表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後輩ティータイム  作者: ゆめ
第1章 先輩くんは振り回される
15/216

妹ちゃんはやさしい?

「ただいま。」


 いつもより重く感じる玄関の扉を開けながら小声でつぶやく。


 あれから一時間の電車という地味に長い通学路を帰り、気力は尽きそうだった。


 笹山達め…容赦なく殴りやがって。


 ずきずきと痛む体の痛みに堪えながらリビングに行く。


 今日は早く休もうと、二階の自室に上がろうとしたところで、2階から妹の凛が降りてきた。


 凛はなぜかいつも俺が帰ってくると、二階の自室に居ても、お出迎えに降りてきてくれるのだ。


 なんて可愛らしい妹なのだろう。やだ、シスコンに目覚めちゃいそう。

 まぁいつも「おかえり」ってすっごい冷めた目で言われてすぐに部屋に戻るんだけどね。「帰ってくるな」って言うメッセージなのかな……。


「おにいお帰り……。」


 お決まりのあいさつの途中で、凛の声がだんだんと小さくなる。


「おにい…その傷………」


 口元に絆創膏が貼ってあるのでこれの事だろう。

笹山の事は黙っておきたい。

 幸い顔に残った傷はこれだけ。口元の怪我くらいいくらでもごまかせるだろう。


「実は野球やってたら顔面に硬球が、」

「バスケ部に行ったの?」


 俺の発言を遮る、きつい言い口だった。


「傷、見せて。」

「嫌だ。」


俺もきつく言い返す。


 しかし、凛が迫ってくる。


 妹に変な心配をかけさせたくはない、俺は後ずさり拒否する。


「いいから見せてっ!」


 強引に凛が俺の腕をとる。


 その瞬間、腕が引っ張られたので、体に激痛が走った。


「っ!!」


 思わず声が出そうになるほどの痛みだった。


 俺の反応を見て一瞬、凛の手が緩むが、すぐさま確保される


「おにい…これ……」


 凛が俺のシャツもめくって腹部を出すと、そこには何か所も、青紫色のあざができていた。


 なかなか傷が生々しかったので凛がきつく目を閉じる。


 俺もここまでひどいとは思わず、「うえぇ」と変な声を出してしまった。


「大丈夫だからさ、もういいだろ。」


 沈黙に耐えれなかったので、早く解放してくれと凛を突き放す。


 しかし、凛はすぐに今度は抱き着いてきた。


「痛っ!!」


 可愛い妹からのハグは大変嬉しいのだが、正直今は傷が痛すぎてそれどころではない。


「まてって凛、痛いから!締め付けんなって!いってぇ!」


 俺の声は全く届いていないようで、締め付ける腕は全く緩まない。


 もう諦めた俺はなすすべなく痛みに耐えた。


「おにい………。」


 俺のシャツを涙で濡らしながら小さくつぶやいた凛の声に、俺は何となく頭を撫でてやった。



その後。

「まじきもいんだけど、調子乗ってなでなでとか、ほんとにやめてほしいし、めっちゃ汗臭いし、ほんとキモイ。」

 夕食を二人で食べながら、さっきのしおらしさはどこへ行ったのか、すっかりいつものペースに戻った凛の罵倒に、笹山のパンチ以上のダメージを受けるのだった。


この作品が少しでもいいなと思ったら☆とブックマーク、感想をよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ