夏祭り6
「バスケ、やってたの?」
隣にいるなつきが俺に問う。
あのまま俺は五本連続でシュートを決めた。
今はトイレに行っているまどかを二人で待っている。
「まさか、たまたま入っただけだよ」
「やっぱりすごいね。律は」
「そんなことないって」
「ううん。やっぱり、律には敵わないよ」
「そうか、きっと今ならあおにも勝てないぞ」
「またあの子…………」
「ん?どうした?」
俺があおの事を言うと、少し機嫌が悪くなった気がする
「……………バスケはもうしないの?」
「うん。」
「そっか、残念だな………」
少しの間、沈黙が流れる。
時刻はもうすぐ七時。
空はすっかり暗くなり、もうすぐ花火があがる。
「ねえ、律………」
きゅっと、服の袖を引っ張っている。
付き合っていた頃、キスをするときはいつもこうだった。
なつきは服の袖を引っ張ってくる。
横を見れば、顔を紅くして、不安そうななつきの顔。
身長差はほとんどないが、なんだかなつきが小さく見える。
「律…………」
先ほどまでとは一転、“そんな雰囲気“になった。
逃がさないと言わんばかりに、俺の胸に手を当てる。
そのままゆっくりと目をつむって、顔を近づけてくる。
俺も、それを受け入れようとする。
ここでキスをしてしまえば、大切なものを取り戻せる気がした。
艶やかな唇に、自分の唇と重ねれば、何かから解放される気がしたんだ。
そして、もう一度、なつきを好きになる。
「…………」
「…………」
あと五センチ、周りの音は無くなり、お互いの息遣いまでわかる。
懐かしい感覚。
もうすぐ、唇が触れる。
そんな瞬間、
プルルルル
電話が鳴った。
くっそぉ!!!!いいところで!!
この作品が少しでもいいなと思ったら★★★★★と、感想、ブックマークをよろしくお願いします