バレンタイン特別編3
放課後、結局引き出しにチョコを入れた犯人は分からなかった。
今日はもう特にやることは無いので、適当に時間を潰して、帰るとする。
放課後になってから一時間ほどたっているので、生徒玄関には誰も居ない。
いそいそを靴を履き替えていると、俺の名前を呼ぶ替えがした。
振り返ると、そこにはなつきがいた。
「やっと見つけた。もう帰っちゃったのかと思ったから……」
俺を探して走り回っていたのか、少し息を切らしてなつきは言う。
その手には、やはりチョコが握られている。
少し息を整えて、なつきは俺の前へ。
身長差はほどんどないのに、上目遣いで小さな声で言った。
「律、これ、一生懸命作ったから食べてください…………」
両手で差し出されたチョコを受け取る。
「今食べてもいい?」
「う、うん……」
幸いここには誰も居ない。
チョコをここで食べても、誰にも見られることは無い。
ラッピングを外すと、一口サイズのチョコが数個あった。
「あ、ちょっと溶けてる。ごめんね!ほんとは朝渡すつもりだったし、ずっと握ってて、私体温高いから………………」
なつきのいう事を無視して、チョコを一つ、口の中へ。
「……うん。うまい。ありがとう」
素直な感想を伝えた。
すると不安そうだったなつきは顔になった。
「うん。食べてもらえてよかった」
「かっこいい」や、「イケメン」と言われがちななつきだが、安心したように笑うなつきは、ものすごく女の子らしかった。
「あ、チョコ、指にについてるよ」
ちゅっ、
「⁉」
「………ばいばい」
「おう………」
今のはイケメンすぎだろ…………
放課後の教室。
私は自分の階よりも一つ上、二年生の階の教室へと向かった。
そして、とある人の引き出しを除く。
そこには、朝私が入れておいたチョコは無かった。
「食べてくれてるといいな」
誰も居ない教室でぽつりと呟いた。
ぴこん、
携帯には、お姉ちゃんから、「チョコ渡せたよ!」と、スタンプ付きのメッセージが着ている。
「よかったね」と短く返して、その人の席にちょこんと座る。
そのまま机に伏せて深呼吸した。
この気持ちは、まだ内緒にしないとね。
バレンタイン特別編は終了です。
次回からいつも通りに戻ります
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