①
小説初挑戦です。
語彙力などは皆無で読みにくいかもしれません。
それでもいいという方は読んでくださると泣いて喜びます。
一段落したところまで書いたら更新していく形にしようと思っています。なので一度の更新量が少なかったりばらつきがあったりします。
「つまらない!」
転校生の三島愛佳は突然叫びだした。教室にいるクラスメイトが何事かとこちらを見ている。いや、俺も何事か分からない。
「………はぁ?」
「つまらないって言ったのよ!全くもって面白くないわ!」
突然何を言い出すのだろうかこの人は。
「いや…何が?」
「このまちがよ!」
「このまち?」
「そうよなんなのここは!大した見所もないしあるといったら商店街だけ。その商店街も寂れてて閉鎖寸前じゃない!いくら親の都合とはいえこんなところに来るんじゃなかったわ!」
なるほど、このまちがつまらなさすぎて発狂してしまったらしい。
……いや、意味分からん。
「ちょっと落ち着けよ…」
「落ち着けないわよ!これから少なくとも3年はこのまちにいなきゃいけないのよ!?こんな面白くもないまちに3年間もなんて耐えられないわ!」
「いやそんなこと言ったって仕方ないだろ。じゃあ何か?一人でまちを飛び出して独り暮らしでもするか?」
「…………」
俺の提案に黙りこんでしまう。まあこの提案が現実的でないことが分かるくらいには冷静なようだ。
「まあ、来たばっかだしもうちょい住んでみろよ。案外住みやすくていいまちだぞ、ここは」
「ちょっと住んでみてつまらないからこうなったんじゃない…じゃああんたがこのまちの面白いとこ言ってみなさいよ」
「え?」
そう言われて、はて…?と少し考えてみる。このまちの見所…?
「…コロッケが美味しいところ?」
「コロッケ…まあ…それはちょっと気になるけど…他には?」
興味持ったな?とちょっと嬉しくなりつつさらに考える。見所…見所…
「特にない…かな…」
「コロッケだけ…」
あからさまに落胆している。いやいきなり言われてもねぇ…
「こうなったら…」
「ん?」
「こうなったら…私がこのまちを変えるわ!」
「はい?」
またまた何を言い出すのかこの人は。
「このまちを見所いっぱいのまちにしてどこに出しても恥ずかしくないようにしてやる!」
「どこに出しても恥ずかしくないようにって…このまちはお前の子供か」
「あんたも手伝いなさいよ!」
そういうと三島は俺の了承も得ず教室を出ていった。
「えぇ~…」
俺は彼女が出ていった扉を見ながらため息をつくことしか出来ないのであった…
☆ ☆ ☆
「おばちゃん!コロッケ1つちょうだい!」
「あいよー」
突然だが、あなたは自分が住んでいるまちをどう思ういますか?と問われたときどう答える?
まあ、答えは様々だろう。閑静な住宅街で住みやすい~だったり、駅近で交通の便がいい~だったり、まあいくつかはあげられるんじゃないかと思う。
「できたよケンちゃん、コロッケ1つね」
「サンキュー」
あ、ケンちゃんは俺のことね、清水健といいます。
話を戻すが…じゃあ、今住んでいるまちは好きですか?と聞かれたらどうだろう?
こう聞かれると返答につまってしまう人は少なからずいると思う。おれ自身もそんな風に自分の住んでいるこのまちー三崎町と言うんだがーが好きかと聞かれて即答は出来ない気がする。生まれたときからこのまちにいてこのまちで育ったから思い入れはそこそこあるが、これといって目を引くものもないから好きかと言われると…って感じだ。
「このコロッケは好きだって即答出来るんだけどな!」
なにもないまちだが一応コロッケは名物だと思っている。このまちではかなり食されている食べ物だ、俺も大好き。
「んじゃ~帰ってゲームでもしますかねぇ」
そんなことを考えつつもまちに対して俺はなんの不満も持っていなかった。今までこのまちで生きてきてなんの不便さも感じなかったからだ。というかこのまちはこういうもんだと割りきっている、と言った方が正しいのかもしれない。将来俺がこのまちを旅立つまでこのまちは変わらずあり続けるんだろう…
「な~んか変に感傷的になってんな…」
時は5月上旬、ゴールデンウィーク真っ最中。思えばこの時こんなことを考えたのはこれから起こることを予期していたからかもしれない。
ゴールデンウィーク明けの初日、転校生三島藍がやってきたのである。
☆ ☆ ☆
ゴールデンウィーク明けの水曜日、俺は眠い目をこすりながら学校へ向かっていた。
「あ~…ねむ…」
昨日は最近買ったゲームが面白くてついつい夜更かししてしまった…仕方ないじゃん、あのゲームがさんざん発売延期して焦らしきたのがいけないんだ!と、心の中で意味もない言い訳をする。
「こりゃ今日の授業は爆睡ですな…」
「な~に独り言呟いてんだ…よ!」
「おわっ!」
急に背中に強い衝撃が加わった。
「いてて…急に飛びついてくるなよ義樹」
「お前が覇気のない後ろ姿をしてるのが悪い」
だからって飛びつくやつがあるかよ、と非難の目を向けるが特に意に介した様子もなく隣を歩きはじめる。
この朝からテンションが高めの男は下田義樹。小中高と同じ学校に通っているいわゆる幼馴染みだ。ちなみに俺たちはこの三崎町にある高校、公立三崎高校の一年生だ。先月入学したばかりのフレッシュな高校生なのである。
「連休明けなのになんでそんなテンション高いんだよ」
「俺はいつだってこんなもんだろ、お前のテンションが低すぎなんだよ。また夜更かししたのか?」
「ああ…ゲームやり過ぎたわ…」
「不健康なやつだな。たまには外に出て運動でもしたらどうだ?」
「うっせ」
そりゃ運動部で毎日のように運動してるお前に比べりゃ不健康だろうけどさ…
「お前もなんか部活やりゃいいのに」
「部活ね~…」
入学して一か月たち、部活に入るやつらは仮入部も終わり段々浮き足だった空気はなくなってきている。そのなかで俺はまだどの部にも入部しようという気にはなっていなかった。
「なんかどれもピンとこないんだよな」
この一か月気が向いたら仮入部をしてみてはいるもののこれだというものはなかった。中学ではサッカー部だったが高校ではついていけなさそうなので止めた。ちなみに義樹はサッカー部でそこそこ目立った活躍をしている。
「正直帰宅部っていうのも悪くないんだよな」
学校が終わればそこからは自由時間だ。悪くないどころか素晴らしいとさえ思える。自由最高。
「帰宅部なんかしてると彼女出来ないぞ~」
「うっせ!余計なお世話だよ!ていうかお前だって男だらけのサッカー部じゃんかよ!」
「うちには可愛い可愛いマネージャーがいるからな!」
「くっ…卑怯な…」
確かに出会いは少なくなりそうだな…
「まあ懲りずに色々体験してみろよ。何が合うか分かんねぇんだからな」
「まあ、そうだな」
「んじゃおれは、2組だから。じゃあな~」
「おう」
いつの間にか学校に着いていた。義樹と別れ自分のクラスへと向かう。
「部活ねぇ…」
なんともなしにひとりごちる。さて…どうしようかねぇ…
☆ ☆ ☆
教室に入るとクラスメイトはそこそこそろっていた。みんなに挨拶しながら俺は自分の席へ向かう。
「ふぅ…ん?」
椅子に座り一息ついたところでふと違和感に襲われる。俺の席は窓際の一番後ろなのだが、自分の列だけ他よりひとつ席が多いため席がひとつ頭が出る形になっている。なので、必然的に隣に席はないことになる。なにこの仲間外れ…と最初は思ったが、まあなってしまったもんはしょうがないと今では気にもしていない。だから隣に席はないはずなのだが…どうしてか椅子と机が置かれている。
なんで席が増えてんだ…?
「おはよう清水君!」
「ん?おお、おはよう伊東」
隣の席について考えていると元気な挨拶が隣から聞こえてくる。声をしたほうを振り向くと前の席に女の子が座っていた。彼女の名前は伊東晴海。俺の前の席の住人である。
「今日はいつにもまして眠そうだね~」
「お前はいつも通り元気そうだな」
いつも元気なおてんば娘!が座右の銘になりそうなほど活力に満ちあふれているやつだ。顔も可愛らしい部類に入るだろう。スタイルは…うん…まあなんだ…出るとこ出てらっしゃるというか大変目の保養になりますというか…
「清水君なんか変なこと考えてる?」
「いや全然」
「そう?」
やべぇやべぇ…顔に出ちまったか…
まあ彼女とは高校からの付き合いだが、すぐ前の席ということもあってしゃべるようになりそこそこ仲は良くなったと思う。高校生活の序盤からこんな子と仲良くなれたのは僥幸と言えるだろう。
「連休明けからいきなりそんな疲れた顔してるといいことないよ清水君」
「婆さんや…わしゃもう疲れたよ…」
「そんなこと言わないでおくれよじいさんや…あんたにはまだまだ働いてもらわないといけないんだから…私の遊びの金のために」
「止めて!もうじいさんを楽にしてあげて!」
もうおじいさんの萎れた体からは何もでないわ!
「あははっ」
伊東は楽しそうに笑う。一か月でこんな掛け合いが出来るようになってしまう自分のコミュニケーションスキルが恐ろしいぜ…
まあ本当は理由があるんだけどな。
「あ、そういえば清水君ゴールデンウィーク中に出たあのゲームやった?」
「おう当然だぜ!そのせいでこんなことになってるんだよ」
「夜更かしは良くないよ~?まあでもそれくらい内容は良かったよね!」
「ああ!発売延期にもめげずに我慢したかいはあったな!」
そう、このゲームという話題が俺と彼女をここまで仲良くしたのだ。彼女はゲーマーだった。もちろん俺もゲーマーである。そして尚良かったのは二人のゲーマーとしてのレベルが同程度だったのである。モ○ハンのガチ勢みたいに何千時間とやり込んでいるでもなく、かといって普通の人よりはゲームに打ち込んでいるかな、位のレベルと言って伝わるだろうか。とにかく話のレベルが合うので変に気を使うこともなくしゃべれる。まさに、理想的な状況だった。オラこんなの初めて…
このゲームという共通項のお陰でここまで仲良くなれたのだ。
しかし、これはあくまで彼女の一側面でしかない。
「まあでも伊東はこのゴールデンウィークはかなり充実してたんだろ?」
「まあね~登山とかしたよ!気持ちよかったな~」
「相変わらず多趣味なこって…」
思わず苦笑してしまう。
そう、彼女はインドア派かと思いきやアウトドアもいけちゃうというオールラウンダーなのだ。やだオールラウンダーとかかっこいい…ちなみに俺はゲーム大好きなインドア派。
とにかく興味あることには手を出してそこそこやり込むまないと気がすまないらしく、この一か月で話を聞いただけでもかなりの経験していることが分かった。それこそ有名どころのスポーツはもちろんのこと、釣りなどもやっていたらしい。インドア的なのをあげると絵描きとか編み物とか。このバイタリティー、彼女はスーパーマンか何かなのかな?
彼女曰くやってみないと始まらない、らしい。なにこの人すげぇ尊敬しちゃう。
彼女に尊敬の眼差しを向けていたが、そういえば気になることがあるんだった。
「ところで伊東」
「ん~?なに?」
「俺の隣にあるこの椅子と机は何か分かるか?」
「ん?自分で言ったじゃん椅子と机でしょ?」
しまった、この子頭は弱いんだった。俺の尊敬返して。
「そういう意味じゃねぇよ…なんで椅子と机が増えてるのかって話」
「あ、そゆこと」
「わざわざ説明しなくても分かると思うんだが…」
「ん~あれじゃない?清水君ハブられてるから机と椅子を置いて形だけでもハブられてないように見せるために先生が配慮したんじゃない?」
「俺はハブられてないしそんな配慮はいらない!」
え?俺ハブられてんの?ハブられてないよね?もしかして友達だと思ってたの俺だけ?
内心戦々恐々としていると、
「ウソウソ!あははっ」
「冗談キツいよまったく…」
危うくトラウマを植え付けられるところだった…
「さっき先生から転校生が来るとかいう話を聞いたからそれじゃない?」
「ああなるほど。ていうかこの時期に転校生?」
「珍しいよね~どんな人だろ」
高校生活一か月でいきなり転校か…まあどんなやつか分からんがせっかく隣に来るんだし仲良くしたいな。あと出来れば女の子がいいな、うん。贅沢はね、言わないけどね。
「お~い席に着け~HR始めんぞ~」
そうこうしてるうちに時間がきたみたいだ。我がクラスの担任藤枝先生が教室に入ってきた。性別は男だ。なので特筆することもないのだが、一応いい先生であるとは先に言っておこう。ただ…その風貌が際立っている。端的に言うなら、あなたどこの組の人?って聞きたくなるような感じだ。体格は熊のように大きく顔もごつい。入学して教室で初めて対面したときのクラスの静まり返り方は尋常ではなかった。何人かは子犬のように震えていた気がする。俺?俺はそんなチキンじゃねえよ(棒読み)。
…まあそんな恐ろしげな先生なのだが、接してみるとみんなの評価はすぐに変わった。もちろん顔は怖いのだが持ち前のマイペースな性格というか雰囲気というか…そういうオーラと器の大きさが要因だと思う。
「お~い静かにしろ~。東京湾に沈めるぞ~。」
先生が事も無げにそんなことをのたまうとクラスはとたんに静かになる。先生真顔でそんなこと言わないで!本当に現実になりそうで怖いから!
「よし、静かになったな~。じゃあ今日はお知らせがある。」
お、きたか。
「なんと転校生がこのクラスに来ることになった。男ども喜べ~女の子だぞ」
先生の言葉にクラスの男子が沸き立つ。俺も内心ガッツポーズである。しかも俺の隣だし!
「じゃあ入ってきてもらうか。お~い、入ってこい」
先生が促すと教室の扉が開き女の子が入ってきた。と、その女の子の姿を見た瞬間男子はおろか女子さえも息を飲むのが分かった。
その女の子はとても鮮烈な容姿をしていた。さらさらとまるで絹糸の様な黒髪は腰元まである、いわゆる黒髪ロングだ。顔は今までみたこともないくらいに整っていて目もパッチリと大きい。まあ…全体的に色々小さいが、それは一部の人には需要があるだろう。
彼女を見て俺は変に感心してしまった。あんなおとぎ話から出てきた様な人が現実にいるんだな…
「…三島藍です。よろしくお願いします。」
…ん?なんか彼女機嫌が悪そうだな。
改めて様子を伺ってみると、気難しい性格なのかもしれないが、妙にムスッとふてくされているようにも見える。転校初日だから緊張してんのかな?と俺は判断した。
「彼女はご両親の都合でこのまちに引っ越してきたそうだ、皆これからよろしくしてやってくれ。じゃあ席はあの一番後ろの空いている席で」
「…分かりました」
そういうと彼女は俺の隣の席に座る。よしっ休み時間になったらさっそく話しかけてみるか!
「じゃあHRは終わりな。今日も一日頑張れよ~」
とのたまい藤枝先生は教室を後にするのだった。
☆ ☆ ☆
キーンコーンカーンコーン…
昼休みを告げるチャイムがなると先生は教室を出ていきみんなそれぞれ行動を始める。
…そう、もう昼休みだ。だというのに俺は未だに彼女に話しかけられないでいた。なぜかというと…
「三島さん凄い人気者だね~」
「…そうだな」
「近くにいるはずなのに全く見えないよ」
そう、休み時間がくるごとに彼女に群がるクラスメイトのせいである。あまりに群がる人が多いため、休み時間が終わるまで彼女の姿をとらえることしか出来ない。…ねぇ、本当に隣にいるの?三島さーん?と問いかけたくなるほどだ。しかし、授業が始まると人の塊は消え去りその姿を確認出来るからちゃんといることは分かった。
「これはあれだね…人がゴミのようだ!」
「どっちかっていうと壁だなこれは」
「人が壁のようだ!」
「そういう風に言ってみたいだけだろお前」
と伊東の相手を適当にしつつやはり俺は隣の席の女の子のことが気になっていた。授業中はちゃんと姿は見えているため時折チラッと見てみるのだが、やはり可愛い顔をしている。あまり見すぎると失礼だと思いなるべく控えようとは思っていたのだが気付くと視線が隣にいきそうになってしまう。その度に「静まれ…っ俺の右目…っ」とかしょうもないことをやっていた。
「あれだけ可愛いしやっぱり気になるよね~清水君?」
ニヤニヤしながら伊東が顔をのぞきこんでくる。
「バ、バッカお前!全然気になってなんかないんだからね!」
男のツンデレは流行らないと思います…ていうか正直彼女のことはすげぇ気になってる。
「だって清水君授業中何回もチラチラ彼女のこと見てたじゃん」
「そんな何回も見てねえし!」
ちゃんと我慢して数回見るくらいにとどめたし!
「じゃあチラ見してたことは認めるんだね?」
「そりゃ転校生だし気になる…てちょっと待て前にいるお前がなんでチラ見してたなんて分かる?」
え、何後ろに目でもついてんの?やっぱりスーパーマン?そらとも妖怪?
「カマかけただけだよ?」
「頭弱い子に嵌められた…」
僕もう立ち直れない…
「ふーん清水君は私のことそういう風に思ってるんだー」
笑いながらそんなことを言うが目は笑ってないですよ伊東さん…
「悪い悪い」
でも本当だろ?と心の中だけで反論しておく。これ以上言うと彼女を傷つけちゃうからね!決して目が怖くて言えなかったからではないんだからね!
「っもう…まあでも私も気になるな~はやくおしゃべりしてみたいよ」
と言いながら弁当を広げ始める伊東。そうか俺も弁当食べよう。
自分の鞄から弁当を取り出し昼食の準備をしていると突然人の壁が移動を始め、そのまま教室を出ていってしまった。人がいなくなった隣を見てみると席の主もいなくなっていた。
「初日から大変だね…」
伊東が心配そうにつぶやく。
「…まあしばらくしたら落ち着くだろ」
けどさすがにあれだとストレス溜まりそうだな、と少し心配していると出ていった扉から義樹が入ってきた。
「おっす健。なんか今さっき人の塊がお前の教室から出てきてたがあれなんだ?」
「転校生だよ。まあ可愛い女の子だからみんな興味津々なんだろう」
「あれが?ていうか可愛いのか!くそ~もっとちゃんと見ときゃ良かったぜ…」
「ていうかどうしたんだよ。何か用か?」
「いや転校生の話は噂になってたからな。確認がてらお前と昼飯でも食おうかなと」
と言い弁当箱を示して見せた。
「それは残念だったな。転校生さんは休み時間になると見えなくなるんだよ」
「あの人の塊でか。大変だな」
「お陰で隣の席なのに一言も話せてねえよ」
義樹は三島さんの席に座り弁当を広げ始める。
「おっと飲み物がねえな。健、飲み物買ってきてくれよ」
「ナチュラルに人をパシろうとするな!」
「おいおい、いつもは言う前に用意してあるだろ」
「変な既成事実作ろうとすんな!」
「既成事実って…健…もしかしてお前そっちの気が…」
と言いながら後ずさる義樹。
「そういう意味じゃねぇよ!?」
「清水君…そうだったの…?」
「伊東は今の話聞いてただろ!」
やめて!まわりの人に誤解されちゃう!
「冗談だよ。じゃんけんで負けたら飲み物買ってくるってのはどうよ」
…このやろう…唐突に冷静になになりやがって…
「まあそれならいいだろう。金も負けたやつ持ちな」
絶対おごらせてやる…
「よしきた!」
「いくぞ!」
「「じゃーんけーん、ほい!」」
俺→グー
義樹→パー
伊東→パー
「って伊東も入ってたのかよ!」
「わ~い勝った!わたしカフェオレ!」
「俺は紅茶な」
くそぅ…手痛い出費だぜ…
☆ ☆ ☆
飲み物を購入するため、自動販売機が設置されている中庭に向かう。
「伊東はカフェオレ…あの野郎には…おしるこでも買ってってやるか」
義樹よ…お前の言うことに素直に従う俺ではないぞ!
自販機で飲み物を買い終え、さあ帰ろうかというところで件の転校生が中庭の方に歩いて来るのが見えた。
「あれは…三島さん?取り巻きはいないみたいだな」
上手くまいたのだろうか。
どうやら中庭でお昼を食べるみたいだ。ベンチに座り弁当を広げ始めている。
…これは、チャンスだな。そう思い彼女に声をかけてみることにした。
飲み物を抱えながら近づくが、彼女はまだこちらに気付いてないようだった。
「転校初日から大変だな」
「…!」
彼女はいきなり声をかけられて驚いているようだった。弱冠警戒の色が伺える。
「おっと…いきなりすまん。驚かせちゃったか」
あまり近づき過ぎないようにして、両手をあげて危害を加えるつもりはないとアピールする。
「…誰?」
かなり怪訝そうに問われた。朝からずっと隣の席にいたんだけどな…
「…君の隣の席の男の子だよ、三島さん」
そういうと「…ああ」と理解の色が顔に浮かぶ。良かった分かってもらえたか…
「で、誰?」
「分かってなかったの!?」
「違うわよ、名前は?って聞いてんの」
「ああなるほど」
そういえば名乗ってなかった、恥ずかしい!
「清水健だ。よろしく」
「清水健ね。で、何か用なの?」
「ん?ああ…」
改めて見ると本当に可愛いな…今さらながら緊張してきた。どうした健!お前はそんなチキンじゃねえだろ!
「…ちょっと?」
「あ、ああ…」
「ったく、せっかく自由になったのに昼ごはんを食べる時間がなくなっちゃうじゃないの…」
と言いつつご飯を食べ始めた。…ああそうだ
「朝から大変だったな」
「仕方ないわよ。変な時期に転校してきたし、それに私可愛いもの」
「自分で言っちゃうんだ…」
「事実だしね」
じっ…と俺の顔を見てくる。…くっ見つめられるとやばい!いきなりのことに俺は赤面してしまった。
「な、なんだよ」
「ほらね?」
フフン、と得意気に笑う。…くそっなんか物凄く負けた気分だ…
「でもどうやって取り巻きを排除したんだ?」
「睨み付けて一喝したらいなくなったわ」
言いながらキッと睨み付けてきた。
うおっ怖!危うく悲鳴をあげそうになる。なまじ整った顔立ちだけに睨まれるとかなりの迫力がある。
「…カツアゲとかしたら100%成功しそうだな…」
「…何か言った?」
「いえ何も言ってません!」
だからそんなに睨まないで!
俺が降参とアピールすると元の顔に戻る。怖かった…
「…あんたは逃げないのね」
と、どうでも良さそうに聞いてくる。
「確かに威力は高かったが…まあ、隣の席だし仲良くしたいからな」
「…ふーん、あっそ」
プイッとそっぽを向きもくもくと昼飯を食べ始めた。あっそって…もうちょっと友好的な態度はとれんのかね…と思ったが口には出していない。また何か言われそうだからな。
弁当を食べる彼女の様子を見ていてふと気になることがあった。
「なあ、三島さん」
「何よ?」
「もしかして今機嫌が悪かったりするのか?」
そう、朝も感じたが彼女の顔をみると弱冠ムスッとしているように見える。緊張で表情が固くなってんのかなとも思ったが、今までの会話からして緊張するような性格でもなさそうだ。しかも、これは俺の感覚だが、ピリピリしたオーラを感じるのだ。
「…なんでそう思ったの?」
「いや何でと言われても…まあ何となくだな、違ってたらすまん」
そう言うと彼女はじっと俺の顔を見て、なにやら思案しているようだった。やっぱり見つめられるのは慣れんな…
「あんた…ずっとこのまちに住んでるの?」
うん?なんでいきなりそんなことを聞くんだ?
「…ああ、一応生まれも育ちもこのまちだが」
疑問に思いながらも正直に答えておく。なんで俺の出生が気になるんだ?
「…そう」
そう言ったきり彼女は何も言わなくなってしまった。うーん、何か触れてはならんことだったのか?
話が終わってしまったのなら仕方ない、少し、というかかなり気になったがこれ以上追求するのは止めることにした。
「ていうか俺まだ弁当食べてないじゃん…じゃあ三島さんまたな」
「ええ」
彼女に別れを伝え、飲み物を抱えながら教室へ急ぐ。最後の話は余計だったかな…と少し反省。でも俺そんなに変なこと言ったかな?まあ後でフォローはしときますか…
教室へ戻った俺は遅いと二人に文句をぐちぐち言われたが、そうやっている間も彼女のことが頭からはなれなかった。
ちなみにおしるこは義樹にちゃんとご飯と一緒に食べてもらいました、マル。