前髪ちゃんは処女です
まどか視点の話になります
「ど、どうしよう……」
放課後の部室。
自主練習で居残りをした、まどかと、なつきは部室で向き合っていた。
なつきは困った様子でまどかにしがみつく。
「どうしようって……よかったじゃん。今年も律くんと夏祭りに行けて」
冷静そうに話すが、まどかも内心、律と夏祭りに行けて、焦りと、うれしい気持ちでいっぱいだ。
あの出来事以来、あたしたち二人は、律くんと距離ができていたし、今でも話す時はものすごく緊張する。
それになつきは、律くんがひどい目にあったのはすべて自分のせいだと、自分自身をひどく責めていて、今でもそれは引きずっているようだ。
でも、なつきの律くんに対する気持ちは今でも変わっていないようで、ずっと復縁の機会を狙っている。
「ど、どんな服で行けばいいかなぁ……」
「そりゃ、夏祭りなんだから浴衣でいいでしょ」
「じゃぁパンツの色は⁉」
「落ち着きなさい」
普段から落ち着いた雰囲気のなつきだが、律くんの話になるとすぐに、恋する乙女になってしまう。
手がかかるような、可愛いような、見ていて応援したくなってしまう。
自分の好きな人ですらも、譲ってしまいたくなる。
あの出来事で、律くんは心に深い傷を負った。当時は本当に辛そうだった。
でも今は、違う。
凄く、笑顔が増えた。
それはあの後輩のおかげなのだろう。
きっとあの子は律くんの事が好きなんだ。
律くんもきっと、あの子の事を少なからず思っている所もあるだろう。
でも、あたしはもう一人、あの出来事で心に深い傷を負った人を知っている。
あたしは、その二人両方に幸せになってほしい。
「うわぁぁぁぁん!どうしようぅぅぅぅ!!!!!!」
泣きわめくなつきをあやしながらあたしは言った。
「まぁ、でも、パンツは可愛いの履いていこうね。何が起きるか分からないから」
その場合になれば、あたしは陰から見守っておいてあげよう。
親友の”それ”を見守るのも、なんだか楽しそうだし。
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