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79話 大爆釣だったな!?

 再び場面は王都ドルアークへと戻る。

 次郎衛門達は、スリを20人程縄で縛りあげて連行していた。

 当然の様に思いっきり道行く人々の注目を集めている。


「正直、こんなに捕まえられるとは思ってなかったわ。

 夕まづめより入れ食いの大爆釣だったな」

「ホント馬鹿ばっかりね。

 何で捕まってる奴がいるのにドンドン捕まりにくるのよ。

 理解出来ないわ」


 如何に次郎衛門がスリを捕まえる気満々だったとはいえ、流石にこの展開は予想していない。

 呆れを通り越して若干引き気味である。

 ネタを明かすのならば、実は一番最初に捕まった者が、ドルアークのスリ達の間では一目置かれた存在であったのだ。

 アイツが失敗した相手から盗む事が出来れば、自分も一目置かれるのではないかという何とも微妙な理由で、2人目3人目が次郎衛門に仕掛け、結局捕まった。

 そんな事が続く内に、何時の間にやら次郎衛門から財布を盗った者がドルアーク№1のスリであるという暗黙の了解が出来てしまったらしい。

 そんな理由から、次々と次郎衛門に盗みを仕掛けた結果が、この有様だったりする。

 何とも間抜けな話である。


「しかし、こうして実際にスリの多さを目の当たりにすると、ラスクの街の治安は飛びぬけて良いんだって事が良く分かるな」

「そうね。ラスクは良い街だと思うわ。

 どこかの誰かさんが、ラスクの街にあった娼館とその背後の闇ギルドを、アンアン五月蝿いって理由で、全部潰しちゃったってのも大きいと思うけどね」

「そいえば、そんな出来事もあったなぁ。

 フィリアたんが、もうちょっと素直にデレてくれてたら、俺の心ももう少しゆとりが出来て、彼等も潰されずに済んだかもしれなかったんだけどなぁ」

「ちゃっかり、私の所為にしてんじゃないわよ!」

「マスターに、そんな悲しい過去があったとは……」

「ボスって、私達と出会う前からフリーダムでしたのね」

「やっぱりあの件はお前等の仕業だったのかよ」


 すっかり街の治安という話題から脱線し始める次郎衛門達。

 暴飲暴食亭の快速出前少女こと食い逃げ少女。

 彼女が所属していた闇ギルドが壊滅した理由が、次郎衛門の八当たりだったのだと、このタイミングで今更判明したり、縛り上げられたスリ達の事は完全に忘れて、中々の盛り上がりっぷりだ。

 そんな騒ぎをどこからか聞きつけたのだろう。


「これは一体何の騒ぎだ?」

 

 統一された装備に身を包んだ数名の男達が現れ、リーダーと思われる男が、次郎衛門に問いかけた。

 姿から察するに、彼等はドルアークの警備隊であるようだ。


「お、やっと警備隊のお出ましか。

 こいつ等全員スリなんだけどさ。

 引き取ってくれよ」

「な!? それは本当なのか?

 済まないが、詰所まで同行して貰えないか?」


 次郎衛門の言葉に、何ともいえない微妙な表情で、同行を求める警備兵。

 まぁ、20名ものスリが一度に捕まるだなんて事は通常あり得ない。

 警備兵の反応も仕方ないだろう。


「まぁ、そういう反応になるよなぁ。

 まだ宿を取ってないから、出来れば先に寝床を確保しときたいんだけど」

「ふむ。君達が何者なのかは分からないが、聴取で彼等が確かにスリだと判明した後で良ければ、冒険者などがよく使う宿を紹介しよう。

 そこなら、時間が遅くなっても部屋が取れないという事はない筈だ」


 どうやら警備兵達には、次郎衛門達が不審な人物に映っているようだ。

 まぁ、次郎衛門達の中で冒険者らしい格好をしているのは。パンダロンだけだったりする。

 次郎衛門は相変わらずの作務衣だし、フィリアは性能こそ一級品だが、見た目は上品な仕立ての服に見える。

 ピコやアイリィに至っては、体自体が頑丈で、防具を着ける意味がない。

 それ故に、ピコとアイリィは、次郎衛門の趣味全開な愛らしい格好をしていたりする。

 これで次郎衛門達を、冒険者だと看破出来るとしたら、その看破をした人物は、ただものではないだろう。

 警備兵の提案は、次郎衛門達に対する配慮も感じられた。

 それ故に、大人しく聴取に同行する事にした次郎衛門なのであった。



「おお!

 パンダロンさんはAランク冒険者だったんですか!

 後でサイン下さい!」

「あ、ああ。それは構わんが……」


 と、いった具合で、聴取はパンダロンが実はAランク冒険者だと分かると、意外な程あっさりと終了。

 聴取後にパンダロンにサインを貰って喜んでいる警備兵達。

 その瞳が少年のように輝いていたのが印象的だ。

 ちなみに次郎衛門達のランクは、Sランク依頼の手続きが終わっていない為、Cランクのままだ。

 散々やりたい放題やってきたラスクの街や、一度マンドラゴーレムに街ごと呑みこまれたフリスの街では、圧倒的な知名度(悪名?)を誇る次郎衛門であるが、辺境から遠く離れた王都では無名の冒険者に過ぎない。

 そんな次郎衛門やフィリアのサインも何故か警備兵達は欲しがったので、一応次郎衛門達もサインをしていたりする。

 これは別にAランク冒険者であるパンダロンと比べて無名な次郎衛門達に気を使っている訳ではないっぽい。

 一流冒険者が、無名時代に書いたサインはプレミアムが付くのだ。

 そのサインを所持している事は一種のステータスになっているらしい。

 そんな理由から、無名の冒険者にサインを求めたりする事はそれなりにあるらしい。

 この時に書いた次郎衛門達のサインが、数日後には爆発的なプレミアムが付く事になるのだが、それはまた別のお話である。


 そして無事にスリの引き渡しと、聴取が終わった次郎衛門達は、警備兵の一人が紹介してくれた宿へ向かうのであった。


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