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後輩ティータイム  作者: ゆめ
第1章 先輩くんは振り回される
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夏祭り 結

長い夏祭り編も終わりです。

実はタイトル考えるのがめんどくさかったから夏祭り〇って書いてたんですよね


「はぁはぁ、」


 あれから数分後。


 必死になって、走り回ったところ、誘拐されたかもしれないという最悪の考えとは裏腹に、あおは神社近くのベンチですぐに見つけることができた。


「かわいい子、みーっけた」


 後ろからなるべく怪しく近づく。


 すると後はびっくりして身体をはねさせるが、俺だと分かると、すぐに顔を隠した。


 一瞬、泣いているように見えたのは気のせいだろう。


 そのまま数秒後、

「せんぱぁい………………」

 涙目で、甘えるような声で、






「お腹いっぱいで動けません……………うっぷ、」


 顔を真っ青にしたあお。


「なんでそんなに食ったんだよ…………」


 一瞬本当に何かあったのかと心配したが、杞憂だったようだ。


 あおの隣に腰を下ろす。


 そのまま沙紀に、「あおは見つけた。大丈夫だ」とメールを打っておく。


「先輩のせいですっ!」


 そう言って、すねたように言うあお。


 顔を膨らませて、機嫌が悪いアピールをしているが、心なしかうれしそうにも見える。


「なつき先輩とデートしてたんですよね?」

「まどかと三人だ」

「モテモテですね」

「全くだ」

「……………」

「まさか、なつき先輩といやらしい雰囲気になってませんよね⁉」

「なって………なってねぇよ!」

「あー!その反応あやしー!」


 あー。うざい。


 肩が触れそうな距離にあおがいる。


 綺麗な浴衣に、いつもと違う髪型。


 今日のあおはいつもよりも大人っぽく見えて………


「かわいいな」

「えっ!?」


 驚いた顔のあお。


 やべっ、声に出てた。


「何でもない」

「嘘です!今可愛いって言いましたもん!結婚したいって言いましたもん!」

「そこまで言ってねぇよ!」

「えへへー。褒められちゃったー」


 今日はテンションがいつにも増して高いな………その分うざいけど。


「なんで私のとこに来てくれたんですか?」

「沙紀から連絡があってな。迷子センターに迎えに来たんだ」

「そうじゃなくて。………なんで一回振った女のところに来たんですか?彼女を見捨ててまで」


 ………………ん?


「なぁ、お前なんか勘違いしてない?」

「なにがです?」

「俺となつきの関係」

「付き合ってるんですよね?」

「………………」


 やっぱりかぁ


「いやいや、俺となつきは付き合ってないから」

「………………え⁉」

「今日だって、お前と祭りに来るのを断ったのは、別に付き合ってるからとかじゃなくて、単純に先約で、なつきとまどかの三人で来る約束だったんだよ」


 俺の返答に、困惑した様子。


「え……………じゃぁ、先輩となつき先輩はイチャイチャしてない………?」

「いや、イチャイチャは普通にしてた」

「おい」

「大体、俺となつきが付き合ってたとしたら、あんなにお前と仲良くしねぇよ。浮気になるだろうが」

「確かに……………」


 あおは空を見上げて、大きなため息をついた。


「…………………なーんだ。私の勘違いですか」

「そうだ」

「そっか、なら…………」


 その瞬間、グイッと、あおは一気に身体を近づけてきた。


 大きな目が、俺を見つめている。


 真剣な顔で、あおは口を開いた。


「私、先輩の事が――









ドォォォォォォォォン‼









「っくりしたぁ……」


 空には、大きな花火が打ちあがっていた。


 あまりの迫力に、心臓が止まるかと思った。


 暗くて人気のないこの場所は、いい花火スポットだ。


「あお、なんか言いかけてたけど、どうした?」


 あまりの花火の爆音に、先ほどあおが言いかけていた話が聞こえなかった。


 するとあおは、今度は演技ではなく本気で怒った様子で、


「先輩のバー―――――カ‼」


 花火にも負けない大声で俺を罵った。


「はぁ?何言って………ん⁉」

 



 何をされたのか、一瞬分からなかった。


 目の前には、綺麗な顔。


 シーブリーズの香りと、たしか重み。


 唇には、柔らかい感触。


 今度は、花火の音をかき消した。


 ほんの一瞬のキスは、本当に、本当に、早く感じるものだった。


「……………先輩、かき氷食べました?ブルーハワイの味がします」

「残念、メロンだ」


 べぇ、と、緑に染まっているであろう舌を出す。


 やはりかき氷のシロップはすべて同じ味なのかもしれない。


 嘘だ。


 あんな一瞬のキスで味なんかするもんか。


 あおの照れ隠しは、あまりにも露骨だった。


「私はブルーハワイ派なので、お口直しが必要です。買いに行きましょう。もちろん、先輩の奢りで」



 主役であるはずの花火が脇役に感じる。



 それくらい、今のあおの真っ赤な顔の表情は、あまりにも、可愛すぎる。



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