表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界耳かき店 ミミノヒ亭  作者: ひしゃまる
11/15

おっぱい

ダプタさんが帰ってから、数時間後。

店内に、ティエッタの深いため息が響いた。


「はぁ……」


ソファにもたれかかるように座り、ぐったりとしている。

「元気ないですね、ティエッタさん」

「そりゃ、まぁ……」

「おっぱいが大きすぎて耳そうじができないなんて、あるんですねぇ」


「あうぐっ」

イアリスさんの容赦のない言葉の矢が、ティエッタに突き刺さった。


そういえばいつぞやか、巨乳の女性は、足元のボールが見えないためにゴルフができないというのをテレビで見たけど……。


「揉んだら小さくなりますよ」

さらっと嘘をつくこの腹黒妖精。

「本当ですの!」

そして信じるアホの子エルフ姫。

「男の人に揉んでもらうのが効果的です」

「そ、そんな……で、でも、それでアユノスケさんに耳そうじをしてあげられるなら……」


もじもじ恥じらったのち、決意を固めて、ティエッタは薄緑色の瞳でこっちを見つめる。

「お、お願いしますわ、アユノスケさん……わ、私の胸を……」


「まてまてまて、なんだか私が得しかしない気がするけど待ってください! 胸をもめば小さくなるなんて嘘だ! また、大きくなるというのも嘘だ! イアリスさんも、偉い大魔法使いなら適当な嘘をつかないでください」


「ここいらでお色気シーンの一つも入れたほうがいいと思いまして」

「なにワケのわからないことをいってるんですか!」


「う、嘘だったの!」

衝撃を受けるティエッタ。

「♪~」

口笛を吹いて悪びれることない耳かき妖精に対して、ふるふると握り拳を固める。

エルフの姫たるもの、ここでただやられるわけにはいかない。

そんな決意が、彼女の表情からうかがえた。


「いいですわね……イアリス先生は邪魔になるものがなくて」


「お、やる気ですか? 三百年生きてきた耳かき妖精たるあたしにおっぱいのおっきい小さい程度のことがトラウマになるとでも……なるとでも!」


なってるのかよ……。

その背に怒りの炎を燃やす大魔法使いの頭を、私は指先でつついた。


「イアリスさん、大人げないですよ……そうだ、こうしましょう! ティエッタが膝枕係り、イアリスさんが耳そうじ係り、私が耳そうじされる係り。どうです、みんな幸せになれる提案ですよ」


「なんだか、アユノスケがとても嬉しそうなのが癪に障りますが……」

「しょ、しょうがないですわね……アユノスケさんがそれでいいのなら」


ティエッタがソファに座りなおして、私はそこに横になる。

ああ、何度味わってもこの膝枕は素晴らしい……。


私の肩から降りたイアリスさんが、トコトコとほっぺたの上を歩いていく。

耳かき妖精は耳の前で足を止めて……しかし、一向に耳かき棒が降りてこない。

「どうしたんですか?」

「えっと、それがその……」


言い淀むティエッタが、サイドテーブルに置いておいた手鏡を私に手渡した。

私は鏡の反射を利用して、自分の顔の上を見る。


おっぱい。


おっぱいの谷間に、イアリスさんが、埋まっていた。

ティエッタのおっぱいの谷間に埋まって、イアリスさんが身動きが取れなくなっていた。


おっぱいって、すげぇな……。

妖精って、すげぇな……。


うらやましい……。

来世はぜひとも妖精になって、こんな目に遭いたい。

そんな風に感じた私を、私は恥ずかしいとは思わない。


ていうか、イアリスさん、息できてるの?

胸の谷間にはさまって、ジタバタともがく耳かき妖精。


ああ、やっぱり息できてないのか。


「ひゃん! う、動かないでくださいまし」

甘い声をこぼすティエッタに、私はどうしたらいいのかわからず、おっぱいは宇宙だとか、中学生みたいなことを考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ