先輩くんに拒否権はない
「先輩!今度の練習試合、見に来てください!」
デートから5日後、今日も今日とて元気なあおがミルクティーを飲みながら言う。
「え、もう試合デビュー?」
高校からバスケを始めたあおはまだ素人のはずだ。
いくら練習試合とはいえ、試合ができるレベルではないだろう。
「それがですね、北高との練習試合で、一年生限定でやるらしんですよ。なんでも一年に早いうちから試合経験をさせておきたいらしくて。」
北高というのはうちの高校、西校の近所の高校で、先生同士も仲が良く、よく交流のある高校だ。
女子バスケ部も例に漏れず、監督同士仲が良く、北高とは頻繁に練習試合を行なっている。
「そして今年の新入生は5人なので、必然的に試合に出れるってわけです!」
なるほど。
「と言うわけで、先輩!見にきてくださいね。来週の日曜の午前ですよ。絶対ですよ。」
念を押すように何度も言うあお。
デビュー戦だから張り切っているのだろうか。
「練習試合か…」
別に来週の日曜に予定があるわけではない。
ただ、なんとなく行く気にはならなかった。
去年のことが、今でも自分をバスケ部から遠ざけていた。
それに、バスケ部の連中にはあまり会いたくない。
「ごめん、見に行くのは遠慮しとくよ。試合、頑張れよ。」
謝罪をしてエールを送る。
せっかく誘ってくれたのに、かってな理由で断るのは何となくモヤモヤして、ミルクティーをズビビと飲み干す。
あおは俺の返答に、ぱちぱちと瞬きをしながら、真顔でぼーっとこちらを見て、すぐに口を開く。
「え、普通にダメですけど。見に来てください。」
というわけで、空白だった来週末に予定ができた。
久しぶりのあおちゃん登場!
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