先輩くんのオシャレ
まだ集合時間の十分前だというのに、既にあおは到着していたようだ。
集合に指定したのは「駅の南口」という言葉だけだったが、あおを見つけるのは簡単だった
黒の花柄のワンピースという、美少女のみが着ることを許される服を着たあおは、周辺の人と比べて、圧倒的な異彩を放っていた。
それに対して、俺はちょっとオシャレなジャージ。
部活帰りの学生にしか見えないだろう。
「あっ先輩!こんにちは!」
こちらに気づいたあおの元気な挨拶に、朝っぱらから待ち合わせした気怠さが、少し軽減した。
朝の十時、学校の最寄りの駅ではなく、何駅か電車を乗ってやってきた駅の南口。
朝の十時は朝っぱらなのかと思う人がいうると思うが、普段の休日ならまだ寝ている時間だ。
「ん、はよ。」
「さてさて先輩、どこにいきます?ホテルに行きます?ホテルに行きます?それともホテル?」
……突っ込んだら負けだ。
「服を買いにいきます。」
「服を買いにいきましょ〜!」
どうやら今日のあおは、かなりご機嫌らしい。
トレードマークのポニーテールを揺らしながら歩き始めた。
「で、結局どこにいくんだ?」
今度は俺が問う。
わざわざ近所数駅離れた場所までやってきたのは、この場所はこの地域周辺と比べると、かなり建物が多く、店も多いから服を買うならここにくるのが一択!らしい。
よって服を買うにしても、服屋が大好きて、どこに行けばいいのか全くわからないのだが…。
「そうですね…夏物が入荷されたと思いますし、あそこにいきますか。」
そう言って、あおは、俺の前を歩き出す。
エスコートしているのは完全にあおだ。
到着した服屋にて、試着室の鏡に移る自分の姿を見て、少しドキドキしていた。
「オシャレな人がいる…」
店に入店して、とりあえず、値段の安いものを選んでいると、あおに速攻怒られたので、服選びはあおに任せたのだが、
グレーのカットソーのTシャツに、少し色の深いグレーのくるぶしが出る程度のスラックス。
わずかにTシャツの下からはみ出る白いシャツがオシャレっぽく見えた。
カジュアルなコーデだが、腕時計や、スニーカーなどが映えて、細身の体にもいい感じに似合っていた。
「せんぱーい、まだですか?」
試着室の外で待っているあおから声が聞こえる。
少し恥ずかしいが、試着室の扉を開ける。
「おぉ、オシャレな人がいますね。」
一言目の感想は、俺と同じだった。
するともう一度、全身を見渡して、
「うん!かっこいいです!」
天使の笑顔を浮かべた。
「そっか、なら買うよ。」
「え、いいんですか?もっと他に見てもいいのに。」
「ん〜いいよこれで。気に入ったし、レジ行ってくる。」
あおの笑顔にドキリとしたから買うなんて、とても言えなかった。
結局そのまま服を着たまま買うことにしさらに追加で、レジを済ませる。
「先輩って髪セットしないんですか?」
突然の質問だっが、オシャレの話題繋がりだろう。
「ん?ああ、髪ね。前はワックスつけてたけど今は付けてないな。」
ワックスをつけたまま布団に寝転がると、ベトベトになったのがワックスを辞めた決定打だ。
「ふーん。絶対セットしたほうがいいですよ。オシャレな服着てても、そのボサボサの髪じゃ台無しですよ?」
「まぁ、たしかに。」
綺麗なパーマならいいのが俺のくせっ毛の場合はチリチリのもじゃもじゃ。
以前ストレートパーマを当てたのが中途半端に残って、犬の毛のようになっていた。
「ならセットしましょう!いまから!」
どうやら今日は本当にご機嫌のようだ。
今からもっと振り回されるんだろうなと、少し覚悟を固めた。
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