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後輩ティータイム  作者: ゆめ
第1章 先輩くんは振り回される
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同級生ちゃんは届かない

昨年の四月。


 今日から新しい高校生活が始まるというのに私の朝の日課は変わらなかった。


 近所の公園のバスケ場でのシュート練習。

 小学生のころから毎朝続けているが、今まで一度も、私以外の人が来たことはなかった。


 しかし、その日は違った。


「ナイスシュート。」


 私がジャンプシュートを決めると、コートの隅から間抜けな声が聞こえた。


 そこにいたのは渡辺 律。


 のちに同じクラスになる男子だ。


 右手にボールを抱えた彼はにんまりと笑って、

「勝負しようぜ」

 と、言ってきた。



 それから私の日課はがらりと変わった。


 毎朝のシュート練習は、律と共に行い、よく指導してもらった。


 練習の最後に行うのは1on1.


 ちなみに私は律から勝利どころか、一点も取ったことはない。


 無理もない。


 律は強豪と呼ばれるうちの高校で、入学して最初に行われた1年生対レギュラーチームの試合でうちの3年生エースを完全に叩きのめし、一人で四十得点をあげた。


 すべての動きのキレが圧倒的で、何よりシュートを外さない。


 機械のように、時にはファールをもらいながらでも、スリーポイントシュートをしずめる。


 律の動きは私の理想だった。


 だからこうして毎日一緒に練習しているのだが……………。


「なんでダメダメなんだぁ!!」


 ふてくされて、地面にあおむけに寝転がる。


 ちなみに今日もコテンパンに負けました。


「まぁまずはシュートが届かねぇとな。」


 そうだ。


 これが私の最大の弱点。


 シュートの飛距離が出ないなんてのは別に女子なら珍しくもない。


 しかし、高校生ともなれば、両手打ちならば簡単にスリーポイントエリアからでもリングに届く。


 しかし、私は届かなかった。


 なぜなら私は主に男子が使う、ワンハンドシュートにこだわったからだ。


 理由は………かっこいいから。


 もちろん、両手打ちに比べて格段に飛距離は落ちるが、それでも、私はワンハンドシュートにこだわり続けた。


結果は、全然だめ。


ある程度の距離は届くのだが、どうしてもスリーポイントシュートは僅かに届かなかった。


そんな時、律に出会った。


体格はあまり変わらない。


もちろん男子な分、私よりは力はあるのだが、彼のシュートは力で打っているシュートとは違った。


全身がバネのように、まるで地面から力を受けているようなシュート。


高校に入って諦めようとしていた、私の壁を乗り越えれそうな気にさせてくれたんだ。


「さぁ、俺はそろそろ戻るわ」


律はスポーツ推薦で入学した寮生だ。


いつも朝食の時間に合わせて帰っていく。


「うん。お疲れ様」


小さく返事をする。


「おう。じゃまた。」


そう言って帰っていった。









「またね。」


彼が居なくなったコートで小さく呟く。


彼が居なくなったコートは妙に静かで、今まで1人なのが普通だったのに、一人がさみしくなって、何となく、胸がドキドキしていた。


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