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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
騎士への道
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聖凰騎士団2

 

「もう少しで森を抜けます! 急ぎましょう!」


「ちょっち、メルフィさん! 速過ぎるぜ! コッチは森の中を走り慣れていないんだ!」


 たいして息も切らしていないメルフィは、遥か後方から聞こえる航太の大声に足を止めて振り返る。


「うりゃー、2番手確保! 航太、随分とだらしねぇな!」


「はぁはぁはぁ……別に、競っちゃいねーよ! けどよ、このペースで走ってたら戦う余力は残んねーぞ!」


 立ち止まったメルフィの横まで全速力で駆け抜けて来たガラードから数十秒遅れて、航太が追いつく。


「に……しても、後続が全く見えねぇな。ちよっと、飛ばし過ぎたか?」


「ごめんなさい、私が急ぎ過ぎたわ……気持ちが焦っちゃって……少し戻りましょうか?」


 太陽が昇り始めた森の中は、木漏れ日があるものの、木々が太陽の光りを遮っている為まだ薄暗い。


 後方を確認するガラードとメルフィは、その薄暗い森の中に目を凝らす。


「音も聞こえねぇな……美羽のペースに合わせて走ってんのかもしれねぇ。だとしたら、かなり離れちまったかも……」


 メルフィ同様、航太も焦っていた。


 始めて異世界に辿り着いて、ゼーク達と最初の戦地に赴いた時……航太はガイエンの部隊によって滅ぼされた町を思い出していた。


 生臭い血の臭いと、惨殺された人々の姿……


 もう二度と見たくない……


 そして今の自分には、殺戮を止める力もある。


 後悔だけはしたくない……そんな思いが、航太を焦らせていた。


 引き返すか、先に進むか……迷っていると、ガラードが町の方を見て口を開く。


「進んだ方が良さそうだぜ……既に火の手が上がってやがる! 後ろも心配だが、智美に絵美……それにフィアナ騎士のアーレイさんもいる。何かあっても切り抜けられんだろ! それより……」


「だな……行こうメルフィさん! 侵略を止めねぇと……」


 頷いたメルフィが町に向かって走ろうとした瞬間、突然足元に金色に光る魔法陣が浮かび上がる。


「なんだ?」


「召喚魔法陣だ! 離れろ! 召喚に巻き込まれるぞ!」


 ガラードの叫び声に、航太とメルフィは魔法陣の外に飛び出た。


 その直後、魔法陣から円柱状の光が伸び、その光が無数の小さな球状の光となって四散すると、一つ目の巨人が現れる。


「なる程ね……こうやって、一つ目の巨人を召喚してやがんのか! だとしたら、魔法使いか召喚師が近くにいる筈だ! そいつを叩いちまえば、この戦いは終わる!」


「よく知ってんな航太! 流石は元ベルヘイム遠征軍の生き残りだぜ! 確かに、先に召喚出来る奴を潰さないと、戦いは終わらねぇ! これはチャンスだぜ!」


 航太とガラードは、現れた一つ目の巨人を牽制しながら、周囲を警戒した。


「航太さん、ガラードさん! アーレイ達と合流しましょう! 団長達が召喚師を抑えられていない……そして、町からは火の手が上がっている……危険だわ!」


「危険? むしろチャンスだろ! 一つ目の巨人の増殖を抑えて、町にいる一つ目の巨人を一掃する。それで終わりだ!」


 メルフィの言葉に何かに気付いたガラードと、その言葉を無視してエアの剣を構える航太。


 戦闘体制に入る航太を止める為、ガラードは航太の肩に手を乗せる。


「航太、さっき話をしたよな? ベルヘイム遠征軍の隊長を務めたアルパスターより強い奴が出張ってんのに、召喚は止められていない。そして、町からは火の手が上がってやがる! 冷静になれ!」


「……だったら、やはりオレ達が召喚している奴を止める! それで、戦局が変わる筈だ!」


 航太はエアの剣に力を流し込み、高速の鎌鼬を発生させた。


 横に払われたエアの剣から発生した鎌鼬は、一つ目の巨人の首を捉える。


 が……一つ目の巨人は無傷だ。


「ちっ! 力み過ぎたか? 次で決めてやる!」


「違う! 力を無効化された! 航太、もう一度言うぞ! 冷静になれ! ニミュエや智美達も、危険に晒されている可能性がある! 合流が最優先だ!」


 ガラードは航太の襟を無理矢理掴むと、力尽くで後方に押し出す。


「航太さん、自分達や仲間を守れて、始めて他の人達も守れるのです! とにかく、アーレイ達と合流しましょう! 神剣の力を無効化する程の力の持ち主が近くにいるのです。そして、それだけ強力な敵の相手が出来ていない……団長達も余力が無いって事です!」


「って事だ! 一つ目の巨人を召喚している召喚師は、フィン・マックールやディルムッドの相手をしなくても、悠々と召喚出来る環境にあるって事だ! かなりヤバイぞ!」


 一つの町が滅びようとしている……その状況を目の前にても、助けに行けない……


 その歯痒さに苛まれながらも、確かに智美や絵美達の事も気になった。


 頭が混乱しながらも、航太は一つ目の巨人を背にして走り出す。


 そんな航太達の動きに興味なさそうに、一つ目の巨人は町に向けて足を踏み出していた……


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