14話
「しっかしまさかあそこまで爺さんがあっさり許可くれるとは思わなかったぜ」
「信頼されてるってことなんだし裏切らないようにしなさいよ、まったく」
森に入ってからもサヤは不満を口にしているが相変わらず面倒見のいいやつだ、転びそうになるアリアに手を貸してやっているのをみるに彼女のことはいざとなったら任せてもよさそうだ。
「迷惑はかけないようにします、それに森なら風と土の精霊の力を借りることもできるので」
自信をもって言うが警戒しすぎているようだ、周囲をきょろきょろと見渡している。
「はいはいそれじゃあ向かいましょうか、森に潜んでるってことだしそんなデカくないでしょうけど」
「竜ってことは火を吐くんでしょうか?昔お爺ちゃんから読んでもらった本だとそうだったんでそんな感じで準備してきたんですけど」
微笑ましいが戦闘になった場合ドラゴンは相当危険だし不安もある。サヤに視線をやるとあんたがやれとでもいうように睨みつけられた、怖い。
「そこらへんも調べるんだ、例えば樹が燃えてたり炭になってたりしたらその通り、腐ってたなら腐食のブレスを吐く、近くの生き物に木みたいな痕が残ってたなら電撃を放つとか判断できるしな」
「なるほど、もしかしてドラゴンと戦ったことあるんですか?」
「一度小さい奴なら仕留めたことはあるぞ、デカい奴ならヤバいが小型ならバジリスクよりちょっと厄介な程度で済む」
「大きいとそんなに違うんですか?確かに大きいとブレスとか遠くまで届くと思うんですけどサヤちゃんって何でも斬れるって言ってたし大きくても勝てそうだけど」
「デカいってのは強いんだ、首や腕を斬り落としたところで落ちてきたら潰されて死ぬかもしれないしブレスの届く範囲も広くなるしな」
「それに太すぎると一撃で首を刎ねられないこともあるし、まあそんな相手だったらとっくに大騒ぎでしょうしどうせワイバーンとかに毛が生えたレベルじゃない?」
「それなら安心ですね……まあ私ロックリザード相手に逃げてたレベルなんですけど」
あははと笑うアリアに不安はある、だが決して彼女は弱くはない。もし勝利に貢献できれば彼女に自信につながるとは思ったのだが
「ホントよく来ようと思ったわね」
「あはは……でもここまでくる途中にお爺ちゃんやライルさんに精霊術?の使い方とか教えてもらったりしてますし足は引っ張りません、でも祝福持ちと戦ったことはないですしそうなったら不安ですけど」
(この子結構好戦的よね)
「ああそれなら心配いらん、祝福持ってるのは人間と亜人……単純に言うなら人型しかいないらしいぞ。教国でも王国でもそう言ってたし間違いないだろ」
「そうなんですかなんか不思議ですね……それじゃあサヤちゃんも祝福持ってたりするの?」
「あー私にそういうの無いはず。もしかしたらなんでも切れるってのがそれかもしれないけど正式に調べたわけじゃないし」
「俺も無いな、師匠から教わった剣術一本だ。サヤがいるからいらんしな」
少し自慢気な雰囲気が出てしまっていたかと思ったがアリアは気にしていないようだ。
「いや前もそう言って魔法使いにやられそうになってたじゃないちょっとは勉強しなさいよ魔法」
「んー、魔法と精霊術と祝福って何が違うんですか?いまいちよく分からなくて」
痛いことをつかれたところに二つの助けが入る。
「……いや、その話は帰ってからにしよう、見てみろ」
「これがさっき言ってたドラゴンのいる証拠ですか?確かに樹が倒れてますね」
「ああ、しかもまだ尻尾の跡が残ってるしこの先にいるはずだ」
手で二人を制しいざという時の逃走経路と地形、大きさを確認し改めて様子を窺う。
「どうやら眠ってるな、これならすぐに済む。アリアはそこにいてもし何かあったら地面を緩くしてくれ」
「はい、気を付けて」
そのまま俺は剣を抜き眠るドラゴンの首を一息に落とす、これであの女からの依頼は達成だな。
「さて、帰るか」
証拠に角を斬り落とす。
「私……何もしないうちに終わった……」
肩を落とすアリアと慰めるサヤを背にここまで来た道を歩きだすとアリアが肩を落としていた。
「なんというか……何事もなくよかったと思っておけばいいさ」
ああ、俺にもこんな時期があったなあ……
「あ」
「どうしたのライル!」
「いや、何でもない」
(アリアに経験積んでもらおうと思ってたの忘れてた……)
あまりにも簡単に仕留められすぎてすっかり忘れていた。




