先輩くんの過去3
先輩くんの過去編最後です
昼休憩、いつもはなつきとまどかと三人でお昼ご飯を食べているのだが、今日はなつきは用事があると言って抜けてしまった。
何となく違和感を感じたので、あとを追おうとしたが、なぜかまどかに止められる。
食事を終え、いつも通りにミルクティーを買いに第二体育館へ。
しかし、先客がいた。
そこにいたのはなつきとバスケ部のに三年、特に俺を嫌っていたメンバーだ。
「だから!そのことは律は悪くないですって!あれは事故だって何度言えば・・・・・・・・・・・・」
この声はなつきの声だ。
「何あいつの言う事なんか信じちゃってんの?あんなカス野郎の事なんて信じることないのに、あいつと付き合ってんの?」
からかうように答えるバスケ部の三年生の男子。
「成田はあいつに怪我をさせられた」
そう言ったのはもう一人の三年。
事故とはいえ、怪我をさせたきっかけは俺だ。
そのことで悔やんでいると、なつきは、「律は悪くない」と、励ましてくれた。なつきは本当に俺の心の支えになってくれた。
「だから、それは違うって言ってるじゃないですか!」
「これはね、成田本人が言ってたんだよ」
3年の先輩が言った事に、動揺する。
え?なんで、成田先輩が?
あの人自身が一番事故だってわかってるはずなのに………!!
「てかさ、なつきちゃんもなつきちゃんだよね。俺らが律君の事可愛がっている事を、先生にチクったでしょ?まぁ、あの顧問馬鹿だからすぐ誤魔化せたけど」
以前、俺が先輩たちから嫌がらせを受けている事を、なつきが顧問に言ったようだ。
なつきは俺を守ろうとしたのだろうが、この場合は恨みを買ってしまって逆効果だ。
「そこでこんなものを用意しました!」
三年生がスマホを突き出す。
そこに写っているのはなつきの下着の写真だ。
その写真を見て、なつきがおびえた態度を見せる。
他の男子も驚いたようで、「えっろ」や「後で頂戴」などと言っている。
俺の中でふつふつと怒りが増す。
「こっそり女バスの子に撮ってもらったんだよね。こればらまかれたくなかったらさ、言うこと聞いてよ。」
そして、笹山が口を開いた。
「ここでヤらせてくれない?」
………………は?
「なんかね、成田がなつきちゃんこと気に入ったらしくってさ、犯してるところの写真送ってだってさ。なつきちゃん可愛いし胸でかいからフツーに俺らも犯したいし」
三年生達の言っていることに理解が追い付かない。
成田先輩………………どうしてこんなこと!?
「言いたい事があるなら俺に言えよ」
我慢ができなくなったので、なつきを庇うように先輩たちの前に飛び出す。
なつきは少し安心したような、申し訳なさそうな顔をしている。
「おっ、律くん、いらっしゃいっ!」
一人の三年が近づいてきて、顔面を殴ってくる。
「いっ!」
殴られたんだ、殴り返しても正当防衛。それにもう怒りをこらえるのは不可能だ。
すぐに殴ってきた先輩に飛び掛かる。
それを合図にしたかのように、そこにいた男全員が襲い掛かってくる。
十数人に対して一人だ。勝ち目はない。
すぐに押さえつけられ、地に伏せられる。
「ほらほら、早くやらせてくれないと律ボコボコにされちゃうよ?」
「やめてくださいっ!写真も好きにしていいですから!律はやめて!」
泣きながら大声で許しを請うなつき。
「写真より律優先か……………。うぜぇな………あっそうだ。ちょっとストップ」
にやりと笑った笹山の合図で全員が俺を押さえつけて静かになる。
「そいつの肩、折ろうぜ」
ぞくりとした。
肩の怪我はスポーツ選手にとって致命傷だ。
他の男子は名案だと大爆笑している。
いまのこいつらなら本当にやりかねない。
すぐに右肩が変な方向に向けられる。
痛いッ痛いッ!!
どれだけ抵抗しようとも、ゆっくりと俺の肩は動かされ、痛めつけられていく。
「やめてっ!!」
なつきの声が再び静寂をもたらした。
「やりますから……………………それだけは許してください、お願いします」
静かな返事だった。
泣きながら告げたその言葉で俺の肩はいったん制止する。
「へぇ、じゃあ、とりあえず舐めて」
そう言ってその笹山はズボンのチャックを開け、それを出した。
その光景に他の男子は大笑いをしている。
「やめろ………やめろ!!俺の事はいいっ!やめろ!!!」
俺の絶叫になつきは無理に笑ってみせて、
「大丈夫だよ。ごめんね。」
大粒の涙を流しながら、無理に笑っている。
そのまましゃがみゆっくりと三年のそれに口を近づけていく。
やめろ………やめろ…………やめろ……………
あと数センチで口が触れるかという時、俺は頭が真っ白になった。
そして肩鳴らすパキッ!という、聞くのは二度目の音と共に、拘束から抜け出し、なつきに陰部を突き付けている笹山を殴り飛ばす。
先生がやってきたのは、その五分後だった。
その後、俺は救急搬送され、怪我がひどかったので1週間入院した。
肩は重傷で、もう治らないと言われた。その事実を聞いた瞬間、すっと体の力が抜けた。
これで、俺のバスケ人生は終わった。
一緒に報告を受けた妹の凛は大泣きしていた。優勝カップ見せれなくてごめん、死んだ父さんとの約束だったのに。
退院すると、学校から一カ月の停学と言い渡された。
ちなみにあの場にいた二、三年生はすべての罪を俺に被せたらしい。俺にはその誤った事実に反論を唱える力は残ってなかった。
あれだけの暴力事件を起こしたのに、一カ月の停学で済んでむしろラッキーだ。
それから退部届を提出した。
同級生とはすごく仲が良かったので少し寂しが、もうあそこに俺の居場所はない。
それに、もう俺の肩はバスケができない。こんな部員が居ても邪魔なだけだ。
入院している時、まどかが病室に訪れて、泣きながら話してくれた。
あの日を含め何度も、なつきは俺に対する嫌がらせを辞めてほしいと先輩たちを呼び出して頼んでいたらしい。
何度も何度も「気にするな」と言ったのに、何もしない自分が許せなかったようだ。
それはまどかも同じで、女子部の先輩に男子の説得を頼んだり、あの日も、先生を呼んだのはまどかだった。
さらに、なつきを盗撮した女子部の先輩も見つけ出し、逆にストリップ写真などの弱みを握り、口封じまでしてくれた。
まどかは常に凄俺となつきを心配していてくれた。
そして最後に、「ごめんね」とだけ言い残して病室を出ていった。
最後に、なつきの元へ行った。
第二体育館裏、なつきは泣きながらなんども「ごめん」と謝った。
そして、そこで俺たちは別れた。
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