夏祭り4
あお視点です
「あれれ?迷子になっちゃった…………?」
あたりを見渡すと、先ほどまで一緒にいたはずの果歩と沙紀が居ない。
どうやらはぐれてしまったらしい。
この人ごみでは、やみくもに探しても見つからないだろうし、携帯で連絡を取ろうとしたが、
「あっちゃー。携帯忘れちゃった」
恐らく浴衣に着替えるときにそのまま家に置きっぱなしにしてしまったのだろう。
こうなってしまえば、いよいよ困った。
食べ過ぎで帯が苦しいので、近くの人気のない神社にあるベンチに座った。
「はぁ………先輩」
また、あの人の事を思い出す。
あの人は、たぶん。なつき先輩と一緒にいるのだろう。
分かってる。
先輩の気持ちは、きっと、なつき先輩に向いているという事を。
私じゃ先輩の一番にはなれないという事を。
涙が出てきた。
私は、先輩が…………。
冷たい夜風が吹き抜けた。
祭りの騒々しさはどこか遠くに感じて、私だけが、この暗いベンチに取り残された気分になる。
一人が、凄く寂しい。
「先輩………………私を選んでくださいよ」
涙は止まらない。
先輩は、今きっと、なつき先輩と幸せそうにしているんだろうな。
私の事なんて……………
そんなとき、木陰から、一人の男が現れた。
「かわいい子みっーけた」
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