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キューブ  作者: あおまめ
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成瀬家の朝の風景

 成瀬誠の朝は早い。普段から一人暮らしをしている彼は、昼食の弁当の準備や洗濯と朝は忙しい。そんな彼だからこそ、早朝に目を覚ますのは当たり前の事であった。

 いつもであれば、すぐにベットから出て一家にキッチンに立つのだが今日は違う。誠は同じベットで寝ている新しい隣人のおかげで、ベットから出れなかった。いや、身動き一つとれない状態だ。

 誠が寝る前は、白は確かベットの脇にたたずんでいた。しかし今、白は誠を抱きしめるかのようにして同じベットの中にいる。どうすれば良いものか。

 白をどうするか悩む誠の対し、時間は待ってくれない。時計の針はチクチクを進んでいく。

「白、起きろ!」

 誠は白の体を揺すりながら、声をかける。

 ここでの定番として、なかなか目を覚まさない。または理不尽にビンタをされるといったものがあるが、そうはならなかった。誠の武器である白は、その声に合わせるようにスッと目を開ける。

「おはようございます、誠様」

「おはよう、白。ところでこれ、離してくれないかな。今から弁当とか作らないといけないから」

 白は誠をそっと離す。

 彼の命令に、白は素直に従う。たとえ名残惜しくても、ずっと起きていて誠に抱き着いていたとしても、彼の命令は絶対であるためそこに彼女の意思は入らない。誠の命の危機でもない限り。

 誠はすぐにベットを出て、キッチンに向かう。その後ろを白はついて来る。

 リビングからは、寝息とアルコールの匂いが漂って来ていた。昨日、セフィが飲んでいた場所だ。スースーと寝息を立てる姿は、少し子供っぽく見ていて和むものがある。酒の匂いさえなければ、そういった印象を受けるところだったが、酒のせいでダメなオヤジのような印象になってしまう。相手の印象に対して、匂いはかなり重要なのかもしれない。

 誠はそのままキッチンに着き、弁当の用意をする。ついでと言わんばかりに、朝食も簡単に用意する。しかし、その作業がなかなかに大変な作業であった。いつもなら、一人分でよかったものが四人分になってしまったのだ。単純に作業が増える。

 そんな中、階段をコツコツと降りてくる音が聞こえる。セフィは、リビングで寝ているのでこの足音はエンリさんだろう。誠はそう考えるも、今は手一杯なのでこちらに姿が見えるまで話しかけたりもしない。

そうこうしている間にエンリは迷わずに、誠のいるキッチンまで来た。

「おはよう、誠さん」

 いつも通りの姿であいさつするエンリ。顔を出してはいるが相変わらず、とことん肌を外には出さない着こみ方をしている。できればその姿で家の周りをウロウロしないで欲しいなと思う誠であった。

「おはよう、エンリさん」

「もぉ、エンリでいいですよ」

 そう言って誠の鼻ををつつく。

 それに対して誠は赤くなり、少し顔をそらすが白からの冷たい視線に我を取り戻す。今、キッチンでラブコメみたいな事をやっている暇はない。一分、一秒とて朝の時間を無駄にはできない。

「あの、そろそろ朝食が出来そうなので、申し訳ないのですがセフィを起こしてくれませんか」

「え、私?うん、いいわよ」

 そう言って、エンリはリビングに消えていった。そして数秒後、リビングからこの世の物とは思えない奇怪に音とセフィの悲鳴が響き渡った。



 キッチンには、一般的な朝食が並べられていた。メニューは和食であったが、全員橋を使い普通に食べていた。誠は忙しなく、白は淡々と、エンリはのんびり、セフィはげっそりしていたが概ねこんな感じで皆朝食を食べていた。

 朝食後、誠は皿を洗いながら今後の事について話す。

「え、学校?」

 セフィが不思議そうに聞いて来る。誠は高校生であるため、学校での時間を切り離すことは出来ない。しかし、セフィが引っかかっていたのはそこではなく、学校という教育そのものだった。

「へー、こっちにはそんな場所があるんだぁ」

 なんて誠の説明を聞きながら、言う。

「とにかく、僕は学校に行かないといけない。だから、この家に一日中いることは出来ない。済まないが、僕抜きでこの家で待機していてくれないか」

 三人に特に白に誠は、言って聞かせる。三人ともこの世界では間違いなく、人類の勝てる相手ではないだろう。そんな三人が、好きに動くと何が起きるか分からない。未然に防ぐためにも、三人は少し窮屈な思いを強いるかもしれないが我慢してほしい。

「分かっているわよ。どの世界でも兵器は異質だもの。どういう振る舞いが正しいかなんてね」

 とセフィが全てを理解しているように、誠に呟く。

「助かるよ」

 心配なのが白だ。彼女は目覚めて間もない。そんな彼女が何か突拍子のないことを、しでかすのではないかと。その予想は、当たったりするのだが。

「じゃ、学校に行ってくるよ」

 忙しい中、準備を終えた誠は、三人に言った。そんな時、エンリが

「これを持って行って下さい」

 と黒いビー玉のような物を渡した。

「これは?」

「秘密です。何かあったらきっと助けてくれますよ」

 そう言って渡されたものを、ポケットにしまう誠。取りあえず今は時間が惜しいので、そのまま玄関から外に出る。そんな彼は、白がどこにもいない事に気づきもしていなかったのだ。

 

 

今回はだいぶ短めです

どちらの朝もドタバタですね

次回は誠の学校について書きたいです

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