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86話 王様居る!?

「国王が呼んでる?

 なんで?」

「今をときめくSランク冒険者に、一度会ってみたいそうじゃ」


 ギルドマスターであるシドルウェルに呼び出され、ギルド本部にやってきた次郎衛門達。

 どうやら、国王が面会を望んでいるらしい。


「会いたいなら、会いに来いって言いたいところだけど、流石に国王がフラフラと出歩く訳にもいかんだろうなぁ」

「そういう事じゃな。

 ワシ個人としては、歴代の国王は皆赤子の頃から知っておるでの。

 孫みたいなものじゃし、出来れば会ってやって欲しいのじゃよ」


 一国の国王を孫みたいなものと言ってしまう辺り、どうやらシドルウェルはかなり王族と近しい付き合いをしているっぽい。

 冒険者の国と呼ばれるドルアーク王国で、というか、世界的にも生ける伝説となっているシドルウェルが、王国にごんぶとなパイプを持っているのは、当然と言えば当然の事なのかも知れない。


「ギルマスの爺さんがそう言うなら、一度位は会っても良いかもな。

 んで、何時来いって話なんだ?」

「急で悪いのじゃが、明日の正午という事で良いかの?」

「ああ。良いぞ。特に用事がある訳でもないからな」


 こうして、次郎衛門達は国王に謁見する事になったのである。




 翌日、正午前に王城の城門にまでやってきた次郎衛門達。

 城門には当然の様に門番と思わしき兵士がおり、その内の一人に次郎衛門が声を掛ける。


「ジローって者だけど王様居る?」


 まるで国王を隣の家の友達くらいの感覚で、居るかどうかを兵士に尋ねる次郎衛門。

 会うためにわざわざ呼び出す位なのだから、居るに決まっている訳だが。


「え、え? あ!

 ひょっとしてSランクの?」

「そうそれ!

 何か王様が俺達を呼んでるっぽいんだけどさ。

 聞いてないかな?」

「あ、歩いて来てしまったんですか?」

「ん? まずかったか?」

「え、ええ。今頃、宿に迎えが行ってる筈なんですよ」


 兵士は何とも気まずそうに答えた。

 どうやら、シドルウェルの言っていた正午というのは、正午に迎えを寄越すという事だったらしい。

 よくよく考えてみれば、Aランク冒険者でさえ貴族並みの扱いを受ける国なのだ。

 Sランクを招くともなれば、迎えを寄越して当然といえば当然なのかも知れない。

 だが、やりたい放題ではあるが、敬われるような存在ではなかった次郎衛門。

 その事にまで気が回らなかったようだ。


「ありゃ、そりゃ迎えに行った連中に悪い事しちまったなぁ。

 ひょっとして怒られる?」

「怒られるでしょうね……

 何せあなた方は国賓と言っても良い立場の方ですからね。

 急いで上の者に連絡を入れますので、暫くお待ち下さい!」


 そうして待つ事数分。

 ゴゴゴゴゴという音と共に城門が開くと、そこには青年が立っていた。

 身長は180cm位で軽くウェーブがかった金髪の好青年だ。


「始めまして、ジロー殿。

 私は第一王子のシグルドです。

 良く来てくれました。

 こちらに手違いがあったようで申し訳ありません」

「いや、どっちかって言えば俺達が悪いっぽいよな。

 入れ違いで迎えに行った連中の事は叱らないでやってくれ」


 そんな次郎門の言葉に、シグルドはほんの少しだけ表情を弛める。


「分かりました。

 叱らない様に言付けておきましょう。

 それでは私が皆さんを案内させて頂きますね」

「え? 普通は侍女とかがするんじゃないの?」

「あなた方が、貴族であるならそうするでしょうが、冒険者ですからね。

 我が国の王族の者は、12才になると冒険者として修行に出るんです。

 そして10年経験を積むか、王家所有のダンジョンを踏破する事で、一人前として認められ城に戻る事許されるのです。

 こう見えて私もBランクの冒険者でもあるんですよ。

 なので、一応冒険者でもある私が出迎えた方が良いだろうという事なのです」

「ほえ~。

 王族は漏れなく冒険者な訳か。

 流石は冒険者の国だなぁ」


 王族が冒険者として修行云々という話はドルアークの国民ならわざわざ説明するまでもなく誰でも知っている話なのだが、そこをあえて説明してくれた王子も次郎衛門達が異世界からの転移者であるという情報は知っていたからなのだろう。

 ちなみに王家所有のダンジョンは平均的なCランク冒険者パーティーなら余裕を持ってクリア出来る程度の難易度だ。

 パーティーでの踏破も認められているので、20歳くらいまでには大抵の者は踏破出来る難易度だったりする。


「しかし、決闘の時も思いましたが、ジロー殿は何となく父上と似た雰囲気を感じますね」

「へぇ。そりゃ会うの楽しみになってきたな!」

「私は憂鬱になってきたわ……」


 王子の言葉に次郎衛門とフィリアは正反対の意見を述べる。

 これに関しては次郎衛門みたいなのが、そうそうそこら辺に居て堪るかというのが、次郎衛門を除いたメンバーの総意だ。

 あくまでも、シグルドは雰囲気が似ていると言ったに過ぎない。

 人格や行動力まで似ていない事を切に祈るばかりである。

 一抹の不安を(一名は期待を)胸に抱えながらも、王子の案内の元、謁見の間へと向かう一行なのであった。



「この扉の向こうが、謁見の間になってます。

 それでは入りますよ」

「ちょっと待ってくれ。

 俺達、武器持ったまんまだぞ?

 大丈夫なのか?」 

「ハハハ。

 あなた方がその気になれば、武器なんてあってもなくても大差ないしょう?

 しかし、気になると言うのであれば、一度こちらで預からせて頂くとしましょうか」


 シグルドはそう言うなりポンポンと軽く手を叩く。

 すると、どこからともなく侍女らしき女性が数名現れる。


「この方々の武器を一旦預からせて頂け。

 くれぐれも丁重に扱うようにな」


 シグルドの言葉に侍女達に武器を預け始める次郎衛門達。

 だが、ここで一つ問題が起きる。

 次郎衛門の持っている武器の数が物凄かったのだ。

 ピコハンに始まり、普通の剣や槍、ハルバートから斧。果ては吹き矢や蝋燭やスリッパなど、訳の分からないものが、アイテムボックスから延々と出てくるのである。

 これには王子どころか侍女達もドン引きである。


「ジ、ジロー殿。

 あとどれだけ出てくるのでしょうか?」

「まだ2割位だな」


 これだけ出してもまだ2割だとか、どう考えてもほんの少しの間だけ預けるといった量ではなかった。

 初めてアイテムボックスを使った時は酒瓶数本で限界だったというのに、たった数カ月で凄まじいまでの成長っぷりである。

 最終的に武器の総重量が数トンにも及ぶと分かると、結局は次郎衛門の武器はピコハンだけを預ける事になったのであった。


「さて、それでは今度こそ謁見の間に入るとしましょう」


 やっと武器が片付き、王子が合図を送ると、謁見の間の扉は音も無く開き始めたのであった。 


 

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