!
├【精霊語】
│ └〈水の精霊術〉Lv2
├【幻獣語】
│ └【使い魔:ハヤテ】
│ └〈小型化〉Lv5 complete!
├【水属性】
│ └〈水魔術〉Lv6
├【光属性】
│ └〈光魔術〉Lv5
│ └〈付与魔術〉Lv5
└【情報属性】
└〈情報魔術〉Lv5




