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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
12騎士選抜トーナメント
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12騎士選抜トーナメント10

「流石にやりやがる……ミル、すまんな! 首が飛ばされるトコだったぜ!」


「そんな訳ないでしょうに……首の半分ぐらいまでで、剣は止まるでしょう。その太い首を斬り落とすのは容易じゃないわ」


「おいおい、まだ斬り落とされた方がマシだぜ! 首を半分って……考えただけで、ゾッとしねぇな……」


 ガルムは自らの太い首に手を当て、舌を出して戯けて見せた。


「冗談はさておき、考えられない程のスピードだわ……普通に魔法を詠唱していたら、とても間に合わないわね……」


「まぁ、そのぐらいはやってもらわねぇとな! オレ達より弱いんじゃ、話になんねぇ!」


 ガルムは湾刀を構え、再び航太目掛けて突っ込む!


「単調な攻撃じゃ当たらねぇ、って言ってんだろうが! 力があろうが、当たらなきゃどって事ねぇ!」


「バカ、航太! 同じじゃないわ! 軌道をよく見て!」


 巨大な湾刀は大地……トーナメントの舞台である石畳を破壊し、その反動で跳ね上がる。


 破壊された石畳が石礫となって航太に襲いかかり、軌道を変えた湾刀が航太郎の頭上……バスタード・ソードの防御の上から潰しにかかった。


 が……石礫は航太の身体に当たる前に不規則に軌道を変え、振り下ろされた湾刀は航太の身体を避ける様に足元の石畳を破壊する。


「くそっ! 使いたくなかったのに、風の力が勝手に反応しやがった! 反応がシャープすぎ……」


「何バカな事言ってんの! 言い訳を垂れ流す前に、防御!」


 ゼークの声が聞こえた直後、湾刀が地面から勢いよく振り上がった。


 辛うじて後方に跳んだ航太に、湾刀は当たらなかった……当たらなかったが航太の身体は吹き飛び、握られたバスタード・ソードは粉々になって地面に散っていく。


「2本目の剣もイッちまった! 攻撃される度に破壊されてたら、何本あっても足んねぇぞ! 仕方がねぇ……使いたかねぇが、神剣を使うしかない!」


「なんか理由をつけないと、自分の実力不足を認められない訳? そんな事より、今の攻撃……剣圧に風の魔法を付加して、航太の鎌鼬みたいな攻撃に変えていたわ! リンク・マジックに風の魔法……一体、何種類の魔法が使えるの?」


 魔法使いなんだから、何種類かの魔法ぐらい使えるだろ……そう突っ込もうとした航太だったが、確かに複数の魔法を使っている人間をそんなに見ていない気がする。


 火の玉を放つ魔法使いは、だいたい火の玉を撃ってるだけだし、他の魔法使いも1種類か2種類ぐらいの魔法しか使っていない。


「ってーと、魔法使いって普通使える魔法って1種類なのか?」


「ガヌロンみたいに魔導師の指輪を使えば……それでも何種類か使える程度よ。リンク・マジックに風の魔法って、ロジックの違う魔法を瞬間瞬間で変えるなんて、普通の人間じゃ無理だわ!」


 驚きの表情を浮かべるゼークを見て、ガルムはほくそ笑む。


「ミル、オレの攻撃にベルヘイムの戦乙女が驚いてやがるぜ! こりゃ、勝てる流れだな!」


「団長、油断するなと言っているのに……それに驚かれてるのは、私達の力じゃないわ。私の持ち物に対して……でしょうね」


 オペラグローブの様に長い手袋に隠れたミルの指から、赤い光が灯っている。


「ゼーク様、貴女も私と同じ力を持っている筈……どうぞ、お使い下さい。決して卑怯でも逃げでもありません。そして、航太様……どうぞ神剣をお使い下さい。貴方が対峙している者は、神剣を持っている者と同等か……それ以上の力を持っていますから」


 ミルは、航太達にも見える様に両手を翳す。


 その瞬間、全ての指に赤い光が灯っていく。


「私と同じって……魔導師の指輪を持っているの? でも……そんな事……ありえない……」


 魔法使い5人以上の全ての生命力と魔力を吸って造られる魔導師の指輪……そんな貴重なアイテムを複数持っていること事態が異常なのだが、それが個人で10本も……


「ありえない……でも、それなら複数の魔法を使える説明もつく……けどっ!」


 ゼークは、叫ばずにはいられなかった。


 ガヌロンから受け継いだ魔導師の指輪……この指輪には、幼馴染の命と魔力が吸われている。


 だからこそ、ゼークには魔導師の指輪の重みが分かる。


 人の犠牲が無くては精製できない重みのあるアイテムが、1人の人間の指に10本も……


 約50人の犠牲によって精製された指輪が、贅沢にも1人の人間が使っている。


 ゼークには何故だか、それが許せなかった。


「航太! ここからは、全力でいくよ! 文字通り、本気の全力でいくわよ!」


「なんだよ急に……ま、それだけの相手って事か! エアの剣を使う許可も出たって事で、久しぶりに全力で暴れさせてもらうぜ!」


 風が吹き荒れ、ゼークの剣に焔が纏う。


「ほぅ……こりゃ、おもしろくなってきたってヤツだな! 面白い!」


「本気の力……見せてもらうわ。私達と供に戦えるか……いえ、聖凰だろうとヨトゥンだろうと、打ち倒せる力を持っているのかを……」


 会場の空気が一気に重くなる……


 そして、閃光が放たれた……

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