第15話
「そもそもライルさん強すぎません?今のもですけど村の時も私が見ただけでも凄く鍛えてるって分かりましたし達人って感じ」
帰り道にアリアがいきなり俺を褒めたたえてきた。悪い気はしないのでつい口が軽くなるが目を輝かせて尋ねる彼女の様子に何か少し妙な感覚を覚える。
「なんだそりゃまんまだな、けど達人って言われるのは嬉しいね、これでも師匠の元でずっと修行してきたんだ」
「お師匠さんがいるんですか?」
「ああ、剣の達人で昔は国に仕えて教えてたって話だ。色々あって拾われてな」
「拾われたって……私と同じですね」
「むしろそっちより恵まれてると思うぞ、兄弟子と姉弟子が一人ずついたし」
「私もお爺ちゃんがいたんで気にしなくていいですよ、それよりどんな人だったんですかその人たちは」
それを聞いて一気に昔の思い出が頭を駆け巡る。
「ジジ……師匠は厳しかったけど優しい人だったな、あんまり人とかかわるのは好きじゃなかったみたいだけど。姉弟子のネアは綺麗だし強くて人付き合いも上手いけど怒らせるとめっちゃ怖かったな。兄弟子のクリフは剣は俺より弱いけど立ち回りが上手くて一度も勝ったことねえや」
10年前に帝国騎士の襲撃から逃げた俺を拾ってくれた師匠、そんな俺を気にしてくれたネア姉、駄目人間だったけどいろんなことを教えてくれたクリフの兄貴。それから出会ったサヤとの思い出、地獄みたいなあの日のことは忘れられないがそれでも俺が笑ってられてるのはあの人たちのおかげだ。
「ふんふん、いい人たちだったんですね。ライルさんがそんなに嬉しそうにしてるんですから」
「……そんなに顔に出てたか?そっちだって俺より楽しそうじゃねえか」
全く調子が狂う。これまでサヤと二人旅だったし普段から喋り続けて移動するは殆どなかった、だが悪くない。
「えへへ、だってライルさんの昔の話を聞くのってあんまりないじゃないですか、サバイバルのことは教えてもらってますけどもっと仲良くなりたいんです」
「いやまあ……そう言われたら仕方ねえな。聞きたいことがあるなら答えるぜ」
「ライルは年下の女の子に懐かれることなかったし慣れてないだけよ押せば大体押し切れるわ」
サヤがうるさい、来るまでは不機嫌そうだったのにこういう時にばかり楽しそうになりやがって。
「既にここまで来てますけどね、それじゃあ一番気になってた……あれ?」
周囲を見渡すアリアの気配が変わったものになる、先ほどまでのきゃぴきゃぴした少女のものから死を実感したことのある冒険者のものへと。
「どうした?」
剣の柄に手をかけ声を潜め様子を窺う。
「何か聞こえませんか」
耳を澄まし周囲の気配を探り、木々の隙間からこぼれていた光が無くなっていたことに気が付くことができた。
「口閉じろ!」
そのままアリアを抱え思い切り前に飛び、少し遅れて背後に強い熱を感じる。
「走れるか?」
「はいっ!」
「もう一体居たの!?聞いてないわよ」
サヤを呼び寄せ剣を抜き空に現れた新たなドラゴンを視界に収めながら足だけを動かす、いや口もか。
「俺もだよチクショウ」
「あっ、駄目ですこのままじゃ」
ペースを落としたアリアの言葉にさらに警戒を強めいつでも使えるように懐の道具に手を伸ばす。
「また何か気が付いたのか」
「違いますこのままだと村に出ます!」
どうやらこれ以上増えたとかではないようだ、でも今言い合ったところで得るものは何も無い、できるのは腹をくくることだけだ。
「ああクソなんだ帰り道に出てくるんだよしょうがねえどうにかするぞ」
「はいっ!」
相変わらずいい返事をするなあ!




