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97話 俺は決してやましい気持ちでこんな事言ってるんじゃないぞ!?

読んでくださりありがとうございまっす。

次回は水曜日に投稿する予定でっす。

「……って大騒ぎになったのよ!」


 事のあらましを一通り語り終えるエレオノーラ。


「そ、そりゃ大変だったな」


 流石に次郎衛門もここまで酷い事になるとは思っていなかったらしい。

 その目は謝りながらも若干泳ぎ気味だった。


「だったじゃないの! 現在進行形で大変なの!」


 凄まじい剣幕で怒りつつも近くを通り掛かった宿屋の従業員のお姉さんのお尻を撫で回し思いっきりひっぱたかれるエレオノーラ。

 どうやらエレオノーラのお腹のおっさんはまだまだ元気いっぱいなようで現在進行形で大変だというエレオノーラの主張は真実だったっぽい。


「…… もう嫌ぁ。早くなんとかしてよぉ」


 泣きそうな声でそう言いながらローブのフードを外すエレオノーラ。

 フードから現れた顔は美少女と断言出来る。

 だがその顔には次郎衛門のラクガキが激しく自己主張しており、そして見事なほど腫れあがっている。

 どうやらここに来る道中にすれ違った女性達からも結構な回数殴られたらしい。

 今のエレオノーラからは王族の気品といったものは一切感じられない。

 自分ではどうにも出来ない濁流に翻弄され憔悴しきった少女がそこにいた。

 ちなみに瞼の魔眼の方はまたたき程度のほんの一瞬では発動しない様だ。


「何とかって言われてもなぁ。ラクガキが動き出すだなんて事は俺も想像してなかったからなぁ。とりま、お腹の方のラクガキも確認してみるか」


 次郎衛門はそう言うなり指をワキワキと動かしながらエレオノーラににじり寄る。


「ひぃっ!」

「やめなさいよ。この馬鹿!」

「あいた!」


 昨日のひんむかれた記憶が蘇ったのか恐怖に怯えるエレオノーラ。

 そんな様子を見てフィリアが次郎衛門の頭をスパーンと叩く。


「あんたがこの程度の攻撃で痛い訳ないでしょうが。状況をを考えなさいよ。状況を」

「ほむ。確かにここじゃ人の目があるか。良し、部屋に移動してからむくか」


 一応真面目そうな表情を取り繕ってはいるが美少女お姫様を脱がせるのが楽しみで仕方ないという気配が滲み出ているのが丸分かりな程足取りが軽い。

 昨日充分に堪能したんじゃないかと思わなくもないが、女性の服を脱がせたりするのは健全な男なら何度でも楽しめるものなので仕方ない。

 しかしこういった事は相手の同意がないと最低のゲス野郎になってしまうので良い子の皆は決してマネしてはいけないぞ。


 食堂から部屋へと場所を移した次郎衛門達。


「クハハ! それじゃ、早速いただきまーす!」

「ひぃっ!」

「ちょっと待ちなさいよ!」


 次郎衛門は速攻でエレオノーラに飛びかかってしまいそうなテンションだった。

 だがここでフィリアが待ったをかける。


「どうしたフィリアたん? ひょっとしてヤキモチかい? これは決してやまし」

「誰がヤキモチやくのよ! 私が言いたいのは脱がす必要はないって事よ。姫もローブの下に服位は着てるんでしょ?」


 そうエレオノーラに問いかけるフィリア。

 最終的には全部服を脱がないと処理出来ないと言う事もあるかもしれない。

 しかし今の段階ではフィリアの言うと通りラクガキがどんな様子なのか確認したいだけなので服を全部脱ぐ必要はないと言えた。


「服をちょっとめくればラクガキの確認くらい出来るでしょ」

「う、うん。服は着てるよ! そ、そうだよね。全部脱ぐ必要はないよね!」


 フィリアが出した助け舟にエレオノーラの表情に希望が灯る。

 そして次郎衛門のテンションは下がる。


「チッ。さっさとローブ脱いで服めくれよ」


 服を剥ぎ取れないと分かると露骨に態度が悪くなる次郎衛門。

 ここまで来るといっそ清々しい位に自分に正直な男だと言わざるを得ない。


「何でジローがキレてるの? 意味分かんない! 上着めくってお腹見せるだけでも相当はず…… か…… し…… あああああ!?」

「何だ? いきなり叫ぶとかどうしたんだ? ひょっとして何の脈絡もなくいきなり奇声を発するっての王都じゃ流行ってたりするのか?」

「ち、違うよ! でも…… 今日の服はワンピースだった……」


 そう言うと青ざめた表情でローブを脱ぐエレオノーラ。

 ローブの下から現れたのは清楚なお嬢様が着ていそうなシンプルなデザインだが上品そうな白いワンピースだった。

 これでは裾をめくってお腹を見せたらパンツまで丸見えなのは間違いないだろう。


「はぁ…… もう知らないわ。好きなだけジローの餌食になってなさいよ」

「そ、そんな」


 フィリアは滅多に出航させる事のない貴重な助け舟を自ら撃沈してみせたエレオノーラ。

 最早この場に味方は居なくなったと言える。

 エレオノーラの表情が絶望に染まり、そして次郎衛門のテンションは再び急上昇だ。


「クハ! クハハハ! フィリアたんのお墨付きも出た事だし思う存分にめくってやるぜ!」


 次郎衛門はゲスな笑みを浮かべる。

 怯えるエレオノーラもなんのそのだ。

 そしてワンピースの裾に手を掛けたところで不意に次郎衛門の動きがピタリと止まる。

 そして何事かを考え込むかの様にブツブツと呟く。

 唐突な次郎衛門の行動にエレオノーラはパンツを見られなくても済むかも? と期待を抱き始めた頃に次郎衛門は考えが纏まったらしく口を開いた。


「まず、姫さんに言っておきたい事がある」


 エレオノーラに深刻な表情で話しかける次郎衛門。


「な、なに?」


 そんな次郎衛門にエレオノーラは精一杯の強がりを返事に込める。


「今回のラクガキの件は俺ですら予想出来なかったイレギュラーだった」

「そ、それがどうしたの」

「何があっても直ぐに対応出来るように万全の態勢で挑みたいんだよ」

「何が言いたいの!?」

「俺がワンピースをめくって何か不足の事態が起きたら片手じゃ即応出来ないかも知れんってこった」 

「だから何が言いたいの!?」


 話の行方が全く分からずに苛々とした口調で怒鳴るエレオノーラ。

 不安な気持ちを紛らわせたいという心理も働いていそうである。

 そんなエレオノーラに次郎衛門は変わらず真剣な表情でエレオノーラを絶望に叩き落とす言葉を紡ぎ出すの事になる。

 

 その言葉とは―――――

 






「姫さんが自分でワンピースめくって見せてくれ」


 これだ。

 

「ちょ!?」


 これはキツイ。

 強制的にめくられるのと自分からめくるのでは心に受けるダメージは桁違いだ。

 流石にそれだけは避けたいとエレオノーラは周囲に視線を彷徨わせるもアイリィやピコは次郎衛門はサイドであるし、パンダロンはお姫様の裸を見る訳にもいかないのでこの部屋にすら入っていない。

 唯一味方になってくれそうで更に次郎衛門を抑え得るフィリアの助け舟は先刻自ら撃沈してしまったばかりだ。


 しかし何をブツブツと考え込んでいるかと思えばこれだ。

 お姫様が自らの手でワンピースの裾をめくり上げる所を見たいが為に尤もらしい理由を一生懸命に考えていたらしい。安定のゲスっぷりであった。


「姫さんよ。俺は決してやましい気持ちでこんな事言ってるんじゃないぞ? あくまでも不足の事態に備える為に言ってるんだ」

「ほ、本当に?」

「ああ! 本当だ! 勝手に姫さんの体を操る上にそいつは魔眼まで使うんだ。用心するに越した事はないだろう?」

 

 必死に説得を試みる次郎衛門。

 その凄まじいまでの剣幕に押し切られるエレオノーラ。

 結局エレオノーラは涙目にながらワンピースの裾に手を伸ばすのだった。


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