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まちおこし!   作者: 二郎
第一章
2/6

☆ ☆ ☆


三島愛佳が転校してきてから数日がたった。初日に出来ていた人の壁は次の日にはいっきに人数を減らしており今では落ち着きを取り戻している。やはりあの初日の人避けの一喝が効いたのだろうか、確かに怖かったもんな。そのおかげで休み時間でも彼女の姿を捉えることが出来るようになり、会話が出来るようになった。三島との会話抜粋してみよう。


「三島さん!やっと落ち着いて話せるね!」

「本当にやっと落ち着ける…で、名前は何て言うの?」

「私は伊東晴海!」

「伊東晴海ね、よろしく」

「よろしく!三島さんのことはあいちゃんって呼んでいい?」

「まあ、いいわよ。じゃあ私は晴海って呼ぶわね」

「うん!で、こっちが…」

「あ、こいつはいいわ」

「こいつって…」

「え?なんで?」

「興味ないから」

「もう自己紹介したからだよね!?」

「ま、そういうことにしとこうかしら」

「え?清水君いつ三島さんとしゃべったの?」

「ああ、飲み物買いに行ったときに中庭でな」

「へ~だから遅かったのか~」

「すごいキョドっててね、見てるこっちが恥ずかしかったわよ」

「べべべ別にキョドってねえし!」

「今現在キョドってるよ清水君~」

「わたしの顔を見て顔を赤くしてたしね」

「へ~(にやにや)」

「(にやにや)」

「………」


お分かりいただけただろうか。まず三島はかなり尖った性格をしているらしい。転校してきてまもないのに既に上下関係が…いや止めよう、ここで負けを認めたら終わりだ…

それと、伊東と三島が組むと俺のストレス値がうなぎ登りだ。しかし、前と右を二人に囲まれている以上俺に逃げ場はない。お母さんごめんなさい…あなたの息子はもうすぐ不登校になってしまうかもしれません。

そんな当事者にとってみれば苦行な状況も端から見れば可愛い女の子二人に囲まれている図である。正直にクラスの男どもの視線が痛い。代わってほしけりゃいくらでも代わるよ?(真顔)

まあそんなこんなで今日も二人の会話に俺がちょこちょこ入るという図式が出来上がっているのである。

「へ~あいちゃんの趣味って観光なんだ。アクティブだね~」

「お前もかなりのもんだと思うけどな」

「どっちかっていうと両親の趣味ね。まあ一緒に連れていってもらってるうちに私も好きになったって感じ。最近じゃ一人で遠出してたりもしたけど」

ちなみに三島の親父さんは現在三崎町がある県の副知事に就任しているらしい。(そのせいで引っ越しすることになったそうだ。)前職は国交省に勤めていたそうだ。…こいつに逆らったら県外追放とかされちゃうのかな…

「うわ~楽しそうだね!今度私も一緒に行きたい!…清水君もゲームばっかりしてないで外に出た方がいいんじゃない?」

「俺は別にいいんだよ」

「え~」

「家族旅行もめったに行かないしな~そもそも俺はインドアだし」

「あんた根暗そうだもんね」

「全国のインドア派の方々に謝れ!」

「インドアは否定してないわ」

…てことは俺の性根が否定されてる?ねえなんでこの子こんなに俺にあたり強いの?

「やってみたら楽しいことなんてたくさんあるのにな~」

「俺はこのなんもないけど平穏な日常が気に入ってんの」

今日も世界は平常運転である。帰りにまたコロッケ買い食いするか。

「じじくさ~ 」

「うっせ」

俺が話をまとめようとしていると三島がなぜかいきなり仏頂面になっていた。

「どうした?」

「…別に」

まただ。これは時折感じる不機嫌オーラである。今不機嫌になる要素あったのか?

三島の様子が気にはなるものの転校初日のあのはぐらかしが気になってなかなか切り出せない。本当になんなんだろうな?

「あいちゃん観光話もっと聞かせてよ~!」

「ん、別にいいわよ」

伊東が話をふると三島の不機嫌オーラはなりを潜めた。俺は話を聞きつつ三島に不機嫌についてもう一度聞いてみるか思案するのだった。


☆ ☆ ☆


ー放課後、、

俺はある一つの決心をしていた。三島に機嫌の悪さの理由を聞く決心である。正直ずっと気になっていてこのままで過ごすのはなんとも気持ち悪かったからだ。…なんで俺はこんなにも気にしてるんだろうな?…まあ、隣で不機嫌オーラなんかだされちゃたまったもんじゃないし、今の関係性を考えるとなにかしらとばっちりが他でもない俺に飛んできそうだからな。危険な芽は摘み取っておくに限る。

ちなみに伊東はHRが終わった瞬間教室を出ていった。今日は何をするって言ってたっけ?

…まあいい、今はこっちだ。俺は覚悟をして隣をむく。そこには帰り支度をしている三島の姿があった。

「なあ」

「何?」

「転校初日にも聞いたと思うが、たまに不機嫌そうになるのってなんか理由があんの?」

「………」

俺がそう問いかけると、とたんに例のオーラが出始める。しかし、聞いてしまったものはしょうがない。

「たまになんだけどそう感じるんだよな。何とな~くああ、今不機嫌なのかな~って。でもそうなった状況を振り返っても何が理由か分からんし」

「あんたには関係ないことよ」

関係ないか…

「まあ本人がそういうならそうなのかもしれんが、やっぱり気になっちまうんだよ。」

さっきはなんだかんだと理由をつけたが結局は、三島が不機嫌そうなのがどうしても気になってしまう、純粋にこれが理由なのだ。

「まあ俺達はまだ知り合って数日しかたってないし、そんなやつに話すことでもないのかもしれんが。話してみたら意外に何か解決策が見つかるかもしれないし、俺が協力できることもあるかもしれん」

転校してきて俺の隣の席になった。これも何かの縁だろう。何か俺に出来ることがあるなら協力することもやぶさかではない。

「…まあそんなこんなで、話してみるのも有りなんじゃないかな~…と、思うんだが…」

ここまで言って急に恥ずかしくなってきた。口調が徐々にしりすぼみになってしまう。くそ…なんでこんな熱く語ってしまったんだ…!

「………」

彼女はさっきから黙っている。まあここまで言ってダメなら諦めるしかないか、言えない事情でもあるのかもしれないしな。

「まあ言いたくないならしかたな…」

「……まら……いのよ」

「ん?」

彼女がボソボソと何か言った気がした。しかし、つぶやきみたいな音量で聞き取れなかった。

ちゃんと聞こうと顔を近づけようとした瞬間、急にこちらを向いてきて、思わずのけ反ってしまう。目が合ったその瞳には怒りの炎が灯っているように感じた。なんだなんだと身構えるとその勢いのまま彼女はこうのたまった。


「つまらない! 」


はい、冒頭に繋がりま~す。

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