第二話「タナカとタクオ」
「はぁぁ…」
家を出た私は、大きな溜め息をつきながらとぼとぼと歩いていた。
「学校嫌だなぁ…帰りたいなぁ…」と着いてもいないのにそんな独り言が漏れる。
私の学校が苦手な理由は大きく二つほどある。
一つ目は、授業だ。これは皆そうだろう、と思うかもしれない。しかし、私は頭が破滅的に悪い。まず、国語はまともに文章を書くことも出来ない。「起承転結?何それおいしいの?」状態だ。自室に籠りがちの私には、社会や歴史もさっぱりだ。数学に至っては、小学生の掛け算でつまづき、テストでは0点という無慈悲な点数を取ってしまうこともしばしばだ。こんな有様の私が、中学校の授業などについていけるはずもない。
そして二つ目は…
「おっ、野原じゃん!何やってんの?」
こいつだ。──彼の名前は田中福龍。私の幼馴染である。
「あー…おはよう田中」と一応返事をする。
「なんか元気ねーな、まぁいつものことか!」言いながら田中は私の背中をドンドンと叩く。思わず「うっ」と短い呻き声が漏れた。
「力加減考えてよこのバカ!」
思わず大きな声が出てしまう。私はそれにハッと気付き即座に口を押さえた。
「いきなり声出すなよ、鼓膜破れるわ!」と田中が楽しむように言う。しかし私はそれを無視し、声を抑えて彼を睨みつけながら言った。
「…あんたと関わるとロクなことがない」
「まあまあそう言うなって」と田中は言った直後、突然目を見開き硬直した。
「どうしたの?急に固まっちゃって」と心配そうに田中の顔を覗き込むと、
「……時間、ヤバくね?」
田中に言われ、私は瞬時に時計を見る。
…HR開始まであと五分程しかなかった。
「やばい!!!!」
私と田中は脇目も振らず、全速力で学校まで駆け抜けていくのであった。




