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雫物語~鳳凰戦型~  作者: クロプリ
騎士への道
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マックミーナ族の脅威

「メルフィ、回り込め! 力で勝負していても、話にならん!」


「分かってるわ! でも……こいつデカイ図体のクセに、結構速い!」


 一つ目の巨人相手に、二人の騎士が戦っていた。


 190センチはあろうかという身長に、筋肉質の身体……そして、その身体にも負けない程の太く長いバスタード・ソードを構える男……アーレイ・トレイス。


 無骨な顔立ちは、戦場がよく似合う。


 もう一人は、女性の騎士。


 シルバーの鎧は致命傷を避ける為に最小限の部位しか守っておらず、その細身の身体は見るからに素早く動けそうだ。


 目にかかる前髪が風で流れると、端麗な顔が露になる。


 翡翠の様な瞳は、神秘的にさえ見えた。


 その女性騎士の手に握られる剣は、両刃でありながらレイピアのような鋭さをもっている。


 女性騎士……メルフィ・セランダルは、鋭い切っ先の剣を更に鋭い剣速で一つ目の巨人の脹脛に突き刺した。


「ぐおぉぉぉ」


 一つ目の巨人は、不気味に光る大きな一つ瞳でメルフィを睨むと、素早い動きで棍棒を振り下ろす。


 3メートル以上ある一つ目の巨人に合わせて造られた棍棒は、普通の人間では掠っただけでも致命傷になってしまう。


 攻撃した余韻に浸る間もなく、メルフィは後方へ弾けるように避ける。


「これでも食らいやがれ! 化け物野郎!」


 一つ目の巨人の背後から、バスタード・ソードを渾身の力で横に降ったアーレイ。


 巨体のアーレイが上段から横に薙ぎ払ったバスタード・ソードは、それでも一つ目の巨人の腰にしか上がっていない。


 バスタード・ソードは一つ目の巨人の皮膚すら貫けずに、鈍い感覚がアーレイの手に伝わる。


「ぐおおぉぉ!」


 一つ目の巨人は叫ぶ……叫ぶが、効いてる様には見えない。


 そして振り回してくる棍棒を避ける為に、一つ目の巨人の攻撃範囲の外へ出る事を余儀なくされる。


「このままじゃ、コッチの体力が尽きるのが先だ。どうにかしねぇと……」


 呟いた視線の先では、メルフィに向かって棍棒を振り回す一つ目の巨人が見えた。


 その攻撃をスレスレのところで前転で躱したメルフィは、そのまま剣を振る。


 再び下肢に攻撃を加えたが……切れ味鋭く見えたその攻撃も、一つ目の巨人の足に掠り傷を負わせた程度だ。


「アーレイ、このままじゃ町が……早く倒さないと……」


「分かってる! だが、どうしようもねぇ!」


 一つ目の巨人に苦戦する二人……だが、決して弱い訳ではない。


 最強の騎士団と呼ばれるフィアナ騎士団に所属し、一つ目の巨人の討伐の為に派遣されていた。


 しかし、一つ目の巨人は予想外に強かった。


 町に攻め入ろうとする一つ目の巨人を誘き出す事には成功したが、付いてきた巨人一体に苦戦し、森の奥まで後退させられている。


 町には団長を含めたフィアナ騎士数名が向かってはいるが、一体でこの強さ……


 町から離れた場所で各個撃破しようとしたが、とてもそんな余裕はない。


「ちょっ……アーレイ! そっちに、野営している民間人がいる! 場所を変えないと……」


「ん……だと! くそが!」


 振り下ろされた棍棒を躱そうとしていた動作を止め、アーレイは足を踏ん張りバスタード・ソードを横にして棍棒の一撃を受け止めた。


「ぐおっ! なんてぇ力だ……」


 たった一撃で手が痺れ、方膝を付いてしまう。


「アーレイ、止まっちゃダメ!」


 まるでゴルフのドライバーを振るように、アーレイの頭を狙って振られた棍棒の一撃に割って入ったメルフィは、受け止めた細身の剣を粉々にされて、自身も大木に打ち付けられた。


 いや、打ち付けられる筈だった……が、そうはならない。


 クッションに包まれる感覚がしたと思ったら、身体の痛みも癒されている事に気付く。


 メルフィは、自分と一緒に弾き飛ばされたであろうアーレイに視線を向ける。


「何……あれ……」


 アーレイは、水の塊に身体を包まれていた。


 そして、メルフィ自身も水の中にいる事に気付く。


「大丈夫ですか? 剣は直せないけど、身体の方は直ぐに回復する筈です! 後は、任せて下さい!」


「あ、でも助けたら宿泊施設を紹介してね! お風呂付きの! いや、温泉付きの!」


 交換条件を出す絵美を一睨みした智美は、一つ目の巨人に視線を移す。


「あなた達は? いや、危険です! 離れていなさい! あの巨人は、私達フィアナ騎士が……」


「あんた達、フィアナ騎士か……なら、世話になった人の恩返しにもなる。俺達に任せてくれ」


 男の声と同時に、風が吹く。


 森の木々が……葉が、その風で音を奏で始める。


「うしゃああぁぁ!」


 獣の勘なのか……その風を放った主……航太に狙いを定め、棍棒を振り下ろす。


 が……その棍棒は、航太に当たる直前で軌道を変える。



 自分の意思と関係なく棍棒の軌道を変えられた事で、一つ目の巨人はバランスを崩す。


「終わりだ!」


 エアの剣が煌めき、鎌鼬が発生する。


 必殺の一撃は、しかし頭を守る為に手を出した一つ目の巨人の手首を切り落としただけだった。


「ぐぎゃぁぁぁあ!」


 痛みで叫んだ一つ目の巨人は、油断した航太の頭を目掛けて棍棒を振り下ろす。


 ガァキキキィィィン!


 航太の頭を守ったのは、ガラードの盾だった。


「航太、油断し過ぎだぜ! さっき倒したからって、同じ結果にはならない事だってある!」


 アーレイが方膝を付いてしまった攻撃を軽々と受け止めたガラードは、直ぐに攻撃に転じる。


 黄金の輝きを纏いし聖剣、カリバーンを引き抜き……棍棒を持つ腕を斬り裂く。


「止めだっ!」


「てりゃああぁ!」


 一刀両断……絵美が振り下ろした天沼矛から水の刃が発生し、一つ目の巨人は真っ二つになり倒れた。


 エアの剣を振ろうとした状態で固まった航太の肩に、アヒルの羽がポンポンと乗る。


「航太しゃん、美味しいところ持ってかれて、残念だったでしゅね~」


「あの……止めだっ! は、いらなかったかもしれないですね……戦闘中なんですし、別に格好を付けなくても……」


 ガーゴとニミュエに突っ込まれ、エアの剣を構えたまま航太は顔を赤くする。


「はぁ~。何やってんだか……皆さんは、大丈夫ですか?」


 智美の声に頷いたアーレイは、驚きながらも懇願するしていた……共に町を救ってくれないか……と


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