第十五話
均等に細かく刻んだ癒し草を煮出す。
湯が緑色に染まっていくのを見ながら、魔力を伝える特殊な混ぜ棒で鍋をかき混ぜる。
このときに込める魔力量は多すぎても無駄になるだけなので、必要な分を一定の強さで流し続けるのがコツである。
〈魔力操作〉がレベル3もあれば簡単な作業だ。
ほのかに鍋の緑色が発光するようになったらポーションの完成である。
ガラス瓶にポーションを注いで、品質劣化防止効果のあるコルクで栓をする。
今の僕の実力だと一度に五本のポーションを鍋で作成することができる。
作成したポーションは下町の錬金術屋に卸して、小遣いに変えるのだ。
タチアナの護衛代金のことを考えれば赤字だが、父としては子供の教育のための出費だと考えているらしい。
ありがたいことだ。
「それがポーションなの? ロイクは凄いね!」
「慣れれば簡単なものだよ」
今日はギャラリーがいる。
隣領から遊びに来ているフェリシアだ。
〈小型化〉したブランコを抱っこして、僕の錬金術の作業を見学しているのだった。
「私にもできるかな?」
「え? うーん……フェリシア、魔力の制御は得意?」
「全然ダメ!!」
「じゃあ止めておこうか」
「……そっか。魔力の制御が大事なんだね」
シュン、とするフェリシアには悪いが、攻撃魔術を精一杯の魔力でぶっ放すことしか考えていない彼女には向いていない作業と言えるだろう。
幼いながら『ソード&ソード』のヒロインのひとりの片鱗が垣間見える成長の仕方だ。
彼女はゲーム中、攻撃一辺倒の魔法アタッカーだったからなあ。
初夏の陽気に照らされながら、僕とタチアナ、そしてフェリシアとブランコは森に薬草採集にやってきていた。
タチアナの護衛対象が増えることになるが、僕の強さは先だってのゴブリンジェネラル討伐で証明されている。
加えて大量の熟練度を〈記憶力〉ツリーにぶち込んだ結果、〈模倣〉がパワーアップしたのが大きい。
これまでは短いアクティブな動作しか〈模倣〉できなかったが、長い一連の動作ごと〈模倣〉することができるようになったのである。
これで何が変わったかと言えば、アーヴァング先生のパッシブスキルである〈戦術思考〉〈常在戦場〉をパクれるようになったことだ。
また〈模倣〉自体を他人のスキルとして扱うことができるようになった。
これまたアーヴァング先生の〈剣技〉レベル7を〈模倣〉することで、飛躍的に強くなることができるようになったのだ。
この〈模倣・剣技〉と〈戦術思考〉〈常在戦場〉を合わせると、体格以外ではアーヴァング先生とかなりいい感じに戦えるようになったのである。
ぶっちゃけ、今の本気の僕はタチアナより強い。
模擬戦でタチアナに勝ったとき、ガチで泣かせてしまったのは最近のこと。
そりゃ年齢が倍も違うのに、剣で負けたらタチアナのプライドはズタズタだろう。
その辺、考慮しなかった僕も悪いが……。
〈模倣〉がパワーアップした恩恵はこれだけではない。
タチアナの〈盾技〉やアーヴァング先生の〈闘気法〉、イチェリーナ先生の魔力系スキルなど、高レベルで〈模倣〉した後はスキルのレベルの上がり方が半端ないのである。
〈模倣〉、強すぎ最高。
そんなわけで、今日のタチアナの護衛対象はフェリシアだ。
そのフェリシアにしたって八歳とは思えない魔術の腕前と、使い魔であるブランコの戦力を考えれば、タチアナなしでも森の浅い部分は余裕なのである。
とはいえ実戦経験のないフェリシアのことだ。
護衛は不要かと言われると微妙なところ。
森の浅い部分でゴブリンでも倒してもらって、経験を積んでもらうのがいいだろう。
そんな思惑もあって森へやって来た。
それがあんなことになるだなんて、夢にも思わなかった――。
ロイク・ルークエンデ(男/8歳)
【魂】
└【前世の記憶】
【肉体】
├【器用】
│ └〈剣技〉Lv5 update!
├【敏捷】
│ ├〈回避〉Lv4 update!
│ ├〈俊足〉Lv2
│ ├〈軽業〉Lv3
│ └〈水泳〉Lv1
├【感知】
│ ├〈発見〉Lv1
│ ├〈索敵〉Lv2
│ └〈常在戦場〉Lv1 new!
├【筋力】
│ ├〈格闘技〉Lv3
│ ├〈盾技〉Lv4 update!
│ ├〈膂力〉Lv3
│ └〈瞬発力〉Lv3
└【体力】
├〈持久力〉Lv4
└〈持久走〉Lv1
【精神】
├【知力】
│ ├〈集中力〉Lv5
│ ├〈記憶力〉Lv10
│ │ ├〈模倣〉Lv5 complete!
│ │ ├〈写真記憶〉Lv3 update!
│ │ └〈記憶の図書館〉Lv3 update!
│ │ └〈検索〉Lv3 complete!
│ ├〈錬金術〉Lv3 update!
│ ├〈指揮〉Lv2
│ └〈戦術思考〉Lv1 new!
└【魔力】
├〈魔力操作〉Lv3
├〈魔術制御〉Lv5 update!
├〈魔力圧縮〉Lv3 update!
├〈闘気法〉Lv1 new!
├【水属性】
│ └〈水魔術〉Lv4
├【光属性】
│ └〈光魔術〉Lv2
└【情報属性】
└〈情報魔術〉Lv1




