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後輩ティータイム  作者: ゆめ
第3章 後輩ちゃんは大好きです
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同級生ちゃんとお散歩

「やっほ」


 旅館の入り口付近で先に待っていると、ほどなくしてなつきはやってきた。


 体操服を着て深夜に出歩くと補導されてしまうので、私服なのだが、なつきは驚くほどに薄着だった。

 春も終わりに近づき、温かくなってきたとはいえ、夜はとても冷える。

 俺は来ていた薄手のパーカーをなつきに渡した。


「ありがと」


 なつきはそれを受け取り、安心したように笑った。


 なんで急に会いたいなんて言いだしたのか、そんなことは聞かない。


 二人のこの時間をかみしめるように、俺たちは歩き出す。


 修学旅行の夜に、こっそり宿を抜け出してお散歩。

 いけないことをしている時の気持ちよさと、居心地の悪さと、青春の思い出を更新している儚さと尊さを感じながら、ぽつりぽつりと、弾む心と落ち着いた気持ちの混ざった胸の内でなつきと話す。


「ねぇ、律、バスケ部に戻らないの?」


 靴音だけが聞こえる夜道でなつきが尋ねる。


「うーん。そのつもりはないかな」

「……そっか。私が言ってもダメなんだね」

「まぁね」


 今まで散々あおや友人に言われた「バスケ部には戻らないのか?」という言葉とは重さが違う気がして、それでもこう返事をした自分にも責任がある気がした。


 それからは全くバスケの話題に触れることなく、静かに歩いていく。


 ただ、ほんの一瞬、さみしく感じたのは気のせいだろうか。


「おいひいね」


 訪れたコンビニで、俺はアイスを、なつきはフライヤーのチキンを買った。

 深夜にそんな油物を食べるなんて怠惰な女だ。


「一口ちょーだい」

「ん」

「ありがと。あむ…」


 コンビニの前でお菓子を貪る二人。

 こんな事をするために旅館を抜け出したのかとも思えるし、十分にリスクを冒してでもコンビニに来ても良かったと思える。

 ただ、もう少し、コンビニが旅館から遠ければいいな、と思った。


 しばらくコンビニでゆっくりして、来た道と同じ道を帰っていく。

 遠回りをしたいと思ったけれど、迷ってしまう気がして、でも後になって遠回りをしておけばよかったと後悔する気がした。


 いつの間にかなつきと俺の手は繋がれていて、時間がゆっくりに感じたかと思いきや、あっという間に旅館までついてしまった。

 それでもその力弱く握られた手は離れることは無くて、困っているとなつきは先ほどとは違う雰囲気で俺に問いかけた。


「ねえ、三日目の自由時間。私とデートしよ」


 そして立て続けに、なつきは雪が染まったみたいな表情で、俺に言った。


「私、律が好きだよ」


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