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キューブ  作者: あおまめ
2/15

異世界からの女

 彼の名前は、成瀬誠(なるせまさ)

 誠と書いて(まこと)では無く、(まさ)と読む。

 両親が名前を提出する際に、誠人か誠基かなんだったか忘れたが、名前を書き忘れ(まさ)となった。

 日頃から抜けている両親を持ち苦労もしているが、何だかんだで感謝もしている高校二年の男子学生である。

 その両親のせいで、只今だだっ広い家で一人暮らしをしているのだが。

 そんな誠だが、現在とても不思議な物について調べている。

 いや、観察しているだけなのだが。

 それは誠が二階の自室でやる事も無くボーとしていた時に、それは突然起きた。

 いきなり、机の上の辺りから眩しい光が部屋全体を包み込み、数秒に渡り光、消えた。

 光が消えた後、そこには様々な凹凸や謎の文字が書かれた見たことも無い四方形の物体が浮いていた。

 それは今も少しずつ回転しながら、机の上に浮いている。

 この未知の物体を誠は三日間触る事無く、ただ観察していた。

 突然現れた変な物体に触れる勇気も無く、誰かに相談しようにもこんなバカげたことを相談できる事も無く。

 いや、ある事件がきっかけに、自分を相手にしてくれる人など皆無なのだが。

 そんなこんなで、今日もいつものように観察をするだけで一日を終えようとしていた。

 その時、それは光りだした。

「うわぁぁ!!」

 椅子に座って眺めていた誠は、あまりの急な出来事に椅子から転げ落ちた。

 この三日間、何の変化も起こさなかった物体が急に光りだしたのだ。

 いったい何が起ころうとしているのだろうかと、様々な災厄を思い浮かべながら床に突っ伏している誠に向かって、光の中から何かが落ちてきた。

 それは自分よりも大きく、甘い匂いがした。

 そして柔らかかった。

 というか赤い綺麗な長い髪をした色白の女性が降ってきたのだ。

 自分よりも身長が高く、すらっとしたモデル体型の女性が自分に覆いかぶさるように。

「痛ぁ!!まさか急に落ちるなんて」

 彼女はまだ下に誠がいることに気付いていない。

 立ち上がろうとした時に、初めて自分の下に少年がいることに気付いたのだった。

 向こうも突然現れた自分に驚いているようだった。

 とにかく、笑顔を浮かべた彼女に彼がぎこちない笑顔を返した所で、彼女は右手を大きく振るった。




 誠の頬は赤く腫れている。

 不可抗力であったとしても、けじめはけじめ。

 彼には申し訳ないが、一区切り置くのに効果的であったと彼女の中で自己完結している時、誠は何が起きたのか全く理解が及んで無かった。

 いつものように謎の物体を観察していたら、いきなり女性が現れてビンタしてきたのだ。

 ひどく混乱している。

 そんな誠を値踏みするように見ていた彼女が口を開いた。

「さっきは失礼。私の名前はセフィ・D・ラウェン。セフィでいい」

 気まづい雰囲気を感じていた誠は、相手から切り出してきた事に感謝しながら、

「僕の名前は成瀬誠です。ところで名前の感じから外国の方かと思いますが、これは何かのドッキリですか?」

 自分が考えられ、現状を説明できる答えを求めて、ガチガチに緊張しながらセフィに聞く。

 そんな誠をセフィはジーと覗き込む。

 何か失敗したのではないかとそんな考えが頭をよぎる誠を余所にセフィは口を開く。

「ドッキリて?キューブの転移機能なんだけど知らない?」

「え?キューブて?」

 ここでセフィは自分が転移してきた場所の事情をおぼろげに理解できた。

「もしかして、キューブについて知らない?」

「だから、そのキューブて何ですか?」

 何がなんだか分かっていない誠に対して、セフィは納得していた。

 しかし、これは凄くレアなケースであり、誠が嘘をついている可能性もあるのだが、今はそういった事で話を進めようとセフィは考え、

「えーと誠君だっけ。キューブについて知らないということは、まだあれに触れてないの?」

 そう言ってセフィは机の上に浮かぶ物体を指差した。

「はい、そうです」

「あぁ、別に敬語使わないで。私、堅苦しいの嫌いだし」

「分かった。ところであの物体をキューブと呼んでいたけど、セフィさんはあれを知っているの?」

「セフィでいい。あれはキューブと言って、私たちは平行世界を繋ぐ装置だと認識している」

 そう切り出し、セフィはキューブについて説明した。

 キューブはある日突然現れるらしい。

 そして、それに初めて触った人間はキューブと共に何処かの世界に飛ばされる。

 初めて飛ばされた先で武器が与えられるとか、まるでゲームのような世界だ。

 どのような武器が与えられるかは人それぞれで、セフィの場合は刀が飾られた屋敷の中に飛ばされたと。

 後は、キューブの力によって元に居た世界に戻れるとの事だった。

「さっき私はキューブのランダムジャンプ機能を利用して、この世界に来たの。この機能はたった一度しか使用できず、二度と元の世界に帰れない事を条件にランダムで誰かのキューブに飛ぶことができるわ」

 といきなり現れた理由も教えてくれた。

 他にもキューブは持ち主が正式に決まるとその人物の意思で自由に出し入れが可能になり、またこのようにスムーズに会話が行えているのもキューブに翻訳機能があるかららしい。

 本来は、会話など行えないほどに言語が違うのだとか。

 武器を持っていないことをセフィに聞くと、

「キューブにある一定量であれば保存できるのよ」

 と返してくれた。

 キューブはかなりの機能を持った万能機能のような物だろうかなどと考えながら、誠は今までの話を総合する。

「総合すると、仮想世界に飛び込むゲームのようなものなのか」

 この手のゲームはいくらか覚えがある。

 そう考え、結論を出した誠の言葉にセフィは首を横に振った。

「確かに、初めて転移した物には武器が与えられるし、便利な機能を持つキューブもある。でもね、向こう側では明確なルールが無い。それに、死んだらゲームのように復活できないのよ」

 と真剣な顔つきで誠に言い放ち、そしてこう続けた。

「向こうの世界だからといって向こう側だけの思惑で全ては動いていない。その世界に来た人の国や世界の思惑が絡んでることもある」

 セフィの言った通り、様々な思惑があり、武器や資源が眠るであろう世界がゲームのような甘い世界のはずがない。

 そう例えてはいけない世界なのだと。

 だとしたら、そんな危険な世界なのだと分かるっているのなら、誠は頭をよぎった考え口に出す。

「それじゃ、そこに行く必要なんてないんじゃ・・・」

 ただの高校生にはリスクでしかない。

 だったら、そんな危険な場所に行かずにじっとしていよう。

 今まで触ってこなかったのが正解だったのだと誠は思った。

 だがそれでは、セフィの思惑から外れてしまう。

「そうね、行かない方が賢いのかもね。でも、これはあなたの前に現れた。あなたは、キューブに選ばれたの。それに、キューブは初めて触れた人間を向こう側に連れて行く。もし、あなたの大切な人が、別にあなたに関係の無い人でもいい。その人が巻き込まれた時、あなたはどうする。後で、絶対に後悔しない?」

 セフィの言葉を誠は考えた。

 言い方は悪いが、誰かが人柱にならないといけない。

 それを他人にやらして、本当に後悔しないのか。

 だったら、自分が・・・・頭の中をぐるぐると同じ言葉が回る。

 後に後悔してもどうしょうもないと知り、誠は覚悟を決まる。

「分かった。向こうにいくよ」

「いい覚悟じゃん、誠。まぁ、私も居るから気楽にいこう」

 覚悟を決めた誠を見て、嫌な笑みを浮かべながらセフィは言う。

 気楽な気持ちにはなれないが、覚悟は決めた。

 セフィの言葉が嘘かもしれないが、それを確かめる術は無い。

 だったら、

「ちょっと待って!」

 キューブに立ち寄り、触れようとした誠をセフィは呼び止める。

 せっかくの覚悟を台無しにされたものの、その分緊張感も少しは解けた。

「いくつか注意事項があります」

 そう言って、向こうの世界について話すセフィ。

 その後、誠は異世界へと旅立った。

前回初めての投稿でしたで、不安とドキドキでいっぱいでしたが読んでくださった方がいて嬉しかったです。

これからも少しずつですが載せていけたらなと思います。

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