バレンタイン特別編2
「はい、先輩、一応お世話になってますので」
そう言ってあおは真っ赤な顔を半分マフラーに埋めて、ラッピングされたチョコを差し出す。
いつもの自販機の前、最近はあおは、寒いのでマフラーを巻いているのだが、今日のマフラーの目的は照れ隠しのためのようだ。
「ありがとう」
少しすねたようにも見えるあおからチョコを受け取る。
しかし、ここでとあることに疑問が浮かぶ。
「あれ?これって生チョコだよな?」
「はい………もしかして苦手でしたか?」
「いいや、大好きだけど…………」
困惑した様子のあおに、今朝の引き出しに入っていたチョコについての話をする。
すると、
「なんですかそれ!私知りませんよ!」
なんと、俺の引き出しにチョコを入れたのはあおではないらしい。
「先輩………思い当たる人は………」
「ないな」
わざわざ俺の引き出しにチョコを入れるなんていったい誰がするのだろう。
「俺にも隠れファンがいたのか………」
「何言ってるんですか。きっと誰かのいたずらに決まってます」
不機嫌そうに言うあお。
「でも、そのチョコ食べない方がいいですよ。誰から貰ったか分からないチョコなんですから、万一の事もあります」
確かに、手作りなのだから、何が入っているか分からない。
もしかすれば危ないものが入っているかもしれない。
あおの俺の事を案じてくれる気持ちに少しうれしくなる。
しかし………
「もう食った」
「………え、」
「めっちゃうまかった」
普通においしくいただきました。はい。
「でも、心配してくれてありがとうな」
そう言って、あおの頭を撫でる。
なんだか今日のあおは甘やかしたくなる可愛さだ。
「もう、先輩の食い意地には呆れます。私は寒いので戻りますね。ホワイトデー、期待してますから」
先ほどよりも小さな声で言う。
あおは再びマフラーに顔をうずめて歩き去っていった。
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