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78話 お金って怖いよね!?

「ここが王都ドルアークかぁ。

 王都ってだけあって、ラスクの街よりかなりデカイなぁ」

「そりゃそうだろ。

 仮にも王都なんだぞ。

 しかも全世界に支部を持つ冒険者ギルドの本部もある街だ。

 ラスクの街も王国内じゃ五指に入る大都市だが、この街と比べたら見劣りするのも仕方ないだろう」

「ホントに人が鬱陶しいくらいいるわね。

 こういった人混みには必ずと言っていい程、スリがいるから気をつけなさいよ。って、あんた何でそんなに沢山財布持ってんのよ?」

「ん? これ?

 これはスリの皆さんにスッて頂く為にわざわざ準備した特製がまぐちだぞ? 

 中身を確認しようとして口を開けると―――――」


 眩い閃光が迸る。


「うぎゃぁぁ!

 目が!

 目がぁぁ!!」


 激しい閃光と共に悲鳴が聞こえてくる。

 悲鳴が聞こえた方に目を向けてみれば、若者が両目を押さえてのたうちまわっている。

 若者に何が起きたのかを理解出来ていない周囲の人々は、心配して声を掛けたりしている。


「あんな感じにリアルで金に目が眩む。

 お金って本当に怖いよな」


 肩を竦めながら、しみじみと呟く次郎衛門。

 金に目が眩むという言葉はそれなりに使われたりする言葉ではある。

 だが、実際に眩しくて目が眩む等という事を体験する事はまずない訳で。

 それを実現してしまう次郎衛門の思考回路の方がお金より確実に怖い。

 そんな次郎衛門の呟きを聞かされた一行は、財布を盗もうとした相手が悪いという事は間違いないのに、目を焼かれてのたうち回る犯人に同情してしまうのであった。

 


 話は変わるが、ここはドルアーク王国の首都である王都ドルアーク。

 何故次郎衛門達がこんな場所に来ているかと言えば、話は一か月程前に遡る。



 ◆◆◆◆


 Sランク依頼の報酬について話があると支部長に呼び出された次郎衛門。

 漸く報酬が貰えるかと思いきや、どうも支部長の様子が可笑しいのである。


「報酬が払えないってのはどういう事だ?

 事と次第によっちゃ、ピコの目からビームで支部長の毛根を焼き尽くす。

 ペンペン草一本生えない不毛の大地になり果てさせるぞ?」

「待て!

 早まるな!

 払わないと言ってる訳ではない。

 ここでは払えないと言っているんだ!」

「どういうことなのよ?」


 次郎衛門の脅迫に若干焦った支部長が慌てて説明を始め、その説明に対してフィリアが更に詳しい説明を求める。


「Sランク級のモンスターの討伐報酬は、歴史上でも前例が少な過ぎて支部では手続きが出来んのだ」

「ほむ。つまり本部に行けって事か?」

「その通りだ。

 済まないが王都ドルアークにあるギルド本部に向かって貰いたい」


 依頼を受ける時には支部でもOKだったのに、完了の手続きは本部じゃなきゃ駄目だとかいうのも変な話だ。

 どうせ失敗するか、死ぬだろうと思われていた事が透けて見えている。

 これでは次郎衛門でなくても不愉快に思うだろう。

 それ故に次郎衛門は躊躇いなくピコに合図を出す。


「ピコ。焼き払え」

「イエス。マスター」


 次郎衛門の指示により髪の毛だけを絶妙に焼き尽くす威力に加減されたビームがピコの目から発射される。


「うお!?」


 これを紙一重、いや、この場合は髪一重と言った方が正しいのかも知れないが、ギリギリで回避してのける支部長。

 以前にパンダロンをねじ伏せた事もあったが、引退したとはいえ元凄腕の冒険者だったというのは嘘ではないっぽい。


「危ないだろうが! 早まるな!」

「そんな誠意のない言葉は求めちゃいない」

「次弾発射準備完了。発射しますか?」

「分かった!

 王都へ行く為の必要経費はこっちが持つ!

 これでどうだ!?」

「まだ足りん。

 そっちの都合に付き合わされるんだ。

 ギルドから正式な依頼としてなら考えてやらんでもないぞ?

 具体的には必要経費+別途報酬でなら手を打ってやる」

「分かった!

 分かったから!

 その物騒な娘を止めてくれ!」


 穏便に交渉が纏まり、満足そうにな次郎衛門。

 対照的に思わぬ出費に頭を抱え始める支部長。

 そんな支部長の様子を次郎衛門は非常に満足そうに一頻り眺めると、ギルドを後にし自宅に戻る。

 暫く留守にする旨をメルやエージェント達に説明する為にだ。


「そんな訳で俺達は近々王都に向かわにゃいけなくなったんだ。

 結構長い間留守になるがこっちの事は暫く任せるぞ?」

「委託されている業務の方は皆さんが頑張ってくれてますから大丈夫ですけど、あまり長期ですとエージェントの皆さんの魔力が持たないんじゃないですか?」


 エージェント達は次郎衛門の魔力をエネルギーとして活動している。

 エージェント達が動けなくなってしまっては業務に支障が出る。

 その点を心配したメルの指摘はもっともである。


「普通のゴーレムはともかく、エージェント連中は魔力のコントロールで極力ロスを抑えてるから半年くらいは大丈夫だろ」


 次郎衛門曰く、普通のゴーレムはオーラとして魔力が垂れ流しなので精々一週間程度しか持たないのだが、エージェント達なら半年くらいは大丈夫らしい。

 勿論これは魔力の消費を抑えた時の話であって、魔法や闘気を使った全力戦闘を行った場合は3日も持たないだろう。

 だが、不眠不休で3日も戦うなどという事は、戦争でも起きない限り起こり得ない。

 治安の良いラスクの街なら問題なさそうだ。


「王都へ向かうのでしたら、私も連れて行って欲しいのですわ」

「ほむ? 

 理由はあるのか?

 流石に観光旅行気分なだけだったりするんだったら、許可は出来んぞ?」

「私の出身がドルアークだからですわ。

 流石に知人は生きてはいないでしょうけど、故郷の今がどうなっているのかこの目で確かめておきたいのですわ」

「ほむ。メル、エリザベート一人位なら抜けても大丈夫か?」


 エリザベートの言い分は次郎衛門としても無下に出来ないものであった。

 帰るべき故郷がない次郎衛門にとって、一目故郷を見てみたいという気持ちに共感してしまったっぽい。


「一人位なら大丈夫です」

「んじゃ、エリザベートも着いて来い。

 その代わり、きっちり働いてもらうからな」


 こうして次郎衛門、フィリア、アイリィ、ピコ、エリザベート、そしてギルド側から付き添いにパンダロンの合計6名での王都行きが決定したのであった。

 尚、まだ新婚で嫁とイチャつきたい盛りのパンダロンが抵抗をして自宅に篭城するも、次郎衛門の『俺の目の黒いうちはラブコメなんてさせねーよ?』という真摯な説得に感動の涙を流しながら、王都行きを快諾するといった事件も起きちゃったりもしたのであった。


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