第11話
「来てくれてありがとう、今茶を入れるから待っていてくれ」
「攫っといてなんだお前」
真意が全く見えずに困惑しながらも逃走経路を確認しているとサヤとアリアとクラウスの爺さんが来た。これを待っていたのかとも思うが敵意は感じられない。そんなことを考えているとカップを持って彼女が帰ってくる。
「皆さんいらっしゃい。楽にしてくれ」
席に着いた彼女を睨みながら何かあったときはどう彼女たちを守るかについて思いを巡らせる。
「うんうん、警戒心の高いことはいいことだ。改めまして私はネア、ガウランから君のことは聞いているよ」
「ガウランさんから?」
全く想定していなかった自分たちのリーダーの名前が出て思わずオウム返しのようになってしまう。
「あっはっは、なんだその顔は、なあに私も反帝国同盟の一員ということだよ」
「ならなんでわざわざ攫うような真似を……?」
目の前の紅茶に手を伸ばしながら気になっていたことを尋ねる。あんな風に人を使ってまでしたことだ、きっと意味があるのだろう。
「趣味だ」
「は?」
「びっくりしただろう?その顔が見たくてね」
「止めなさいライル、気持ちはわかるけどこんなところで暴力沙汰を起こさないで」
思わず椅子から立ち上がる俺をサヤが制してくれる。
「む、そんなに怒らないでくれよ。警戒はさせないようにしたつもりだが最初から私が罠に嵌めるつもりだったら? あの男たちが自爆覚悟で突っ込んできていたら? ここで毒ガスを撒いていたら? それくらいのことまで警戒するべきだろう君は」
目を細めこちらを見てくるネアに何も言えなくなる。腹が立たないわけじゃないが言っていることは正論だ。
「なあに責めているわけじゃない。今は任務中というわけではないし四六時中警戒しても意味がない、何に注意を払うかを選べるのは間違っていないとも。大体先に仕掛けた私が言うことでもないしね」
とひとしきり楽しそうに笑ったあと身を乗り出し本題を切り出してきた。
「さあてドラゴン退治の話に戻ろうか。一応君の戦闘力は聞いているけれど私は自分で見たものしか信じないタイプでね、君が戦力になるか確かめたいんだ」
「その言い方、本格的な戦いを始めるつもりか?」
「正解! と言い切るには早くてね、教国のとある男の協力を借りるためにここで恩を売っておきたい」
「それも含めてってことか」
わざわざ教国の竜退治を自分にさせようという意図がようやく理解できた。
「君一人でやれなんて言わないさ、指揮も実力の一つだからね、その剣も後ろの二人も自由に使うといい! 他に気になっていることはあるだろうがそれはドラゴンを倒した後に答えよう」
アリアと爺さんを指さしそう言ったネアはもちろん任務に関しては答えると笑い伝えることは伝えたとばかりに一緒に運んできたクッキーに手を伸ばしていた。
「なら分かってるだけでもドラゴンの情報を聞きたい、特徴、大きさ、羽の有無くらいは分かってるだろう?」
「漆黒の鱗にこの家くらいの大きさ、火は吐くが毒や呪い、魅了の類は今のところ使用は確認できない。纏めると普通のドラゴンだね」
エルダードラゴンでないのなら単純だ、サヤがいる以上負けはない。
「それなら宿の準備をしておいてくれ、安心しろ俺は帝国兵を二,三人同時に相手取ったこともあるんだぜ」
胸を叩き自信をもって言う、あとは着いてきてくれた二人の寝床さえ確保できれば上々だ。
「……君の中ではそっちのほうが強いのか? まあいい、キャンセル代は払いたくないんで生きて帰ってきてくれよ」
そう言ってネアは紅茶を一息に飲み干した。




