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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
12騎士選抜トーナメント
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12騎士選抜トーナメント3

「フェルグス殿、お初にお目にかかる。我は訳あってベルヘイム軍に所属しているが、キャメロットの人間だ。少しだけ話をしたいのだが……よろしいか?」


「キャメロット? 貴殿、本当に聖凰の息がかかった者なのか? 私の知っている聖凰の主は、人前では仮面を外すと教えると思うのだがな……それとも、礼儀の知らない者だから人柱としてベルヘイムに派遣されているのかな?」 


 十二騎士選抜トーナメントが行われている会場の裏手側……舞台裏の様な場所を歩いていたフェルグスとガラバは、黒い仮面を被った男に声をかけられ足を止めた。


 少し距離をとり、ガラバの身体を自らの身体で隠しながら、フェルグスは黒い仮面の男を牽制するように問い質す。


「失礼……確かに、仮面を外さずに話かけてしまった事は詫びるしかない。しかしベルヘイム国内で仮面を外す事は、我が主に禁じられている。今の任務を遂行する為に、正体を隠す必要があるのです」


 手を後ろ手に組み、深々と頭を下げる黒い仮面の男をフェルグスは睨みながら更に距離をとった。


「私かガラバ……どちらかを消しに来たのか? それとも、ただ無礼なだけの男か? 少なくとも、我々の存在を良くは思っていないようだな」


 黒い仮面の男は無意識に手を後ろに回していた事に気付き、慌てて手を前に持ってくる。


「度々、申し訳ない。手を後ろに回してしまうのは癖みたいなもので……フェルグス殿、本来ならば礼節を弁えた人物を派遣しなければならない事は、重々承知している。しかし我が国とベルヘイムの状況を考えると、そうも言っていられないのです。ご容赦願いたい」 


 黒い仮面の男は、そう言うと封筒をフェルグスに向けて差し出した。


「これは?」


「我が主からです。フェルグス殿の考えを聞かせて頂きたい」


 フェルグスは腕を伸ばして封筒を受けとると、裏表を確認し危険が無い物か確認する。


「何故、アーサー王が私に? 面識はあるが、覚えてくださっているかも分からん様な人間だぞ?」


「それは私にも分かりませんが……フェルグス殿は信頼出来る人間だと申されておりました。それで、どう思われますか?」


 フェルグスは手紙を畳み懐に入れると、黒い仮面の男を凝視した。


「この内容……ここで話をするのは危険過ぎるだろう。だが確認させてくれ。キャメロット国の……アーサー王の考えは、この手紙に書かれている通りで間違いないんだな?」


「はい。私も、その手紙に書かれた考えの元に動いております。まだ何も掴めていないので、証拠は何も無いですが……」


 フェルグスは顔を上げて、空を見ながら考え込む。


「この情報を渡した事が、信頼の証だと考えて頂きたい。そして、私達キャメロット国の願いは世界平和……人も神もヨトゥンも関係ない、自由で平等な世界を創造する事です。その為にも、フェルグス殿には協力して頂きたい」


 そう言うと、仮面の男は歩き出した。


「フェルグス様、黒い仮面の男……何者なんでしょうか?」


「本当にキャメロットの人間なのか……アーサー王の配下なのかは分からんが、この内容が真実だとしたらベルへイムは大変な事になる。正直ベルヘイムに恩はないが、アルスターに戦火が広がる事は避けたいな……」


 ガラバの問いに応えながら、フェルグスは考える。


 しかし…‥


「考えていても仕方ないな。大会を勝ち上がっていれば、いずれ黒幕も動くだろう。黒騎士を信用するかは、その結果を見てからでも遅くはない」


 ガラバを促し、歩き始めるフェルグス。


 その視線の先は、ベルヘイム天空城に向いていた……



「勝者! ゼーク、航太組!」


「しゃー! これが伝説の風のMyth Knightの実力よ!」


 ベルヘイム正規騎士を秒殺した航太は、勝ち名乗りと共に拳を突き上げる。


「ちょ……恥ずかしいし、礼儀知らずよ! 対戦相手にも敬意を払って……」


 眉間に皺を寄せるゼークの肩を、敗れたベルヘイムの騎士が叩く。


「不甲斐ない試合をしてしまったが、あれだけ喜んでくれれば逆に清々しいよ。ゼーク殿が付いているのだから、必ず優勝して下さいよ」


「ごめんなさいね……騎士の礼儀作法まで学校で習わなかったみたい。っていうか、習ってる筈なのにバカだから忘れてるんでしょうね!」


 突然怒りが爆発したゼークに笑顔を向けたベルヘイム騎士は、倒れている相棒を担いで舞台を降りる。


「何カリカリしてんだよ? 勝ったんだから、喜んだっていいだろ?」


「あのねー……正規騎士が正式な大会で負けるって、どういう意味か分かる? 信頼だって失っちゃうんだから……」


 舞台を降りた航太は、ゼークの顔を睨む。


「そんな事を心配してんなら、逆に失礼なんじゃねーのか? 負けたら信頼を失くす? たりめーだろ! ベルヘイム騎士として大会に出てんだ。そんぐらいの覚悟はしてんだろ! んで、実際に戦う場所は戦場だ! 負けた奴に背中を預けらんねぇって、そりゃなるよな! もし、そんな覚悟もなく大会に参加してる奴がいるなら、よっぽどの自信家か頭の悪い奴だけだろうぜ!」


 航太の言葉に、ゼークは小さく溜め息をついた後に静かに航太を見詰める。


「そう……覚悟はしているわ。私だって、この大会で勝ち上がれなければ12騎士は諦めるつもり。この戦いに出ている騎士達は、何かを背負っている……強敵しかいない大会に出るんだから、覚悟だって出来てる。でもね……背負っているからこそ、負けてしまった時は辛いのよ。家族だって馬鹿にされるかもしれない……勝った者は、その人達の想いも背負うんだよ。私達に負けたんだから仕方ないって思ってもらえるような戦いをしないと……」


 真剣な表情で自らの思いを伝えてくるゼークに、航太は自分の髪の毛をグシャグシャっと掻き回すと、その手でゼークの頭をポンポンと叩く。


「ちょっと! 汚い頭を掻いた手で触るな!」


「おい! せっかく良い事を言おうとしてたのに、台なしじゃねーか!」


 目を吊り上げた航太を見てゼークが吹き出し、釣られて航太も笑う。


「ったく……まぁいいや。確かに、礼儀を欠いていたかもな……それに、自分1人で戦ってる訳じゃねぇ……相方の事も考えていなかった。スマン! でもよ……ちょっと考え過ぎだぜ。確かに、負けた連中の分も頑張らねーとって思うけど、結局は自分の為だ。俺は、一真を助けたい。ゼークだって、12騎士になるって目標がある。強敵揃いの大会で、甘くねーんだろ? だったら、とりあえずは初戦突破を喜ぼうぜ!」


 ゼークは表情を和らげながら頷くと、気持ちを整える。


「航太の言う通り、勝ち上がる程に相手は強くなる。気を引き締めないとね!」


 戦いの余韻を残しながらも、舞台では次の戦いが始まろうとしていた。


 ベルヘイム遠征軍に従軍していた12騎士、アデリア・ホーネの部隊に所属している騎士が登場する。


 蒼穹の遊撃軍と呼ばれるアデリア指揮下の直属の騎士……蒼き鎧が、太陽の光を浴びて神々しく輝いていた……


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