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後輩ティータイム  作者: ゆめ
第1章 先輩くんは振り回される
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先輩くんの過去2

季節は冬、ウインターカップを一週間前に控えたある日、俺は成田先輩に呼び出された。


 早朝の体育館、成田先輩は俺にこう告げた。


「1on1だ。勝負しようぜ」


 何となく距離が開いているように感じた成田先輩だったが、一方的に壁を作っていたのは俺だけらしい。


 成田先輩は前からもっと俺と仲良くしたかったらしく、エースを奪われたのは悔しかったが、それが実力なので負けは認めている、と言っている。


 この勝負で勝ったほうがエースとして最後の大会、ウインターカップに向けて頑張ろうという成田先輩。


 顔でどれだけ真剣かが伝わってくる。


 成田先輩のエースに対する執着心は相当だ。この勝負に高校バスケのすべてをかけていると言っても過言ではないだろう。


「わかりました」


 俺はそう言って、上着を脱いだ。


 アップを済ませて成田先輩の前に立つ。


「先に十点取ったほうが勝ちだ。ディフェンスがボールをとるまで攻守は変わらない。これでいいな?」


 簡単なルール説明に頷いて、腰を落として構える。


「じゃあ、いくぜっ!」



 しばらくして、点差は九対八。成田先輩の一点リードだ。


 俺がオフェンスの番、ここで決めれば勝ちだ。


 視線でフェイントを入れて、右足を浮かせる。


 視線と足の動きにつられた成田先輩は一瞬反応が遅れるが、それでも対応する。


 しかし俺はすぐに左へと切り返す。


 クロスオーバーだ。


 完全に意表を突かれた成田先輩はよろめいて対応できない。


 俺はクロスオーバーを最も得意とし、相手をこけさせるなんてこともよくある。


 完全に抜いたと思った、しかしすぐ横には成田先輩、抜くことはできなかった。


 やばいと思って焦った瞬間、



「パキッ」



 そんな音が体育館に響き渡った。


 すぐに横にいた成田先輩がいなくなったので、そのままドリブルシュート。


 シュートは決まり、これで十点、俺の勝ちだ。


 後ろ向くとそこには、膝を抱えてうずくまる成田先輩がいた。





 膝の靭帯の断裂。


もう成田先輩は、バスケができなくなった。


 ミーティングでその報告を聞いたバスケ部の部員に動揺が走る。


 あの後、成田先輩は、救急車で病院に運ばた。


 俺のドライブについていこうと、無理な体制で膝に負荷がかかったのだろう。


 部員たちから視線が集まる。


 しかし俺は無視。


 ミーティングが終わると、笹山がこっちに歩み寄ってきて小声でつぶやく。


「お前、覚えとけよ」


 俺は何とも言うことができなかった。


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