夏祭り7
「「⁉」」
慌てて距離を取る。
しばらく顔を背けていたが、少しなつきの方を見れば、なつきも同じように、耳を紅くして、背を向けている。
「……………」
「……………」
気まずい。
「でないの?」
なつきの言葉に、電話が鳴っているんだと思いだす。
「なんてことしてくれるんだ!今いいところだったのに!」
電話に出るなり、俺はすぐに文句を言った。
クソ、あと少しだったのに。
『………何言ってるんです?こんな時に』
「って、沙紀ちゃん?」
誰からの電話か確認せずに出たが、電話の先から聞こえた声は沙紀だった。
少し息切れしていて、焦っている様子だ。
「どったの?」
「あおちゃんが居なくなったんです!」
その事を聞いた瞬間、身体に一気に緊張が走った。
「分かった、一応確認だけど、あおの携帯にはかけてみたのか?」
「はい、でも、つながらなくて…………」
「分かった。俺も探す。あとで連絡する」
そう言って、通話を切る。
あおの見た目はいいのだから、もしかしたら誘拐の可能性もある。
全身から冷汗が噴き出て、焦りが襲う。
目の前には心配そうななつき。
「何かあったの?…………もしかして、一ノ瀬さん?」
電話の内容は聞こえていないはずだが、なぜかあおがかかわっていることを見ぬいている。
「あぁ、なんか迷子になってみたいだから、探している」
「…………………うん。」
引き留めようとしていた。
目の前のなつきは、自分のわがままを言い出せずにいる。
分かっている。
夏祭りは、三人で楽しもうって決めたはずなのに。
だから、これは俺が悪いんだ。
「……………ごめん」
俺はそう言って、なつきと別れた。
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