第20話
「お帰りライル、随分と話し込んでたじゃない」
「そんなにかかってないだろせっかちだな」
「まあまあ、そう言ってやるなよ君が心配だったんだよ、違うかなサヤ嬢」
「「うわっ」」
いきなり肩の隣から顔を出したネアに二人合わせて変な声を出す。
「失礼すぎないかい君たち?まあいいや慣れてし。伝えておきたい話があったんだがアリア嬢はどこかな?」
「急に話しかけられたら驚くわよ、それで話って?あんまりいい話な予感はしないんだけど」
すぐに離れるところをみるとこちらを驚かせたかっただけなのだろう、俺はいいがサヤはあまりジョークや必要もないのにふざける相手をあまり好まない。正直嫌な予感がしてきたが逃げるほどの理由にはならないので話を続けよう。
「それなら君たちから話しておいてもらうとして……まずはこの手紙を持って行ってくれ、ガウランに見せれば君たちの実力の証明とアリア嬢の紹介文にもなっている。きっと受け入れてくれるだろう」
「……実力の証明ってガウランさんは俺たちの力を疑ってるのか?」
「彼はともかく君たちが歳若いからとうるさいものもいるからね、面倒なのは嫌だろう?」
「確かにありがたいが……意外と面倒見がいいんだな」
正直予想外だ、人をのせて使うのが得意な女だと思っていたが意外と気配りができるのだろうか。よく考えるとガウランさんと親しい反帝国同盟のメンバーとなればただの偉そうな女ではないのも当然か。
「いやいや、別にこれくらい当然のことだ、それで聞きたいことと頼みがあるんだがいいかな」
いい笑みを浮かべていやがる、間違いない最初からそのつもりだなこいつ。
「聞くだけ聞いてやるよ」
「それは助かる、なあにただの確認さ。君、故郷を燃やされたとかで帝国の英雄に恨みがあるんだろう?」
「……その話をどこで聞いたの?」
「サヤ、構わねえよ。別に隠してることでもないし面白半分ってわけでもないだろ?」
昔からその話をするとサヤは俺以上に不快さを隠さない、俺のことを思ってくれるのは嬉しいがだからと言ってお前が矢面に立つ必要はないといつも言っているのだが。
「流石にふざけてこんな話はしないさ、私も同じなんだよ」
「同じ?」
「帝国に赤い髪の炎の祝福……だったか、それを使う女がいるんだがそいつに故郷を燃やされて撃たれてしまってね。ほら見てくれよ」
どこか遠くを見るような目と悔しそうに食いしばった歯がそれが真実であると証明してくれる、行動こそふざけているようだが今言われるまでネアにこんな事情があるとは思っていなかった。
「ここで脱ぐんじゃねえ痴女かテメエは」
「色気で誘惑されてくれるなら説得が面倒なんだがまあいい、その女が今なんて名乗ってるかは知らないが帝国の英雄に仕えてるはずだ。そいつを殺す権利は私によこしたまえ」
言葉の端々に暗い感情を感じるのはこちらを信頼してくれた……のだろうか、ならこちらも隠す意味もない。
「それだけか?別に俺が恨んでるのはザナドって男と俺の故郷を燃やした騎士のやつらだけだ、そいつに手を出さねえならそれでいい」
「君の理解が早くて助かったよ、それじゃあアリア嬢も戻ってくるみたいだし二度の説明は面倒だ、ドラゴンの死体の処理もしないといけないしそろそろ行くよ」
やれやれと手を振って去っていこうとするネアをアリアが引き留める。
「待ちなさい、あなたもしライルが言うことを聞いてくれなかったらどうするつもりだったの?」
「そりゃあ説得だよ、なあに私もそれなりに優秀な魔術師だ。頼み事を聞いてもらうくらい簡単さ」
「へぇ、優秀な魔術師なのにやり口は知性とは程遠いのね」
あっはっはと顔を見合わせて笑う二人を見て確信できた、この二人滅茶苦茶相性が悪い。




