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キューブ  作者: あおまめ
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彼女と共に

 光が消えるとそこには一人の少女のような者が立っていた。その姿は少女とも少年ともどちらの風貌も残しながら、どちらでもない中性的な姿をしていた。少女の様に見えるのは長い白髪が伸びているからだろう。髪が無ければ、どちらとも判別は付かない。

 そんな姿を見た、殺し屋は暗殺の機会を窺う。二人が消えた後のいる者、たぶんだが暗殺の対象はその者だ。この世界ではなんでもありなのだから、人が合体する事だってあるだろう。第二世代の武器は、宿主に寄生して宿主自身を一つの兵器にする。それと原理が同じなのであればあれはさっきの二人であり兵器だ。警戒レベルを上げながら、抹殺しなければならない。そう考え、殺し屋ウサギはあれに特攻する。

 セフィは光の中から出て来た者を見て、驚愕していた。第三世代の話は聞いたことがあるし、見た事もある。だが自身が知っているのは兵器自身が武器になるといったところまでだ。実際に彼女も武器になり、戦っていた。だが、第三世代が第二世代のように本人に寄生して宿主自身を兵器にするなど聞いたことも、ましてや見た事もない。あれは本当に第三世代なのだろうか。それともその先の新しい兵器なのだろうか。彼女はその新しい可能性を考えながら、二人の戦いを見る。

 そんな二人と違いエンリは、興奮していた。自身の能力の上をいくであろうあの姿に。自身に搭載したあらゆる計器の測定が、あの姿になんの反応を示さない。全てのレーダーであの姿を捉える事は出来ない。彼を見つけたのは幸運であった。彼はいずれ大きいな渦の目になる。その傍にいればきっと沢山の兵器を、そしてあれを見る事が出来るかもしれない。その期待から彼女は未来を妄想し、誠に期待を寄せる。ゆえに現在の戦いは既に終わっていると彼女は確信している。

 誠は、混乱している。いきなり白が自分の体に手を突っ込んだかと思うと、辺りが光に包まれた。痛みはなかったが自分は死んだのではと心の中で思った誠の目の前は、光に包まれた後も同じ光景が広がっていた。ただその光景には白がいない。目の前にいたはずの白が今は目の前にいないのだ。

 そんな白を探そうとすると不思議なことに、自身の感覚が今までにないぐらいさえている。風の音、その風が運ぶ砂や人の呼吸、集中すると心臓の音も聞こえてきそうなくらいだ。さらになんと表現すればいいか分からないが、力も大きくなったような。きっとジャンプすれば、あの高い屋根の上にも飛べそうなそんな感じがした。

 そんな体の変化に戸惑いながら、白を探そうとすると

「体の調子は良さそうですね。誠様」

 頭の中で白の声が聞こえた。どうすればよいのか、白との会話からこの状況を解決したいのだが相手は待ってくれない。

「来ます」

 白の声で目を前に向ける。そこにはこちらに走り出す殺し屋の姿があった。

 一人と兵器は手を繋ぎ、白い未知の相手に先手を打つ。やはり、手を繋ぎながら兵器を相手に向かって振るう。傍から見れば双子が片一方を振り回す形で、奇怪な光景だがそれが彼女の戦闘スタイルなのだ。振りかぶった人形が手に持つ武器を振るう。それがもし防がれても、内蔵された武器を使用して相手を追い詰める事が出来る。どんな相手ともオールマイティーに戦える兵器であるとウサギは自負している。

 そんは彼女の兵器が振るう武器を白いそれは何でもないようにかわし、距離を取る。この一連の流れは誠でなく白が体を操り行った。二人の体は今、誠の体を核に白の体で強化され、二人の意識を内包している。当然誠が体の主導権を有しているが、白がその体を動かす事が出来る。また、彼女の中にある経験から様々な動きに補正が入る。だからこそ素人である誠が、達人のような動きができ、殺しで経験を積んだウサギを圧倒出来る動きができる。

 距離を取った誠は、その手に白が使用していた白夜を取り出す。白は刀として使用していたのだが白との話し合いの結果、グローブのような形で手に装備する。誠は刀の事を白夜と呼んでいると思っていたのだが白の言葉では、

「近接系武器はどんな物でも作る事が出来ます。それらすべてが白夜なのです」

 との事で、近接系の武器であればどんな武器でも制作が可能だとか。今回、相手の手数が多いことからこちらも型にはまらない拳を使い戦う事になった。

 仕掛けるのであれば先手必勝。距離を取った誠は、そのまま突撃する様に相手に突っ込む。相手の兵器が攻撃する前に本体を叩く。

 ウサギの懐に一瞬で潜り込んだ誠は、その体に掌底を叩きこむが感触がない。叩き込まれた瞬間に人形がウサギの手を引き、ギリギリの距離でかわす。今度はウサギが軸になり、人形を振るい誠にカウンターを狙うが、人形の振るう刃は誠の拳に遮られる。拳に纏う白夜に刃は阻まれ、弾かれる。

 堅いといったのがウサギの感想だった。人形の握る武器や、自身の握る武器は決して兵器ではないがその切れ味は並みの武器のものでは無い。しかし、それが簡単に弾かれるのだからあのグローブがただ物ではないだろう。しかし、その程度で攻撃は終わらせない。

 人形の武器が弾かれるか弾かれない時に、すでに口を開きその口が誠を捉える。そして、弾かれた瞬間その口から小さな光が飛び、誠の目の前で爆発が起こる。その攻撃が成功しているかどうか確認することなく、次の手と弾かれた刃をもう一度誠がいるであろう場所に向かって斬りかかるが弾かれた。

「堅いね」

「うん。堅いね」

「どう攻めようか」

「そうだね。あれを使おう」

 弾かれると同時にその勢いに合わせ後方に人形を振るい、人形が地面に足を付けると今度はウサギが人形に手を引かれとこれを繰り返し距離を取る。誠はそれに追撃を掛けようか迷っていたのだが、その時間のロスによりお互いの間に距離が空き、ウサギはその距離を取れた事に安堵する。

 ウサギは手元のキューブを出現させる。その行動にセフィやエンリは逃げるのかと思ったが、そうではない。彼女はここに来る前に、兵器を手に入れている。それをウサギが使用してもあまり意味がない。というより両手に兵器を持ち両方を扱うことに自身がないが、人形が使う分には大きく変わる。彼女は取り出しだ強大なモーニングスターが付いた巨大なけん玉のような、名も知らぬ兵器を人形に持たせる。

「これで火力は確保した」

「そうだね。確保だね」

「それじゃあ」

「そうだね」

「「蹂躙だね」」

 巨大な兵器を装備し、誠に向き直り突っ込む。巨大なモーニングスターが円を描くように先行して、誠に突撃してきた。それを正拳突きで弾くが、弾かれた場所から一定距離離れるとまた誠に向かって突っ込んで来た。

 あのモーニングスターを正拳突きで弾き返すことができたこと事態に驚く誠だが、返ってくるということでなんの意味もない。それどころか人形とウサギがモーニングスターの後ろに追いつき、こちらに攻撃しようと仕掛けてくる。その状況から白は提案する。

「回避は私がします。誠様はただ拳を打ち込むことに集中してください。次に相手の人形が口を開けた瞬間がチャンスです」

 モーニングスターをギリギリの距離でかわす。その後ろから駆けて来る、ウサギと人形を拳を構え迎え撃つ。人形の頭を捉えた拳だが、その拳が頭をつぶす事はなかった。人形の足がスクリューのように回転し、誠の拳をかわしキスをするかのようにその顔を寄せる。

「その汚い口を閉じなさい」

 頭の中で声が響き、拳を放った手とは別の手が人形の口を塞ぐ。前回の攻撃もそのグローブで防いだのだ、今回も爆発であればグローブの阻まれ、内部をその爆発で焼くだろう。そんな思惑をあざ笑うかのように人形は、その手に噛みついた。痛みはないがこれで両腕がフリーになる。

「ふふふふ、これでおしまい」

「ぐぶぐぶがぶ」

 人形の持つ武器が、フリーになった誠のボディーを斬りつける。しかし、その刃が誠に届くことはなかった。噛みつかれていた手にはグローブの代わりに小刀が握られていて、その刃が人形の頭を貫いている。その事により誠と人形の間に距離ができ、刃が空を斬った。

「白夜は、変幻自在の近接武器なので」

 白の声が頭で聞こえる。完全に裏をかかれていたのだが、そんな事はなんのそのといった感じで彼女の声は自信満々に聞こえる。誠は凄く焦っていたのだが、結果良ければすべて良し。白の声に気持ちを持ち直す。

 人形の刃が空振りに終わった時には、伸ばしていた腕を戻し終えていた。人形は小刀で固定されているので、スクリューで自由に動く事は出来ない。誠の放つ拳は、人形を的確に捉え同時に人形ごとウサギを吹き飛ばした。

「勝った」

 何度も地面に叩き付けられながら吹き飛ぶウサギを見て、誠は呟く。それと同時に誠が光り出し、みるみるうちに髪は短くなり元の姿に戻っていく。そして、あふれだした光が集まり消えた時、そこには白が立っていた。

「おめでとうございます。誠様」

 白は誠を労わるように、寄り添うがその顔は相変わらずの無表情。だが今はそれに、誠は安心した。

「なんとかなったね」

「はい、そうですね」

 誠は突然現れた死線をくぐり抜け、どこか雰囲気が変わったようだった。それが白と合体したからか、戦闘を行ったからなのかは分からないが、この変化がこれからを変えるだろう。

 ふとウサギが吹っ飛んだ場所を誠は、見たがその場にウサギの姿はなかった。

「逃げ足の速い相手ですね」

 白が呟くが、返す言葉はない。人を殺める事に抵抗のある誠にとって、彼女が逃げたことはありがたいことなのだ。これ以上はどうこうしようとする気はない。それと気がかりなのは、さっきまでいたセフィとエンリの姿が見えない。

「いったいどこに行ったのだろう」

「彼女たちですか。いないのであれば好都合です。誠様、クエストを終わらせて帰りましょう」

 そんな誠の腕を引く、白であった。




 人形が足を回転させながら飛んでいる。その手にぶら下がるように、ウサギは人形と手を繋いでいる。

「何なのあの兵器」

「見た事ないね」

「スペックが違いすぎる」

「その通りだよ」

 いつもの陽気な声が今のウサギからは聞こえない。その声に返す声だけが陽気に聞こえる。それに少しウサギはイラつきながらも、今後の方針について考える。今だ彼女の中では、契約は継続中であるから標的を外す事はない。しかし、自身が想定していたより難易度が跳ね上がったため策を練らないと不味いが、そういった頭を使うことは苦手なのだ。

「オオカミに相談しないといけないのかな」

「それが良いと思うよ」

「・・・・・・」

 人形の言葉に声を返すほど心の余裕はない。しょせんは兵器、人形に心などない。彼女は自身の兵器にそういった感想を抱きながら、その言葉を流す。今は、今後の予定だ。いろいろとやる事が出来た。悩ましい事だが他のメンバーの力も借りないといけない。

 ウサギの思考が外に向いているその瞬間に、それは起きた。

「なに?」

 突如、人形が速度を落とし地面に落ちていく。あっという間に地面に激突し、ウサギは地面に叩き付けられた。その衝撃で肺の空気が一気に外に出て、呼吸が苦しくなる。全身が擦り切れ、熱を帯びているように熱くて痛い。それでも状況を判断するために自身の人形を見ると、そこには半透明の刃がいくつも突き刺さった人形がいた。あれではとても兵器として使用できない。

「逃がさないわ」

「良い兵器持ってるのね。少しお姉さんに触らせて貰えるかしら」

 人形の傍には、あの場にいた二人の女性がいた。一人は手ぶらであるが、もう一人が刃のない刀を持っている。どうやったか分からないが刀を持つ彼女の仕業に間違いない。これは非常に不味い。

 そう考えたウサギは、手のひらにキューブを出現させようとするがそこに腕はなく、自身の両腕は地面に転がっていた。

「ギャーーーーーーー!」

 あまりの痛みに叫びまわる。そんな彼女が最後に見たのは、刃のない刀を振るう女の姿だった。




 セフィは斬って捨てた相手をもう見ていなかった。

「なにしてるの?」

 そこには自身とうりふたつの人形と手を繋ぐエンリがいた。

「コピー成功です。やっぱり第一世代だったようですね」

「そうですね」

 エンリの言葉に人形が反応する。声が全く同じなので、使用者によるようだ。

「気持ち悪い」

 セフィの正直な感想だった。それと同時にエンリの能力の幅と今後の脅威に、恐ろしい相手であると認識を新たにした。

「誠さんには、この場面はきついかもしれませんね」

「そうですね」

 エンリはぽつりこぼす。

「だから、私がいる。この世界に引き込んだせめてもの償いとして」

 どこか遠くを見ながら、誰かに言うわけではないのだが誓うように呟く。彼女は自身の保身のため誠をこの世界に連れて来た。ならば、彼が背負うものを私も背負おう。それが私が出来る唯一のことなのだから。

「妬けちゃうね」

「ずるいよね」

 セフィはエンリに向かって、笑顔で紫雲を振るうのだった。

 

今年はこれでキューブの更新は最後だと思います

始めて一ヵ月ぐらいでしたが、読んでくれた方ありがとうございました

もう少し更新を早く出来るように来年は頑張りたいです

皆様、良いお年をお迎えください

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