後輩ちゃんとデートの約束
「まじかよ…」
「えっへん!!」
俺の目の前で、なかなかに立派な胸を張るあお。
それもそのはず、今日は中間試験が終わった翌週の月曜、試験の結果が返されるのだが…。
「えっへん!!」
再び胸を張るあお。
そう。こいつは『学年で10番以内に入ったらデート』という一方的な約束の条件である
『学年で10番以内』を、見事にクリアしたのだ。
……………しかも学年一位で。
「解せん。」
ミルクティーをズビビと雑に吸う。
「えーもっと褒めてくださいよー!あっご褒美として今日のミルクティーは奢ってください。」
そう言いながら、俺の制服のポケットから、財布を勝手に奪い取る。
そのまま財布から小銭を取り出し、自販機に入れて、うんと伸びをしながらミルクティーのボタンを押す。
しかし、落ちてこない。
いるも通りの光景だ。
こんな奴が真面目に勉強しているやつを抑えて、学年一位となると少し悲しくなった。
仕方ないとため息をつき、ミルクティーのボタンを、あおの後ろから押す。
この後ろ向き壁ドンももう何度目か。
最初の頃は、ほのかに香るシャンプーの匂いにドキドキしたものだが、今となっては慣れてしまった。
「どもです。」
小さな声でお礼が帰ってくる。これもいつも通り。
定位置である、体育館の小出口の階段に座ると、横にちょこんとあおも座る。
「というわけで、週末はデートですね。」
紙パックにストローを刺しこみながら、あおはいった。
「やっぱそうなるのか…。」
いかんせん別れ際に一方的に言われたことだから、無効だということも期待したのだが…。
「今更なしとか言わないでくださいよ。私必死に勉強したんですから。」
たしかに、あおは放課後の勉強では、一切集中を欠く事なく、机に向かい続け、学力をつけていった。
その努力を無下にするのは良くないだろう。
「デートはいいけど…。俺とデートなんて楽しいのかね…」
あおの見た目なのだから、今まで友達や、彼氏などと、いろいろな男と出かけることなんてたくさんあっただろう。
そういう奴らと俺を比べると、一緒に居て面白さに欠けるだろう。
そして何より、
「俺、女子と出かけることなんて無いからオシャレな服持ってねぇよ。女子って、一緒に歩いてる男の見た目とかも気にするんだろ?あおの周りの人からの評価も下がっちまうぞ。」
普段俺は全く女子と出かけることなんて無いので、オシャレな服な持っていないのだ。
「先輩思春期の高校生ですよね…ちなみに持ってる服って…」
「全部ジャージ。」
「まじですか…」
俺の堂々した回答に、あおがわずかに舌を巻く。
あおの性格だと、他人からの評価など全く気にしないと言いそうなのだが、俺が気にするのである。
俺はともかく、一緒に歩いてるあおも、趣味の悪い女と思われるのは俺としても心外だ。
いつか服を買ってからにするか、デートは諦めると言い出すかと思いきや、あおはパァッと顔を明るくして、
「なら先輩!週末は服を買いにいきましょう!ショッピングデートです!」
なるほどそうきたか。
そんなこんなで、週末の予定に、学校のアイドルとのデートの予定が入った。
帰宅後
「妹よ、お兄ちゃん週末デート行くから」
「あっそ。勝手に行けば……ってえぇぇぇ?!」
「なっなんだよ……」
「え?!嘘!!相手は?!可愛いの?!どんな人!写真ある?!」
この後めちゃくちゃ詰問された
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