⑤
☆ ☆ ☆
その夜、俺はベッドの上に寝転がりひたすら今日のことについて考えていた。しかし、いくら考えても堂々巡りするだけで何も進展はしていない。さっきからベッドの上をゴロゴロしていた。
「………」
ゴロゴロ…
「………」
ゴロゴロ…
「………」
ゴロゴr「だぁぁもう!」
嫌気がさして起き上がる。
だめだ、これはだめだもうどうにもならん!
いい加減煮詰まっているので考えることを放棄してしまう。
「よし!とりあえず走ってこよう!」
こういう時は走るのが一番って聞いたことがある気がする。人間じっとしてるより体を動かしていた方が頭も回るらしいしな。俺がインドア派だからって気にしない。インドア派だってたまには走りたくなるのだ。
意を決した俺は、とりあえず動きやすい格好に着替えて部屋を出る。走ってくると家族に伝えると怪訝な顔をされた。そんなに俺が運動するのがおかしいのか。
…あ、ちなみに俺の家族は両親に妹一人。また機会があれば紹介しよう。
ひたすらにまちを走る。頭の中のモヤモヤを吹き飛ばすように。走る、走る、走る走る走る走る走る、走る…はしる…はし…る
「ゼェ…ゼェ…おえ…」
忘れてた、俺体力ないんだった…もう走れない…
息を整えて周りを見回すとよく知った公園に着いていた。幼い頃から何度も友達と遊んだ公園だ。久しぶりだしちょっと見ていくか。
最後にいつ来たかは覚えてないが、過去の記憶と食い違うところはない。昔のままである。
「ほんと、変わんねえよな」
では、何が変わったのか。
昔はこの公園がたまり場みたいになっていて毎日のように友達と来ては夕方まで遊んでいた。本当、今考えればなぜ飽きないのか分からないほどここにはお世話になっていたと思う。
他にも思い出してみれば、ここほどではないにしろよく行っていた場所はあるし、あまり行かない場所もたまに行けば新しい発見があってすごく楽しかった。
あの頃は毎日が輝いていた。
「俺はこのまちに育てられたんだな…」
何より、そんな輝かしい日常を与えてくれるこのまちが俺は大好きだったんだ。
しかし、俺はいつからか公園には行かなくなった。他にも行かなくなったところはたくさんある。
まあ、仕方のない部分もあると思う。成長すれば公園になんかいかなくなるのが普通である。他も、用もないのに行くわけはない。
だから、おれはこのまちから目をそらすようになった。俺に沢山のものを与えてくれたこのまちから。昔は大好きだったこのまちから。
「…無関心か。図星だよな…」
そう、三島から言われたことは全部図星だったのである。図星を突かれて怒るとかなんて情けない…
「明日謝らないとな…うげぇ、すげえ嫌み言われそう…」
それなりの覚悟をしていかないと心がポッキリ折られるかもしれない。
でも、これはチャンスだ。
俺は、このまちを誇れるようになりたい。誰にでも自慢できるようになりたい。俺に沢山のものを与えてくれたこのまちに恩返しがしたい。
これは、俺がもう一度このまちと向き合うチャンスだ。
このチャンスをくれた三島にはお礼も言わなければならないだろう。
明日は大変な一日になりそうだ。
俺は決意を固め家路につくのだった。
☆ ☆ ☆
「三島、ちょっといいか」
「…何よ」
次の日の朝である。俺は、かなり早めに登校して三島を待っていた。先に伊東が来て昨日のことを心配されたが、俺は大丈夫とだけ言っておいた。今伊東は心配そうにこちらを伺っている。
しかし、今の三島はちょっとヤバイ。伊東が心配するのも分かる。
教室に入ってきて俺を見た途端吹き出す不機嫌オーラ。俺は体から冷や汗を吹き出した。いや、マジで恐しい…
しかし、完全に悪いのはこっちである。意を決して俺は切り出した。
「昨日はいきなりキレて飛び出していってすまなかった」
そう言って頭を下げる。
「………」
三島は黙って聞いている。
「昨日はあんな態度とったのに、都合がいいこと言ってるとは思うんだが…良かったら俺も部活に入部させてもらえないか?」
「なんで…」
「え?」
頭をあげると三島は真剣な目で俺を見ている。
「なんで入りたいと思ったの?」
そう問うてくる三島。俺は三島の目をしっかりと見ながら
「このまちとちゃんと向き合いたいと思ったからだ」
そう告げる。しばらく三島と見つめ合う。
「…そう」
すると、突然三島は不機嫌オーラを消し表情を緩めとても柔らかな微笑を浮かべた。
不覚にも俺はその笑みに見とれてしまった。しかし、すぐにその笑みは消え今度はいつもの強気な笑みに変わる。
「じゃあさっそく今日の放課後から始めるわよ!」
先程までの不機嫌さから一転、上機嫌にそうのたまった。あまりの変わり身の早さに呆れちまうぜ…伊東もホッと胸を撫で下ろしている。いやすまんかった、今度なんかお詫びするぜ伊東よ。
「晴海も大丈夫?」
「あたしこのまちの住人じゃないんだけど、いいのかな?」
「色んな意見が聞きたいからむしろ入ってくれないと困るわね」
「じゃあ、楽しそうだから入部する!」
「それじゃあ、私たちの『まちおこし』を始めるわよ!」
三島がそう高らかに告げた。俺はやれやれ…とため息をつきながらもテンションが上がっていた。これからどうなるか、楽しみではある。
まあいっちょやってみますか!