第十話
タチアナと森へ来た。
管理されていない森は、野草や木の実の宝庫でもあるが、同時に魔物との遭遇も考慮せねばならない。
タチアナはいつでも戦えるよう気を張ってくれている。
彼女の〈索敵〉があれば奇襲を受けるようなことはないだろう。
「坊っちゃん。癒やし草なら群生地があります。ご案内しましょうか」
「うん? そうだね、お願いしようかな」
「かしこまりました」
タチアナが獣道を先導する。
道中、欲しい木の実を見つけたので短剣を投げて枝ごと落とす。
「な、何をしているんですか!?」
「あ、ごめん。ちょっと欲しい木の実があったから」
「いえ、それは構わないのですが……」
落ちた短剣と枝を回収する。
枝から木の実をもぎ取り、バックパックに放り込んだ。
「ああ、魔力の実ですか。欲しいのなら言ってくだされば、取ってきましたが」
「そうか。次からは頼もうかな」
毎回、枝ごと短剣で切り飛ばせるとは限らない。
それに欲しいのは魔力の実だけでもないし。
しかし思った以上に見つけづらい。
ゲームのときはどうしていたかといえば、〈発見〉スキルを持っていると自動的に野草や木の実がある場所が明るくフォーカスされるのである。
……取るか、〈発見〉。
熟練度を消費して〈発見〉を習得する。
すると今まで見えていなかった野草や木の実が目につくようになる。
「タチアナ、ちょっと待って。この木の上にある魔力の実を採取して欲しい」
「ええとああ、あれですね。分かりました。坊っちゃんは動かず……ってどこへ行くんです!?」
「あ、ごめん。こっちに毒消し草があったから」
「私から離れないでくださいよ。怪我なんかされたら私の首が物理的に飛ぶんですから」
「少々のかすり傷なら自前で治せるよ。僕、水属性と光属性だから」
「それは凄いですね。でも頼むから私から離れないでください。欲しいものがあれば私と一緒に取りに行きましょうね」
「はあい」
そこからは〈発見〉先生がとにかく仕事をして、癒し草の群生地にたどり着く頃には昼になっていた。
「さては坊っちゃん、〈発見〉のスキルでも持ってますね……」
「そうなのかな」
「きっとそうですよ。こういう細々とした野草や木の実をキッチリ見つけ出す〈発見〉持ちの奴を護衛したことがありますんで」
「へえ。タチアナはまだ若いのに色々な経験を積んでいるんだね」
「坊っちゃんに若いと言われるのはなんとなく釈然としませんが……まあ、十歳から冒険者をしていればこんなもんですよ」
「十歳から? へえ、そんな歳から冒険者ってなれるものなの?」
「なるだけならなれます。こうして森の浅い場所で薬草採取をしたり、街中で雑用をこなしたり。本格的にパーティ組んで魔物と戦いだしたのは十三くらいのときでしたね」
「十三歳か。それも相当、早いよね?」
「そうですね。でも私の父が冒険者で、剣と盾について仕込まれていたのが大きいです」
「なるほどねえ。参考になったよ」
「参考に? まさか坊っちゃん、冒険者になろうとしてます?」
「それも悪くないかな、と思っている。選択肢のひとつとして」
「止めといた方がいいですよ。私が言うのもなんですが、冒険者……危険をわざわざ冒す者ですからね。坊っちゃんなら治癒魔術師の方が向いていると思いますが」
「治癒魔術師ねえ……」
安定した高収入。
冒険者と違って危険もない。
しかしちと刺激が足りないのが目に見えている。
「まあまだ先の話だね。僕は十五歳になったら学園にも行かないといけないし」
「そうでしたね。坊っちゃんはこの歳で錬金術をやろうって子ですから、さぞ優秀なのでしょう? 冒険者なんて止めておいて、他の道を探った方がいいですよ」
「はあい」
僕は癒し草を採取して、違う道から帰ることを提案すると、嫌な顔もせずにタチアナは別ルートから森を出るように歩き出す。
当然、帰りも〈発見〉先生が大活躍でした。
ロイク・ルークエンデ(男/7歳)
【魂】
└【前世の記憶】
【肉体】
├【器用】
│ └〈剣技〉Lv3
├【敏捷】
│ ├〈俊足〉Lv2
│ ├〈軽業〉Lv2
│ └〈水泳〉Lv1
├【感知】
│ └〈発見〉Lv1 new!
├【筋力】
│ ├〈格闘技〉Lv2
│ ├〈膂力〉Lv2
│ └〈瞬発力〉Lv2
└【体力】
├〈持久力〉Lv3
└〈持久走〉Lv1
【精神】
├【知力】
│ ├〈集中力〉Lv3
│ └〈記憶力〉Lv10
│ ├〈模倣〉Lv2
│ ├〈写真記憶〉Lv2
│ └〈記憶の図書館〉Lv2
│ └〈検索〉Lv1
└【魔力】
├〈魔力操作〉Lv2
├〈魔術制御〉Lv1
├【水属性】
│ └〈水魔術〉Lv2
├【光属性】
│ └〈光魔術〉Lv1
└【情報属性】
└〈情報魔術〉Lv1




