同級生ちゃんはかっこいい
「今日は楽しかったね」
駅のホームでなつきが口を開く。
空はもう日が沈みかけていて、今日のはしゃいだ疲れが押し寄せてきた。
なつきが繋いだ手を強く握る。
なんだかんだ、今日は何度も手を繋いでいた。
何かをするときはもちろん手は離していたし、ずっと手を繋いでいたわけではない。
しかし、無言で手をまた繋ぎ直す。
その繰り返しが、今日は何度もあった。
手を繋ぎ直す度に、最初の時は不安や緊張をはらんでいたお互いの手の力が抜けていった。
付き合っていた時ですら、こんなに手を繋いでいた訳ではない。
それに、もともと俺となつきはこんなに分かりやすくイチャイチャする性格ではない。
ただ、今日は、お互いの関係が、付き合っていた時以上に進んだ気がする。
よく思う。
なぜ、俺となつきは別れたのだろう。
あの時、俺となつきは深く傷ついた。
もう、お互いの顔を合わせられないと思った。
気まずさや申し訳なさ、自分が逃げたいと思ったから、それに、これ以上好きな人に傷ついてほしくなかったから。
今の俺ではもうわからない感情があの時の俺にはあったのだろう。
でも、だからこそ考えてしまう。
もし、あの時なつきと別れていなかったらと。
そんなすぎてしまったことを、よく考えていた。
「そうだなぁ。映画でのなつきの反応面白かったし」
「もう!律だってびっくりしてたじゃん!」
もうじき電車がやってくる。
もうじき、お別れだ。
「ねぇ、運動会の日、なんて言おうとしたの?」
最近気になっていた事。
きっとなつきとしては無かった事にしたいのだろうが、気になったので尋ねてみた。
「察してくれないの?」
なつきは鮮やかに笑う。
なんで無かった事にしてくれなかったのか、はたまた、何を言いたかったのを察してほしかったのか。
それすらも察しろという事なのだろうか。
電車がやってくる。
俺は反対方向なので、ここでお別れ。
繋いでいた手を放し、なつきは爽やかに言う。
「ヒント、あげよっか?」
「いらない」
「貰っときなよ?」
「そう?なら頂戴します」
そう言って、なつきが俺に顔を近づけたと思いきや………
「なんてね。調子乗んな、ばーか」
なつきは電車に乗り込んだ。
俺はつくづく男子高校生であることを実感した。
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