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タイムアタック異世界

作者: 慧瑠

ふと脳裏を過ぎったので書きました。

た、たぶんハイファンタジー?

「では、始めよう」


その声と共に'ソレ'は起動した。



削り磨かれた石に囲まれ、光は壁に掛けられている蝋燭の火のみ。

だが、部屋を一周する様に均等に掛けられた火は、問題なく室内を照らしていた。


「――世界の救いよ 来たれ!」


その室内にて長々と祈りを捧げる少女は、同じように床に刻まれた魔法陣を囲み立膝をつき祈っている者達を代表して長い詠唱後、その魔法を起動させた。


―――――――――

ミッションを設定

一、魔王討伐

ニ、レベルMAX

三、人間種不殺


以上。

―――――――――



少女の声に呼応する様に魔法陣は輝き、部屋を光で埋め尽くす。

そして光が収まると、魔法陣の中央には一人の男が立っていた。

中性的な顔で無表情。銀のローブ一枚を纏った男は周囲を確認し手を前に翳すと数回頷き、目の前にいる少女に一歩近付き巻き戻ししたように同じペースで一歩戻る。


「あ、あの…おな…あ、はい」


不思議な行動をした男を少し警戒するよ様に少女が立ち上がり名を聞こうとしたが、少女の頭の中に言葉が響き名前が伝えられた。


「では…えっとタス様、困惑しているでしょうが一先ずは父に報告し、今の状況をせ…あの?」


直立不動で少女の言葉を聞いていた男は、少女が話し終える前に再度周囲を見渡し部屋の角へと歩いて行った。

そして、男が壁に数度タックルをかますと壁に掛かっていた蝋燭が落ちてきた。

男は落ちてきた蝋燭を空中で掴み折る。


「あ、あのー」


男の意味不明な行動に少女が困惑していると、その部屋に居た他の者達も顔を上げ少女の様子がおかしい事を気にし始めた。


予定では、この後少女が国王である父と謁見の間に召喚した者を案内し、そこで魔王を討伐して欲しいと交渉をするはずだったのだが…。


男は何故か蝋燭を折っている。

半分ほど同じ様な動作を繰り返した後、数本の蝋燭は折らずに魔法陣の上に法則性を含ませ並べ始めた。


「ゆ、勇者様?そろそろ父が…」


理解出来ない行動をしている男に警戒心を高められるだけ高め、謁見の間で今か今かと待っている父の元へと案内しようと少女が声を掛けるが、男は少女の言葉を無視して折った蝋燭を床に刻まれている魔法陣に沿って並べ始める。


そして男は魔法陣に沿い、立てた蝋燭同士を折った蝋燭で繋ぎ終わった。


「もうよろしいですか…え?ちょ…ま」


未だ無表情の男が少女に近づくと、少女は気が済んだのだろうと思い父の元へと案内しようとする。

だが、男は振り向き背中を見せた少女の肩に手を置くと、無理矢理魔法陣の前に立たせ直し意味不明な男の行動に唖然としている者達を順に巡り魔法陣を囲むように配置させた。


それはまるで男が召喚された時と同じ配置。違うのは、立っているか立膝をついているか。

まだ何かあるのか?と困惑し、気の済むまでやらせて父には後で謝罪をしっかりとしようと諦めた少女は次の瞬間驚愕した。


男が何か空中に手を翳すと、本来使用すれば天啓が降りるまで再使用不可能なはずの魔法陣が輝き始め少女達から魔力が強制的に吸われ始めたのだ。


「そ、そんな!」


驚愕している少女を他所に、男は魔法陣の中央へと移動し立った。


「まさか!召喚を利用して帰る気ですか!」


男の行動で何をしようとしているか予測した少女が叫び魔法を中断しようとするが、移動した瞬間には何故か元の場所まで戻されている。

男が瞬きすれば、動いたはずの動作が無かったことにされている。そんな事を理解できない少女は何度か繰り返し動こうとしたが、途端に動く気が失せてしまう。


「謨オ繧呈アゅa縲€蠑輔″縺壹j蜃コ縺帙€€蜿ャ蝟」


男が初めて発した言葉は、誰にも聞き取れずノイズにしか聞こえなかった。

それと同時に魔法陣が淡く輝き始め、魔法陣を囲む皆が驚愕する中、男は自分の親指を噛み切り滲み出た血で長い針を創り地面に突き立てた。


「一体…何が…」


魔法陣の光が部屋を埋め尽くす事はなく、ずっと部屋を明るくする程度で輝き続けていた。

だが、少女の理解が追いつかないのはそんな事ではない。


魔法陣は起動し、男が求めたモノを召喚し続けている。

そう召喚が続いているのだ。


始めは小さなネズミから始まり、スライムが喚ばれ、少しスライムが続いたと思えば次には角を持つ兎'ホーンラビット'が喚ばれ…喚び出された魔物達は男が突き立てた血の針により次々と的確に急所を突かれ死んでゆく。

死んだ魔物は次に喚ばれた魔物に場所を割り込まれ、その身体は消失していった。


喚び出されたモノが死に、新しいモノが喚び出されを数十分繰り返した頃には、出てくるモノが大型になり始めた。

だが、しっかりと確認できるのは大型の頭のみで、全身が喚び出され前に息絶え次が喚ばれている。


男は、大型が出てきた事を確認すると血の針を持つ手とは別の手を使い空中を撫で数回頷くと、血の針はいつの間にか巨大な大剣へと形を変えていた。


そこからは同じ様に喚び出されては息絶えてを繰り返していたが、ドラゴンであろう頭が息絶えた直後辺りから呼び出されるモノの大きさが人型まで縮み始め、男は時折大剣を持ち上げ足で呼び出されたモノを軽く蹴り飛ばしては大剣を突き立てる動作を加え始める。


「ちょ!え、大丈夫ですか!」


少女は、理解が追いつく追いつかないではなく既に思考を停止してその光景を黙ってみていたが、男が蹴り飛ばした何かが足元で呻いている事に気付き意識を取り戻す。

少女は男を喚び出して何度目になるか分からない驚きに襲われた。


男が時折大剣を持ち上げ、蹴り飛ばしていたのは人間だった。


「くそっ…一体ここは…」


蹴られた腹が痛むのか、腹部を抑えている者を見て少女は既に驚いているのにも関わらず、また驚く。

その腹部を抑えている者は指名手配の盗賊団の頭領であった。


「誰か!」


その事に気づいた少女は、動くという考えは浮かばす声を張り上げた。

すると、外で待機していた騎士が即座に入り、中の様子に目を丸くする。


光る魔法陣、その中央に立ち大剣を突き立て、現在喚び出されている魔族を殺している男。

その男と魔法陣を囲む様に棒立ちしている国お抱えの魔道士達。その中では自分を呼んだ王女が足元で呻いている男を必死に指差していた。


「?…!貴様は!」


始めは王女が何をしているのか分からなかったが、王女が指差す先を見て理解した。

指名手配が呻いているのだ。

そんな者が王女の近くに居る事に気付き焦った騎士は慌てて近くに居た別の騎士に指示して縄を持ってこさせる。


縄を騎士が持ってくる間にも、次々と人間が魔法陣から弾き出され、その者は行方不明者であったり指名手配犯であったり。

不老不死と謳われた魔女であったりと様々な人間が弾き出されている。


「一体何事だ…」


数分後、縄を持ってきた騎士に続き入ってきた初老の男の声が響いた。


「お、お父様!」


「召喚に手間取っているのかと思えば…どういう状況だ」


その初老の男は、娘が勇者を連れてくるのを謁見の間で待っていた。

それはもうソワソワとして待っていた。

だが、いつまでたっても来ないし。騎士達は騒々しく走り回り始めたしで状況が気になった初老の男は召喚の間へと足を運んだ。


そこで見たのは、淡々と輝き始めた大剣を突き立て、時折持ち上げては何かを蹴り飛ばしている男と色んな意味で有名な者達が壁際で介抱されたり縛り上げられていたりと、神聖な場であるはずの場所が混沌としている状況だった。


「これは…いったグフッ」


とりあえず、状況を聞こうとした初老の男は飛んできた何かを回避する事ができず、ぶつかったそれと一緒に飛ばされた。


「お父様!」


首だけを動かし、それを見た少女が叫ぶが初老の男は飛んできた者を見て震えている。


「い…生きておったのか…」


「ぅ…あ、なた…?」


その吹き飛ばされた者を抱きかかえ初老の男が呟くと、抱きかかえられた女性は夢でも見ているかの様に掠れた声で呟いた。

その女性は、窶れボロい布切れしか纏っていなかったが気品さがにじみ出ている。初老の男は小さく呟かれた声を聞き確信した。それは自分が愛した女性だと…。


「まさか…お父様、お母様なのですか!」


「あぁ、十年前魔王に攫われた「我を喚び出した愚か者は誰ぞ」


最愛の人物の登場に、愛しの母の帰還に喜んでいた二人の言葉を割って、その場を支配する様な重圧のある声が響く。


その声に惹かれ、皆の視線がその者を視界に捉える。


「ま…魔王…」


もはや人で溢れかえり、外にまで並ぶ者達の誰が呟いたか分からない。

だが、それは真実であり事実。

魔王が禍々しい空気を纏い、その重圧で場を支配していた。


「ふむ…誰かと思えば何時ぞやの虫ケラではないか。

我を喚び出し、どうしようと言うのか?

はて…もしや、我が家来達を喚び出したのも虫ケラ共の仕業か?


ふむ、まだ歯向かう心を持ちあわせていたか。

良かろう!今度この様な事があっても目障りだ!今ここから人間共を始末するとするか!」


その身に宿る力を存分に解放し、完全にその場を支配しきったつもりの魔王は大きく両手を広げ、その場を含め国ごと消し飛ばそうと魔法を使う…はずだったが、何故か視界が左右上下にズレた。


「一…体……何…」


魔王は言葉を最後まで言う事叶わず、その身は光に包まれ消えていった。


「へっ?」


目の前に魔王が現れ、殺されると思った。終わると思った。

現状を理解するなど既に諦めていた少女は、やはり何が起こったのか理解できない。

ただ、死を強制的に受け入れようとしていたはずなのに、魔王の身体がズレたかと思ったら消えた。


誰もがただただ唖然としていると、魔法陣の輝きが強くなり始め徐々に七色に光り始めた。

その光景を見て、少女と初老の男は何が起こったのかを理解する。


神の天啓時のみ使える召喚の魔法陣。

それが七色に輝く時は、魔王が倒され勇者が元の世界へ帰る時。


その事を二人は知っていた。

だからこそ、理解はしたものの驚愕が勝り言葉もでない。


いつの間にか喚び出した勇者は魔王を倒せるほどに強くなり、行方不明者を探しだし指名手配犯を捕まえ、王妃までも救いだし…そして魔王を倒した。


「あ、あの!」


少女は帰ろうとしている中性的な無表情の男を呼ぶが、男は少女を一瞥し消えた。


「あれ?」


少女が瞬きをした瞬間、男は消え魔法陣は先程までが嘘かの様に静かに光ってなどいない。

少しぐらい話す時間があると思っていた少女は驚く。


「今の者は…」


呆然としている少女に初老の男が女性を抱きかかえながら訪ねた。


そして、少女は今さっき喚び出し帰っていった男の事を思い出し答えた…


「タス様。

私達の英雄です」




―――――――

CLEAR

-ミッション-

一、魔王討伐  達成

ニ、レベルMAX 達成

三、人間種不殺 達成


-ボーナス-

王女友好度 C

王友好度  D

王妃友好度 D

指名手配犯捕獲 達成 (80/172)

行方不明者発見 達成 (68/268)

魔族殲滅 達成

魔物一定数討伐 達成

ノーダメージ 達成

全スキル 達成

その他 38/50ボーナス項目達成


クリアタイム 00:57:37

スコア m0-0m ランク S

―――――――

魔法陣の召喚スピード倍速 人間のみを蹴り飛ばずなど フレームレートの操作


王女が召喚を見守るためなど ムービーの追記


王女の案内をキャンセル 蝋燭がちょっとの振動で落ちるタイミング 王が登場し説教する流れを王妃でカットする為など メモリビューア(乱数調整)


こんなイメージで書いてました。

やっぱり描写や盛り上げを作るの難しいですね。

でも、なんか書いてて楽しかったです。



なお、魔王登場時はラスボス戦時のムービー感覚なので見せ場演出としてカットしませんでした。

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