同級生ちゃんと先輩くん
彼と私、山本なつきが初めて話したのは、日課となっている公園のバスケット場での早朝のシュート練習の時だった。
いつも通りに軽めのアップをして、ジャンプシュートから。
斜め45°、この角度が私が最も得意とする場所だ。
放たれたシュートは美しい放物線を描き、リングに吸い込まれていった。
「ナイスシュート」
まぬけな声だった。
バスケットコートの隅にいつの間にか居た男。
これが彼との、律との出会いだった。
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「なつき先輩、せんぱーい!」
後輩部員がぶんぶんと目の前で手を振り、考え事から意識がはっきりする。
「あっ、ごめん。何か用事?」
「いや、監督が呼んでたので…」
後輩部員の言う通りに監督の方を見ると、私に向かって手招きしていた。
「あっほんとだ、ありがとね。」
教えてくれた後輩に短くお礼を言う。
「なつき先輩、今日ぼーっとしてますけど大丈夫ですか?」
「ううん、全然大丈夫だよ、行ってくるね。」
部活中に気を抜いて、後輩に気を使わせてはいけないと頬を叩く。
しかし、監督に呼び出されて聞かされた話も、ボーっとしていて、全く頭に入らなかった。
理由はたぶんきっと、昨日の“あのこと“のせいだ。
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