先輩くんの先輩くん
「おい、てめぇが何しに来てるんだよ。」
ちょうど試合が終わったタイミングだった。
後ろから声がして振り向く。
声の主は笹山大樹。
男子バスケ部主将、体もでかく、プレーもうまい。男バスのボス的存在だ。
他にも後ろに三年生バスケ部員が数人。全員敵意むき出しの視線だった。
よりもよって、一番面倒な人に見つかってしまった。
午後一時から開始される練習のために来たのだろう。
「すいません。すぐに居なくなります。」
そう短く告げてその場から離れようとする。
「おい、」
呼び止められて、歩みを止める。
しかし、目は合わせない。視線はずっと下を向いたままだ。
「ここはもうお前の居場所じゃねんだよ。二度と来るんじゃねぇ。」
「だから分かってますって……ぐっ!!」
その言葉を言い切ったと思いきや、腹に激痛が走る。
笹山のパンチがみぞおちに深く食い込み、あまりの痛みにむせてうずくまる。
「あーらま、痛そう。っ!!」
今度は背中に痛みが走る。
別の三年生が再び殴りかかってくる。
絶え間ない攻撃に全く反撃できない。
ここは体育館の小入り口、勿論一通りが少なく、暴力を振るおうとも、誰も見て居ない。
しばらくして、一通り全員が殴り終えれば、気が悪そうに笹山達は部室のほうへ歩いていった。
別に笹山に見つかる度にボコられている訳では無い、しかし、俺がバスケ部の体育館に現れる度にこうして殴られる。
それだけ俺がバスケ部に関わることが許されていないという事だ。
結局なすすべなくボコボコに殴られた俺は、口に鉄の味を感じながらふらふらと帰った。
これからどんどん律くんの過去が明らかになっていきますよ