第10話
私たち。ライルさんとサヤちゃんとお爺ちゃんはコート村を出て教国への道の途中にある村にたどり着いた。
「……どうしよっか」
頭を押さえ状況を理解しようとしているサヤちゃんが
「いや追いましょうよ。ライルさん攫われちゃったじゃないですか!」
「なんかあったら私あいつのとこまで飛べるしそんな気にしなくていいと思うわよ」
「なんでそんな余裕なんですか、もし呼べないようなことになったら──」
「ライルはそんな間抜けでも弱くもないわ、だから大丈夫」
強く言い切りまっすぐこちらを見つめるサヤちゃんに私は何も言えなくなる。それだけでライルさんのことを強く信頼していることが分かるから、私が口を出していいことなのかも自信がなくなってしまう。
「でもそんなに気になるなら行きましょうか」
だけどすぐに笑顔を浮かべてこちらにそう言ってくることに気を使わせてしまったかと申し訳なく思うけど、一瞬目を逸らしたサヤちゃんがライルさんを心配してくるのも伝わってきた。
「はいっ!!」
だから私も強く返事をしたんです。
──────────
話はこの村。アグロ村にたどり着いた時まで話は遡る。
「なんだこの村、人少なくないか?」
「教国領だし帝国の兵がいるわけでもなし。なら病気か魔物じゃない?」
サヤと一緒に考え始め──
「そう!さすが話が早い、最近この近くの森にドラゴンが現れてね。教国は援軍を送ってくれない、対処できる人はいない。となれば逃げるしかあるまいよ」
いつの間にか近くに来ていたテンションの高い褐色肌で若干俺より歳若いだろう長い黒髪の女性がやれやれと首を振りつつ声をかけてきた。
「ドラゴンってこんな人里近くに来るもんか? それにさすがって俺たちどこかで会ったことあるか?」
「うわ口説き始めた」
サヤの言葉は無視して相手の反応を待つ。
「いやいや会ったことはないよ。そもそもこんな美少女と出会っていたら君のほうこそ覚えていないわけがないだろう」
理由もなく自信満々な彼女に圧倒されながら何か嫌な予感がする。このタイプの相手、特に女性は凄く理不尽なことを平気で言いこちらを引っ張っていくという印象が強い。いや、偏見であったばかりの人を判断してはいけないだろうと話を続けることにする。
「そうか……?」
「なんか含みのある表情だがさておき、君にドラゴンの討伐を頼みたいんだ」
「悪いが教国へ急いでるんだ。到着したら兵士に伝えておくから通してくれないか」
やはり偏見ではなかったかと嫌な予感が強くなっていく。
「そうはいかないんだよライル。君はそれくらい容易くやってのけるということを示してくれないと困る」
自分の名が呼ばれるのを聞き剣に手をかける。この村に来てから名乗ったことも名前を呼ばれたこともないはずだ。警戒しながら言葉を選び投げかける。
「……俺のことを知ってるのは間違いないようだな。なら困るというのはどういうことだ?」
「それに関してはここで立ち話もなんだ、ということでレッツゴー」
向けた警戒を意に介さずにそう言って目の前の少女が指を鳴らすと周囲から男たちが現れ俺の腕を、脚を、腰を掴んで持ち上げる。
「さあさあゆっくりと話をしようじゃないか、寝床も食事も用意するよ。君たちも来るといい」
そう言ってサヤたちに声をかけると自分は男たちを先導するように近くの建物に足を進める。
「わかった話は聞く!! だから降ろしてくれないか!? 降ろせ!!揺らすな!!」
暴れる俺を無視してやたら筋骨隆々な野郎どもは俺を担ぎ上げてあの子のもとにと歩いていくのだった。……いやホントに放してくれないかな。




