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閑話 守護者達

短いです。

前回の補足?みたいなものとなります

「やっほー、お疲れさま」


「……」


 ちらっとだけ声の主を見た黒き侍は露骨に顔を顰め、足早に歩き去る。


「ちょっと!無視しないでよ!」


「……何用か?」


「うわ、露骨に嫌そうな顔。まだまだ日は浅いけど、一応部下だよ私」


「世俗にまみれた衣装で軽薄な言葉しか吐かぬ者と馴れ合うつもりは無い」


「もう、またそういうこといって。ぷんぷん」


 人差し指を立てて米神にあて、頬をふくらませてわざとらしく怒る少女。

 侍は呆れもせずに、更に歩みを早くする。


「ちょ、ちょっと悪かったて!だからそんなにはやく走らないでよ!」


「走ってなどいない。ただの歩みだ」


「それでも競歩よりはやいでしょ。というかスペックが違うんだから、私が追いつけるわけ無いじゃん!」


「貴様の追従など振り切りたいぐらいだ」


「またそういうつれない事を……まあいいや、これ以上やってると終わりそうに無いから」


 ピンク髪の少女は踵を揃えて、まだ慣れていない敬礼をする。


「暴徒の掃除、お疲れ様でした隊長。お怪我はございませんか」


「なめるな。振り回すことしか知らん餓鬼程度の刃など受けるか」


 ふんと侍は鼻を鳴らす。少女は若干いらっとくるが、もう慣れたことと軽く流すことにした。


「ならばいいです。総理からも色々と言付かっております。後に会食でもしないかと聞いておりますが」


「下らん。私が屈するは総理に非ず。あの男は主たる器ではない」


「しかし一国を支える王の器ではあります。まあ、断られるのもわかっているような態度であったので大丈

夫でしょう。周囲の方々は少々騒がしくなるでしょうが」


「有象無象の言葉など蛆虫より意味が無い。勝手に言わせておけ」


「面子というのもあるでしょうがね。次の指令も預かっておりますが、どういたしますか?」


「貴様で処理しろ。部隊は他にもいるだろう」


「それではこちらで勝手に差配します。それと、私のほうの仕事も完了しました。それについて少々問題で

はないですが、お耳に入れたいことがありまして」


「失敗したと言うわけではなかろう。……まさか貴様、陛下に―――!」


「それはないです。確認してもらっても大丈夫です」


 くい気味に少女は否定した。ここで冤罪をふっかけられれば自分が肉片の二の舞になりかねないと知っていたからだ。


「ならいい。それで、何があった」


「思考誘導ですが、時間がありませんでしたのでだいたいしか領域指定ができておりません。映像も合わせ

ましたので、大多数は成功したでしょうが離島などはいくつか漏れがある可能性があります」


「構わん。少数程度ならいずれ他の大多数によって潰される」


「まあ、そうでしょうね。それでですね、思考誘導なのですがいくつか奇怪な反応を示した場所がありまして」


「なんだ」


「数まではわかりませんが弾かれた場所と抵抗があった場所が多数。推定となりますが同系統の異能者の可

能性があります。大雑把ではありますが場所はわかっておりますので、後ほど確認を。それとこちらは極少数となりますが……吸収されたものと、反転して返ってきたものがありました」


 侍は少しだけ眉をひそめた。


「それで」


「吸収された場所は関西方面、それぐらいしかわかりませぬが反転した場所が少々厄介でして……昨日判明し

た不審船惨殺事件の発見現場に近い場所なのです」


「……【ジャック】か」


 先日発覚した大量虐殺事件。

 被害者の身元が未だ判明しないほど残酷に破壊し尽くされているということで世間を騒がせている事件であるが、問題なのは犯人が確実に異能者、それもかなり強力な力を持った者であるということ。

 事件の残虐性から、良心の類も期待できない。

 政府でも最重要警戒対象としてマークされており、推定される凶器と残虐さから殺人鬼の名にちなんで【ジャック】と名づけられている。

「はい。弱い思考誘導とはいえ私の異能を返すとは、かなり強力な異能か異能を完全に使いこなしている可能性もあります。報告は以上です」


「……引き続き周辺を警戒。残党がいた場合は即刻殲滅、指揮は任せる。俺は陛下の御殿にいる。緊急なことがあったら連絡しろ」


「かしこまりました。いってらっしゃいませ」


 深々と頭を下げる少女を背に、侍は足早に国会議事堂を立ち去る。

 目指す場所は一つ。自らの主がおわす場所―――皇居。

 警備のうろんげな視線を無視して、ひたすら歩みを進める。

 十数分後、侍は一切静止を求められることなく目的の場所にたどり着いた。

 音一つたてることなく襖を開けた侍は、刀を脇に置き片膝をついて頭を下げる。


「日ノ本、参上仕りました」


「また仰々しい。頭を上げてください日ノ本さん」


 八畳ほどの部屋の中から、苦笑気味の少年の声が響く。


「新参者なれば、図々しくも気安く陛下に接するなど恐れ多きこと」


「……相変わらず頑固者ですね。まあ、いずれ時間が解決してくれるでしょう。映像は見ました、ご苦労です

日ノ本さん」


「恐縮です」


「私は既に象徴たる存在。あの方達が国を治めなければ、日本は衰退してしまう。暴徒の蛮行を未然に防げ

たのは大手柄です。褒章でも与えたほうがいいですか?」


「陛下のお言葉があればそれ以外には何も」


「ふふ、謙虚も美徳ですがあまり過ぎると私が困ってしまいますよ」


「しかし某には過ぎた……」


「わかっております。ならば、私はあなたが胸を張って褒章を受け取ってくれるような功績を残してくれることに期待しておきます」


「粉骨砕身で努力いたします」


 ある程度話し終えた時、少年は小さくため息をついた。


「……実は傲慢ながら私は思うのです。殺すべきではなかったのではないのか、と。彼らも我等が愛する国の民。もっと別の方法もあったのではないかと」


「………」


 侍は何も語らない。

 主が望むのは、謝罪でも後悔でも慰めでもないとわかっていたから。


「日ノ本さん、あなた達のおかげで日本は生きていると言っていい。よってあなたを責めることはしません。だからこそ、一つおこがましくもお願いします。あなたの力は、きっと日本の未来を切り開く力となるでしょう。ですがその刃を振るうのは真なる敵を討つときのみ、決して敵の鎧を身に着けさせられた民に振るうのはしないでください」


「……はっ、全ては御身のために」


 どこまでも冷静さを崩さず、侍は了解の意を示す。


「しかし、それであなたが倒れては本末転倒。いかなる場合においても、あなたの命を優先してください。先ほどの願いは心の片隅においておく程度にしてください」


「承知しました」


「それでは、あなたの部下にもご苦労とだけお伝えを。お疲れ様でした、日ノ本さん」


「失礼いたしました」


 襖を閉めて刀を取り、再び議事堂へと歩き出す。

 侍はどこまでも冷静で冷徹だ。

 感動も悲嘆も憤怒も、全て刀を取った時に置いて来た。その身に残るのは、どこまでも深く不可解で絶対的な主への忠誠心。

 突如芽生えた、顔も声も名前すらも知らない主への忠誠心。

 だが、一度出会えばそれは正しかったことがわかった。一目見れば、己の使命が理解できた。

 ただこの方を守るための盾となり、憂いを晴らす剣である。

 それが俺に与えられた使命。そのためになら……


「……修羅神仏だって斬ってみせよう」


 まずは手始めに主の国を侵そうとする馬鹿共を斬る、その次は国に不逞をいたす殺人鬼を殺す。

 侍は今日も、静かに狂う。


明日はたぶん8時くらいに出せたらいいなーって思ってます。


タイトルに閑話の追加をしました

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