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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
騎士への道
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聖凰騎士団7

「んで、絵美と美羽が連れ去られたってんだろ? だったら、助けに行かねーと!」


「だから、アーサーって人がカズちゃんなんだって! 絵美と美羽さんは確認の為にルナちゃんに付いて行ったのよ……何回説明すれば理解してくれんの?」


「一真がアーサーって名前を名乗ってるかなんて分かんねーだろ! でだ、あのガキだったルナが大人になってるなんて、怪し過ぎる! こっちの世界には、細胞を活性化させて急成長させる薬でもあるってのか? そんな訳の分からねー奴の言葉を信じるか? 普通?」


 絵美と美羽がアーサーの正体を確認する目的で聖鳳騎士団に潜入する為にルナに付いて行った後、航太達は智美達と合流した。


 絵美と美羽がいない事を知った航太が智美に食って掛かり、今に至る。


「航太さん……人間を急成長させる魔法は、確かにあります。でも、それは禁術と言われていて……使ってはいけない事になっているんです。そうは言っても、かなりの高位魔法だから使える魔法使いは限られますが……」


「そういや、オレの師匠……育ての親の導師マーリンは、何個か禁術は使えるみたいだが……禁術には禁止されている理由があるから、容易く使っていいモンじゃねぇって言ってた。しかしな……ニミュエも言っていたが、禁術は使える魔法使いは限られる。一体、誰が……」


 ガラードは、腕を組んで考え込む。


 禁術が使える魔法使い……マーリンぐらいしか思いつかない。


 子供が大人になる程の成長……リスクのある禁術を、子供に使うのか?


 禁術の危険性を知る師匠が、子供に使う筈がない……ガラードは首を振り、自分の想像を否定する。


「じゃあ、ルナが本当に大人になっていたとしてだ……ガラードの言う通り、かなりの副作用がある筈だ。細胞を無理矢理成長させて、大人になってんだからな! ルナが望んだとしても、それを実行するような奴らと一真が共に戦っている筈がねぇ! そらに、そんな事をする奴らのトコに絵美と美羽を連れて行かれてんなら、助けに行かなきゃダメだろ!」


「そっか……ゴメン、ちょっと軽率だったかも……」


 航太の言葉を聞いていたら、智美も不安になってきた。


 大人に成長したルナからは、悲壮感や操られている感じが無かった為、智美は信用した……が、よくよく考えると確かに怪しい。


「ま、もう連れて行かれちまったんだ……今更、言い合いをしていても仕方ないだろ。とりあえず、町の方へ行ってみないか? 戦闘は終わっているみたいだし、フィアナ騎士団の人に話を聞いて情報収集もしたい。アーレイさんが亡くなった事も伝えないといけないしな……」


「そうだったな……メルフィさん、すまねぇ……絵美達がいなくなっていて、つい気が動転しちまって……アーレイさん、智美達を守ってくれて犠牲になったってのに」


 ガラードの言葉で航太はメルフィに謝罪や感謝を伝え忘れている事に気付き、慌てて頭を下げる。


「いいのよ。先行し過ぎたのは私の責任だし、フィアナ騎士団の団員として皆さんを守れたのなら、職務を全う出来たのだから、アーレイは満足していると思う……でも、ガラードの言う通り、団長にはアーレイが戦死した事を報告しなくちゃ」


 航太は頷くと、戦火に焼かれた町へ向けて歩き始めた。



「メルフィ、無事だったか」


「団長もご無事で……ただ、アーレイが聖凰騎士団の魔法使いによって戦死いたしました……」


「そうか……聖凰騎士団は魔法使いも含めて、強者が集まっている。アーレイが敗れても不思議ではない」


 町の中心部で生存者の確認をしていたフィアナ騎士団の団長フィン・マックールは、メルフィを見つけて声をかけた。


 フィンとメルフィは、それぞれの情報を共有した後、航太達に目を向ける。


「君達が、メルフィとアーレイを救ってくれたのだな。まずは礼を言おう。我等の仲間を救い、共に戦ってくれた事に感謝する。災難だったな、こんな戦闘に巻き込まれてしまって」


「いや……勝手に手を出したのは、コッチの方だ。むしろ、アーレイさんに仲間を救ってもらった。感謝しています」


 航太の言葉に頷いた智美も、気持ちは一緒だった。


 アーレイがルナに仕掛けていなかったら……ルナが自分達に気付かず、不意打ちで魔法を使われていたら、全滅していたかもしれない。


 アーレイは未知なるルナの力を見極める為に、わざと単独で仕掛けたんではないか?


 そう思うと、感謝しかない。


「そうだ……団長さん達は、アーサーって敵の隊長を見かけませんでしたか? 見たのなら、その人の特徴とか教えて欲しいんです。もしかしたら、彼の義弟かもしれなくて……」


「義弟? どういう事だ? まさか君達は、聖凰騎士団の関係者とかではないだろうな?」


 航太と智美を疑いの眼差しで睨むフィンの後方から、豪快な笑い声が聞こえてきた。


「はっはっは! んな訳ないだろ! もし聖凰の関係者なら、こんな敵部隊のど真ん中まで来ないぜ。もしそうなら、アーサーより腕が立つか、オレ達が舐められているかのどっちかだ」


 フィンの後ろから、黒髪で短髪のイケメンが歩み出る。


「アーサーか……チビなのに女に守られてる、感じの悪い奴だったぜ! だが、剣の腕は超一流……オレと団長を相手に、剣一本で互角に渡り合ってみせやがったしな。ま、ベルヘイムを救いし伝説の風の騎士の義弟なら、あの強さも頷けるかな?」


 少し笑いながら、ディルムッドはエアの剣を品定めするかのように見つめた。


「航ちゃんより、エアの剣の方が有名なのかぁ……チビで女の人に守られていて、それで強いって言うなら、カズちゃんで間違いなさそうなんだけど……フレイヤさんも一緒だって言ってたし……」


「てか、ここでも勘違いが起きてんぞ! オレ達が強い事になってんなら、怪しまれるかも……」


 航太の言葉が聞こえたフィンは笑いながら、首を横に振る。


「いや、済まない。ディルムッドの言う通りだな。君達からは戦う意志も、我々の事を見下している感じもしない。だが、義弟が聖凰にいるかもしれないなら、その理由だけは聞かねばならん」


 航太は、一真が心を失い離れ離れになり、その後の消息が分からなくて探している事をフィンに告げた。


「そうか……英雄譚は、裏の事は書かれない。バロールを倒した程の戦闘があったのだ。犠牲になった者、犠牲になった事も沢山あったのだろう……もしベルヘイムに行くのなら、このままメルフィに道案内させよう。だが如何に心を失っていても、我々の町を攻撃するなら、聖凰は敵……という事になる。君の義弟でも、倒すしかない」


「そうなる前に、俺達が一真の心を取り戻してみせますよ!」


 航太が力強く声を出した隣で、ガラードが口を開く。


 師匠を……マーリンの姿を見なかったか? と……


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