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6話 冒険者を登録しよう!?

「冒険者として登録したいんだよね。

 身分証も欲しいし、このままじゃ、お金も直ぐに無くなりそうだしね」

「では、冒険者ギルドについて一通り説明いたしますね。

 冒険者ギルドには、さまざまな任務依頼が舞い込みます。

 それらを冒険者の皆さんに、こなして貰う事によって、依頼者の方から報酬を頂いております。

 そして報酬の7割を冒険者の取り分に、2割を冒険者の方の税金として納め、残りの1割はギルドの手数料として頂いております。

 7割しか貰えないと思うかも知れません。

 ですが、結果的に魔物から町を守っている冒険者の方は、税金面で優遇されており、冒険者ではない一般の方々は収入の4割を税金で納めておりますので、ご了承ください。ここまでは宜しいですか?」

「よろしいですのことよ」


 ふむふむと頷きながら、妙な返答をする次郎衛門。

 どうやら、命がけで魔物と戦う冒険者という職業は、若干優遇されているらしい。

 そんな次郎衛門の様子を見たサラが更に言葉を続け出す。


「では、続けますね。

 冒険者にはランクがあり、Sランクを頂点として、順番にABCDEFとあります。

 Sランクは名誉ランクで、現役の冒険者では該当する人が居ません。

 つまりAランクが実質的な最高位となっております。

 Fランクもまた特殊なランクで、冒険者登録をすると2週間程Fランクになる事になります。

 この2週間の任務の消化状況で、冒険者としての適正があるかどうかが判断されます。

 ないと判断された場合は、2度と登録が出来ませんが、これに該当する人は滅多にいませんので大丈夫です」

「滅多にって事は、過去に該当した事ある人がいたの?」

「10年程前に期間中に婦女暴行の現行犯で捕まった人が……」


 冒険者としての適正以前の問題のようである。

 つまり、法やモラルから逸脱しなければ、問題ないという事のようだ。


「ジローあんたヤバイんじゃないの? サラの体をを見境なく弄ってたし」


 しかし、フィリアが次郎衛門を茶化しに掛かる。

 確かに先ほどのあれは、普通に事案であったと言える。

 フィリアの言葉に、次郎衛門の表情がみるみる青ざめていく。

 どうやら一応本人にも自覚はあったらしい。


「え? 俺ヤバイの?

 サラちゃん大丈夫だよね?

 許しくれるって言ったよね?」


 縋る様な目でサラに問いかける次郎衛門。


「もう良いとは言いましたが、許すとは言ってませんよ?」

 

 ここぞとばかりにサラが突き放すように言い放つ。

 とは言っても、サラのその目は悪戯心に輝いているので、本心で言っている訳ではなさそうだ。

 モフられた事による、サラなりのちょっとした仕返しのつもりなのだろう。


「そ…… そんな…… 

 ファンタジーライフが、初日で終了かよ……

 どうせもうダメなら、いっその事もう一度……」


 しかし、次郎衛門はサラの言葉を真に受けてしまったらしい。

 いや、違う。真に受けた(てい)で、あわよくば、もう一度モフってやろうという魂胆っぽい。

 完全に開き直り、淀んだ目で、手をワキワキしながら、サラへとにじり寄る次郎衛門。

 若干鼻息も荒い。


「じょ、冗談ですよ! 許しますからにじり寄らないで!!」


 そんな次郎衛門に、恐怖を感じ慌てて叫ぶサラ。

 サラは、さっきの状況が相当怖かったのか耳がペタンとなってしまっている。

 ほんのり目に涙が浮かび潤んでいる姿も愛らしい。

 そして許された筈なのに、ちょっと残念そうなこの男は、本物の変態で間違いない。


「こほん…… 話しが脱線してしまいましたが、Fランクでの頑張り次第では、Eランクを飛び越えて、いきなりDランクからのスタートも可能です。

 ですから手は抜かない方が良いですよ。

 でも、頑張りすぎて死んでしまっても、自己責任なので気をつけてくださいね」


 まだ少女と呼べる年齢のサラの口から、飛び出す「死」というワード。

 流石は異世界。

 そこら辺はやはりシビアである。


「ランクアップについては、任務の成功状況とステータス査定されます。

 どれだけ任務を成功したとしても、ステータスが低かったらランクアップしませんし、その逆も然りです。

 またBランク以上の方は二つ名が付いたりしますね。

 大抵の方はこれを目標にします。

 ステータスは各種SからF-まであり、基本的にはその平均値が総合力となり戦闘力の目安になってます。依頼を受けるにはランクとは別にステータスも必要な場合も多いので、注意してくださいね」

「ほい、了解であります」

「最後に冒険者の義務と特典についてお話しますね。

 義務については、Dランク以下の冒険者の方は任務と任務の間の期間が1ヶ月以上開きますと追放処分になってしまいます。

 怪我など、どうしようもない場合にはギルドに報告して頂ければ多少の融通は効きますので、そういった場合には報告お願いします。

 Cランク以上の方はそういった期間はありませんが、魔物が街に襲ってきた場合などに発令される緊急依頼に強制参加する義務があります。

 滅多に発令されませんが、相当危険なので、あえてDランクに留まっている方もいるくらいです。

 特典は街での買い物が、少し安くなったりします。

 もちろんランクが上がるほどに割引率も上がりますよ。

 説明はこのくらいですね。何か質問等ありますか?」

「任務の達成の証明や素材の買取はどうなってるんだ? 」

「任務達成に関しては、カードの賞罰の項目に達成したら達成済みと表示されますのでその状態のカードを持って来て下さい。

 素材の買取もやっていますが、市場価格より少し安めになってしまいますね。自分で直接商人の方と取引してもよいのですが、出来ればギルドに売って欲しいです。他にありますか?」

「今のところないかな」


 返事をしながらも、この辺の決まりごとは、大体テンプレと大差ないよな。

 などと考える次郎衛門。


「では、こちらの用紙に記入してくださいね。

 あ、この世界の文字は読み書きできますか?

 出来ないのでしたら代筆もいたしますが?」


 心配そうに聞いてくるサラはやはり良い娘だ。


「大丈夫、読み書きは出来るから。

 年齢は31歳で、職は一応戦士かな、武器は……」


 次郎衛門と、そしてフィリアは、書き進めていく。


「良し。こんなもんかな」

「では、御2人分お預かりしますね。

 それでは、カードを作りますので、フィリアさんからこちらの魔道具に手を置いてください」


 そう言われて手をかざすフィリア。


「こうで良いの?」

「これは…… 新人としては凄いステータスですよ!

 期待のルーキーって感じですね!」

「ま、当然よね。思ったより低くて、がっかりなくらいだわ」


 そう言いつつも、フィリアはまんざらではない様子だ。

 そのステータスがこちらである。



名前   フィリア

種族    人種

筋力値   C

体力値   C

知力値   A

俊敏値   B-

魔力値   B

総合力   C+

賞罰    なし


 確かに新人としては、能力が高そうな印象はある。

 そして次はいよいよ次郎衛門の番だ。

 フィリアと同じように魔道具に手を置く。

 だが―――――

 

「あれ? 故障かな? ちょっともう一度お願いできますか?」


 そう言われて、もう一度手を置く次郎衛門。


「何? カード作れないの?」


 焦れたフィリアがサラに問いかける。


「いえ…… 一応は作れたんですが。

 ステータスの表示が変な感じになってまして……」

「どんな感じか見せてもらっても良い?」


 フィリアは返事もろくに聞かずに、次郎衛門のカードを覗き見る。

 そのカードがこれである。



名前    ジロウエモン

種族    女の敵

筋力値   山をも砕きたい

体力値   夜も超すんごい

知力値   亮君もびっくり

俊敏値   逃げ足はルパン並み

魔力値   神をも超える

総合力   私の総合力は53万です

賞罰    えー? 知りたいの? でもひ・み・ちゅ♪



「アホかああああああ」


 フィリアは思わず次郎衛門の顔面にカードを叩きつける。


「痛いじゃん」

「痛いのは、あんたのステータスでしょうが!!

 ふざけてんの?

 明らかにふざけてるわよね?

 どれもこれも殺意が湧くほどイラッとするけど亮君って誰なのよ!

 地球のお笑い芸人?

 そんな人驚かせてどうすんのよ!」

「いやいや、亮君って言ったら三国志の大軍師、諸葛亮孔明君に決まってるじゃんか。そんな事も知らんの?」

「知るわけないでしょうが!

 なんで1000年以上前の偉人を近所のお兄ちゃんみたいに言ってんじゃないよ!!」

「ワーォ、ヒスなフィリアたん怖~い」



 ブチ



 フィリアの頭から何かが切れる音が聞こえた。

 いや、物理的にはそんな音は発生していないのかも知れない。

 だが、その場に居た次郎衛門とサラには確かにその音が聞こえたのだ。

 恐る恐るサラがフィリアへと視線を送ってみれば。

 そこには一体の鬼がいた。 

 

「…… もう殺す! この場でぶっ殺してやるわ!」

「ぅわー! フィリアさん!

 こんなところで暴れないでくださーい!」


 魔法こそ使わないが、力の限り暴れまわるフィリアと、逃げ回る次郎衛門。

 それに振り回されるサラ。

 静かなギルドホールが、一転してけたたましい喧騒に包まれたのだった。



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