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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
騎士への道
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ベルヘイム天空城

 

「これが、ベルヘイムか……って、城が浮いてんぞ! まぢかよ……いきなり、ファンタジー感出してきやがったな!」


「生きてる間に、リアル天空の城を見れるなんて思ってなかったわ! でも、町は地上にあるみたいね。お城だけが、宙に浮いてる様に見えるけど……」


 驚く航太と智美を、他の三人は更に驚いた様子で眺めている。


「おいおい……お前ら、ベルヘイムの部隊で戦ってたんだろ? なんでベルヘイム天空城を知らないんだよ。それこそ、この世界の全ての人が知ってるような事だぞ!」


「確かに……天空城の迫力や神秘さに驚く人は多いって話は聞くけど、浮いてる事に驚く人は見ないわね。もう、そのリアクションも見飽きてきたけど……」


 カラードはニミュエと顔を合わせて少し笑うと、舗装されている道の先にある大きな門を指を差す。


「許可証は無いが、お前なら顔パスで何とかなんだろ? オレ達はここでお別れだ。師匠が聖凰に加担してるなら、その理由を聞き出さなきゃならねぇ……人の住む町を派手にぶっ壊したり、子供を大人まで成長させる禁術を使った理由をな!」


「ガラード落ち着いて。まだマーリン様が聖凰に加担してるって決まった訳でもないし、まずは話を聞かないと……」


 ニミュエの言葉に智美は頷くと、ガラードに向かって手を差し出す。


「今までありがとう。途中で色々あったけど、助かったわ。出会えて良かった。でも……どうせ聖凰絡みなんだから、私達と一緒に行動してもいいのに……」


「厄介事に首を突っ込んでくから、本当に大変だったぜ! ま、確かに行き着く先は同じかもしれねぇけど、少しでも早く師匠に話を聞きたいんだ。絵美や美羽に会えたら、皆が心配している事を伝えておくぜ!」


 智美と握手を交わしたガラードは、航太の方を向く。


「あんまり、世間知らずを表に出すなよ。馬鹿だと思われる」


「何だ、そりゃ? お前の喧嘩っ早い性格も、どうにかした方がいいぞ! 最初の勘違いは最悪だったぜ!」


 二人は少し口元を緩ませると、拳を合わせる。


「師匠絡みだからって、あんまり無理すんなよ。聖凰の連中は、何を考えているのか正直分かんねぇ……一真が悪い奴に唆されて、操られている可能性もある」


「フィアナ騎士団のトップ二人相手に互角以上に戦える程の騎士が、航太の義弟だったとは驚きだ……だが、それ程の奴を唆かす奴がいるとしたら……やはり、グズグズはしてらんねぇよ」


 そう言うと、ガラードは航太達を背にして歩き始める。


「ニミュエも気をつけてな……ガラードの奴が不用意に飛び出しそうになったら、止めてやってくれ」


「はい……皆さんも、お気をつけて。ありがとうございました」


 ニミュエは頭をペコッと下げた後、白い修道服を翻してガラードの後を追う。


「じゃあ私も、ここでお暇するとしよう。助けてもらった事……感謝しているわ」


「メルフィさん……こちらこそ、道案内ありがとうございました。ガラードに任せていたら、ベルヘイムに着くのに何日かかったか……」


 離れていくガラードに聞こえないように、航太は声を小さくしてメルフィにお礼を言った。


「そういえば……メルフィさんは、黒い妖精って聞いた事あります?」


「黒い妖精……その手の話は、あまり詳しくないんだが……確かグランロッド家を失墜させた妖精が黒い妖精とか言われていた気がするわ……」


 智美の問いに、少し考えて知っている情報を搾り出したメルフィだが、確証は無く申し訳ないと頭を下げる。


「そんな……ごめんなさい。変な事を聞いちゃって……」


「いや……では、またな。次に会う時は、お互い騎士として……だな」


 そう言うと、メルフィも去っていく。


「さて……じゃあ、行きますか!」


「うん……ベルヘイムの人達、私達に力を貸してくれるかな? ちょっとだけ不安だね」


「ゼークもテューネも、オルフェさんもいるんだ。大丈夫だろ!」


 気軽に近付いた関所で、尽くお縄になったのは言うまでもなかった……



「ゼーク、来るのが遅ぇ! 何時間、牢屋にいたと思ってんだ! 他称では、ベルヘイム遠征軍を救った英雄だぞ! 俺は!」


「他称って……自覚があるなら、大騒ぎしないでよ……智美、ごめんね。遅くなっちゃって」


 航太を宥めながら謝るゼークに智美は笑顔を向け、大丈夫だよと合図した。


「航ちゃん、ゼークは忙しいのに来てくれたんだから、少しは感謝しなさいよね! お礼が言えない男は嫌われるよ!」


「てか、なんで智美にだけ謝るんだよ! こっちにも謝れ!」


 駄々を捏ねる航太に頭を抱えるゼーク……そして、智美の拳が落ちる。


「いてぇ!」


「いてぇ! じゃない! 一生牢屋にいろ! 行こ、ゼーク」


 二人のやり取りに、曇った表情のゼークが吹き出した。


「やっと笑ったか……他称のトコで笑ってくれてりゃ、無駄にダメージを負わずに済んだんだがな……」


「は? ゼーク、騙されちゃダメだよ。私のゲンコツで、言い訳が閃いただけなんだから……でも、本当にどうしたの?」


 智美に促されて、ゼークは話し始めた。


 聖凰騎士団のアーサーが一真である事……


 ベルヘイムで討伐軍が編成されようとしている事……


 ベルヘイムの聖凰騎士団討伐作戦の時期が迫っている事……


 事態は、航太達が思っているより深刻な方向へ動き始めていた……

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